(あやかし御用達)民泊始めます~巫女になれ?!無理です!かわりに一泊いかが?

岬野葉々

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お家に帰らなきゃ 6

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 自分の思い通りにならない身体に焦りつつも、何とか身を起そうと頑張る美月の上に、影が落ちる。

 見上げれば、いつの間に近くへ来ていたのか、秋霖 湊の憂いを帯びた瞳と交わった。

「――――星野さん、これから君の心身を休養させるために、一度研究所へと運ぶ」
「研究所?何で――――?わたし、お家に帰ります。帰らなきゃ……帰りたい」

 クロとおばあちゃんの待っているお家へ帰りたい――――!
 クロはきっと、ずっとあのバス停で待ってる…………
 おばあちゃんも、早く帰っておいでって。おやつを作って待ってるって――――
 
「もうやだやだ、……こんなの夢だ。きっと、夢。……夢なら、早く覚めて――――!」

 現実離れした状況とままならぬ自分の身体に苛立ち、じわりと美月の目に滲んだ涙を、伸びあがったツキが舐めとる。
 それにちょっと微笑んで、ツキは夢じゃなくて、一緒に帰れると良いなぁ~と現実逃避しつつも和む美月に、湊は困った顔をした。

「……君がこの件をどのように認識しているかは分からないが、これは現実に起こったことだ。夢ではない」
「――――夢じゃない?」
「このモノ達も実在する。今まで君の見て認識していた世界は、実際にはほんの一部のもの」

 美月は大きく目を見開いて、目を動かして周りを見る――――自分の周りには、美月の不調に慌てふためき、狼狽えて右往左往している、深山のあやかし達であふれかえっていた。

 あやかし達の多くは身体のあちらこちらが黒く染まり、その中にはじわじわとソレが広がっているようなモノもいる。

「……これが、夢じゃない?本当に起きていること――――?」
「そうだ。君の知っている世界、現世とも、先程までいた狭間とも違う。此処は異界と呼ばれ、君を慕う深山のあやかし達の世界――――そして、彼らは君のために敢えて危険な狭間へ入り、ほとんどのモノ達は満身創痍だ」

 湊はそこで話を切り、美月に真剣に問いかけた。

「君は、……彼らも休養のために、研究所へ共に行くことを望むか?」
「――――三つ目さん達と?」
「そうだ」

 そこで美月は、期待を込めてきらきらと輝く、周囲のあやかし達の目に気がつく。

「……一度研究所へ行ったら、お家に帰れる?」
「――――しばらくはかかると思うが、……ああそうしよう」

 ここで、美月のしばらくと湊のしばらくの認識の差で、後程問題が持ち上がるのだが、それはまた後の話。

 美月はどうやら、一度研究所で休んでから・・・・・・・・・・・でないと、帰宅許可は出ないものだと思い込み、渋々自分を納得させる。

 そして、自分と同じく、身体のあちらこちらにダメージを負ったらしいあやかし達を気遣わしげに見遣った。

「……三つ目さん達も、わたしと一緒に行く?ひょっとしたら、手当してもらえるかも……」

 それに感激したあやかし達は、うおおお~と雄たけびを上げる。

(も、もちろん!この三つ目、美月殿と一緒ならば、たとえ地の果てまでもお供いたしますぞ――――!)
(美月様~~~!わしらも是非ともご一緒に――――!)
(やはり、我らの美月様じゃ――――!)
(我らも共に――――!)(共に――――!)

 話はまとまった、とばかりに、軽く頷いた湊は、そのまま三つ目に向き直った。

「ならば、彼女を休ませるために、研究所まで運んでもらえるか?――――秋霖 湊の名において、君達深山のあやかし達を現世の研究所へと招――――」
「ちょーーっと待ったーーーー!!」

 湊の言葉は、その場へ駆け込んできた緑雨理事長によって、遮られる。

「……湊くん、先程は悪かったね。その役目、後は私が受け継ごう」

 先程とは打って変わってやる気を見せる緑雨を見て、湊は軽く頷きその場を引いた。
 緑雨は深山のあやかし達に向き直り、丁寧に言葉を紡ぐ。

「五月雨学園の理事長、緑雨 浩の名において、貴方方深山のあやかしを休養所へと招きます。どうぞ、星野美月さんと共にお出で下さい」
「――――ならば、妾が其処まで最短の道で繋ごう。…………今度は、壊してくれるなよ?」

 その場に進み出た山姫が手を振り、宙へ道を架ける――――

(はははは――――承知!)
(我、最速にて、美月殿を休養所まで送り届けようぞ!)
(ああ、これ!美月様を揺らすなよ?)
(丁寧に――そうっとじゃ、そうっと)
(けれども、疾く速く――――!)
(我らと共に、参りましょうぞ――――!)

 明るい表情で美月を中心として周りを取り囲む、深山のあやかし達。

(皆のモノ、我の速さについて来られぬモノは、無理せず後から来い――――!)
(一角め、……速さならば、わしらも負けん!)
(こら、美月様を第一に考えよ)
(わしらは、後から追いかけるからな~~!)

 嬉し気に、楽し気に、山姫の創った道を駆けていく彼らを見て、山姫は微笑んだ。

「――――さて、そろそろ妾達も行こうかの?」

 
 こうして、美月は帰宅への第一歩を踏み出した。
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