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ただいま
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「ねえ、美月。本当に今日、家に寄って行かないの?お母さんもお兄ちゃんも久しぶりに美月に会える、って楽しみにしてたんだけど……」
中学時代から通いなれた翠の家の近くで、美月は翠のもう何度目かになるお誘いに首を振った。
「……翠ちゃんを巻き込んで迷惑かけたわたしが言うことじゃないけど、今日は帰るのが遅くなっちゃったから。それに、見て?」
美月はすっと自分の家のある辺りの、山頂を指さす。
そこには、この辺りの空にはない厚い雲がかかりつつあった。
「あ~美月の家は、山の上だからなあ~。分かった。気をつけて帰りなよ?そして、明日!また校門に八時集合ね?」
美月の家は、翠の家からもバスで二十分、徒歩で三十分、計小一時間程かかる。
しかも山頂のため、悪天候の場合は一時間に一本しか通らないバスも遅れる。
そのため、美月は基本、朝の通学の待ち合わせはしない。
けれども、今日翠に多大なる心配と迷惑をかけた自覚のあった美月は、少し考えた上で頷いた。
……あの空模様だと、明日の朝は大丈夫かな?
元々明日も一緒に、と朝約束していたし、念のため、明日も一本早めのバスに乗ればいいか。
「分かった。……翠ちゃん、今日は本当にいろいろありがとう!翠ちゃんがいてくれて、すごく助かった。明日も、そしてこれからもよろしくね」
「……こちらこそ。で、一緒に高校生活をエンジョイしようね!それじゃあ、また明日!」
そして、手を振り合って翠と別れた美月は、ちらりと腕時計を見て呟いた。
「これなら、……急げば、ぎりぎり山頂行きのバスに間に合うかも。よぉし!」
美月はカバンをぎゅっと握りしめ、颯爽と坂を走り出した。
「待って!乗ります、待ってください!」
美月はバス停の十メートル程離れた場所から、手を振り大声を上げた。
ちょうど時刻はバス発車の定刻で、美月の目の前で最後の乗客が乗り込むところだった。
美月の声に誰か気づいてくれたのか、閉まりかけた扉がもう一度開く。
美月はここぞとばかりにラストスパートをかけ、無事山頂行きのバスへと乗り込めた。
「すみません!……ありがとうございます」
美月は周りの乗客や運転手に向かって頭を下げ、ほっとしながら空いていた一番後ろの席へと腰かける。
バスはそのまま、山頂へ向かってゆっくりと走り出した。
窓から外を眺めれば、山頂の辺りはもう真っ暗だ。
このバスに間に合って良かった、と美月は心から安堵する。
願わくば、このまま何とか家にたどり着くまでお天気が保ってくれれば、と淡い希望を抱くも、すぐに窓に大粒の雨が叩きつけられ、美月はがっくりと項垂れた。
バスが上に登るにつれ乗客は減っていき、とうとう美月一人になったとき、美月は折り畳み傘を手に一番前の席へと移った。
「やあ、美月ちゃん。今日から学校かね?」
「おじさん、さっきはありがとう!これに乗れて、助かった」
「いや~相変わらず、足が速いね」
「毎日、山道で鍛えられてますから!」
馴染みの運転手さんと雑談をしている内に、美月の降りるバス停が近づいた。
美月は心配そうに空と周囲を見渡し、そわそわとすぐ降りられるよう、席を立つ。
「……美月ちゃん、危ないよ?バスが止まるまで、立たないで?」
運転手に窘められるも、美月は首を振り、早々と定期を出し傘を片手に扉のすぐ横に立つ。
そうこうしている内にバス停に着き、止まる。
「おじさん、ありがとう!また明日!」
言葉と共にバスから飛び出していく美月を見て、運転手はため息を吐いた。
「はいよ。気を付けてお帰り」
バスが行ってしまうと、辺りは道沿いにぽつりぽつりと立つ街灯のみとなる。
そして、美月は薄暗がりに包まれ、人気のない山頂付近のバス亭に一人佇む。
そのとき、暗がりの中からひと際黒い大きな塊がぽてぽてと美月の足元へ近づいてきた――
「クローっ!ただいま!ごめんね、こんな雨の中……!」
美月は自分が濡れるのにも構わず、その塊に飛びついた。
中学時代から通いなれた翠の家の近くで、美月は翠のもう何度目かになるお誘いに首を振った。
「……翠ちゃんを巻き込んで迷惑かけたわたしが言うことじゃないけど、今日は帰るのが遅くなっちゃったから。それに、見て?」
美月はすっと自分の家のある辺りの、山頂を指さす。
そこには、この辺りの空にはない厚い雲がかかりつつあった。
「あ~美月の家は、山の上だからなあ~。分かった。気をつけて帰りなよ?そして、明日!また校門に八時集合ね?」
美月の家は、翠の家からもバスで二十分、徒歩で三十分、計小一時間程かかる。
しかも山頂のため、悪天候の場合は一時間に一本しか通らないバスも遅れる。
そのため、美月は基本、朝の通学の待ち合わせはしない。
けれども、今日翠に多大なる心配と迷惑をかけた自覚のあった美月は、少し考えた上で頷いた。
……あの空模様だと、明日の朝は大丈夫かな?
元々明日も一緒に、と朝約束していたし、念のため、明日も一本早めのバスに乗ればいいか。
「分かった。……翠ちゃん、今日は本当にいろいろありがとう!翠ちゃんがいてくれて、すごく助かった。明日も、そしてこれからもよろしくね」
「……こちらこそ。で、一緒に高校生活をエンジョイしようね!それじゃあ、また明日!」
そして、手を振り合って翠と別れた美月は、ちらりと腕時計を見て呟いた。
「これなら、……急げば、ぎりぎり山頂行きのバスに間に合うかも。よぉし!」
美月はカバンをぎゅっと握りしめ、颯爽と坂を走り出した。
「待って!乗ります、待ってください!」
美月はバス停の十メートル程離れた場所から、手を振り大声を上げた。
ちょうど時刻はバス発車の定刻で、美月の目の前で最後の乗客が乗り込むところだった。
美月の声に誰か気づいてくれたのか、閉まりかけた扉がもう一度開く。
美月はここぞとばかりにラストスパートをかけ、無事山頂行きのバスへと乗り込めた。
「すみません!……ありがとうございます」
美月は周りの乗客や運転手に向かって頭を下げ、ほっとしながら空いていた一番後ろの席へと腰かける。
バスはそのまま、山頂へ向かってゆっくりと走り出した。
窓から外を眺めれば、山頂の辺りはもう真っ暗だ。
このバスに間に合って良かった、と美月は心から安堵する。
願わくば、このまま何とか家にたどり着くまでお天気が保ってくれれば、と淡い希望を抱くも、すぐに窓に大粒の雨が叩きつけられ、美月はがっくりと項垂れた。
バスが上に登るにつれ乗客は減っていき、とうとう美月一人になったとき、美月は折り畳み傘を手に一番前の席へと移った。
「やあ、美月ちゃん。今日から学校かね?」
「おじさん、さっきはありがとう!これに乗れて、助かった」
「いや~相変わらず、足が速いね」
「毎日、山道で鍛えられてますから!」
馴染みの運転手さんと雑談をしている内に、美月の降りるバス停が近づいた。
美月は心配そうに空と周囲を見渡し、そわそわとすぐ降りられるよう、席を立つ。
「……美月ちゃん、危ないよ?バスが止まるまで、立たないで?」
運転手に窘められるも、美月は首を振り、早々と定期を出し傘を片手に扉のすぐ横に立つ。
そうこうしている内にバス停に着き、止まる。
「おじさん、ありがとう!また明日!」
言葉と共にバスから飛び出していく美月を見て、運転手はため息を吐いた。
「はいよ。気を付けてお帰り」
バスが行ってしまうと、辺りは道沿いにぽつりぽつりと立つ街灯のみとなる。
そして、美月は薄暗がりに包まれ、人気のない山頂付近のバス亭に一人佇む。
そのとき、暗がりの中からひと際黒い大きな塊がぽてぽてと美月の足元へ近づいてきた――
「クローっ!ただいま!ごめんね、こんな雨の中……!」
美月は自分が濡れるのにも構わず、その塊に飛びついた。
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