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お家に帰らなきゃ 5
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いきなりこちらを注視する旧友ともいえるあやかし達に驚いて、緑雨理事長はそちらへと向き直る。
「――――どうかしたか?」
(春の坊、……あのな、あの女子――星野美月なる者は、これからどうなる?)
突然の問いに首を傾げ、だからその呼び名はよせ、と言いつつも緑雨はその問いに答えた。
「どうなるも何も、今は気が張っていて本人には分かるまいが、……現世ではもう三日も経っている。その日数を考えると、異界、そして狭間で過ごしたその反動で、これから何らかの不調が彼女の心身に表れる可能性は高いな。…………最悪の場合、絶対安静となるような」
(…………やはり、そうなるか……人は、脆いな…………)
(して、その休養所は、何処に――――?)
(無論、考えておるのじゃろう?)
何故そんなことが知りたいのか、と緑雨は不思議そうな顔をしつつも、なおも答える。
「それは、――――学園の上にある研究所だが?…………もちろん、万が一の事態を考えて、そのための準備も手配済だ」
(――――それは、重畳。学園の、五月雨内の研究所、とな?)
「それは、……そうなるだろう。こういう時にこそ、しっかりと有効利用せねば、どうする?」
元々彼らの一族のために設立された研究所で、施設内はかなり充実している。
そして、研究者、技術者も数多く在籍し、無論医療関係者、その施設機材もバッチリだ。
何より、在籍者は全て一族の者モノと何らかの繋がりがあり、守秘義務も万全なのだ。
「今回のようなレアケース、うち以外では対処できまい」
「理事長、ならば、そこへあれら深山の妖し達も招くべきなのでは?」
そこへ低く響く声で会話に入って来たのは、秋霖家の跡取りと目されている湊だった。
「秋霖家の……湊くん、今回は君の活躍のおかげで窮地を逃れることが出来たと聞いている。よくやってくれた――!」
「ありがとうございます、理事長。しかし、あまり悠長に此処で話をしている余裕はないと思います。後程、こちらからも改めて報告しますが、今は早く彼女とあれら深山のあやかし達を一緒に休息を取れる場所へ移動させる方が良い」
「一緒に――――?星野さんは分かるが、何故彼らも共に移動させねばならない?」
怪訝そうに問い返す緑雨に対し、湊は淡々と言い返す。
「――――彼女とあれらの様子を見て、何も感じておられない?……良いでしょう。今は、時間が惜しい。後程、報告には上げますので、今は秋霖家の名において、彼らを招くとします」
そう言いおいて踵を返した湊に驚き緑雨は呼び止めるが、湊はそのまま足早に立ち去った。
それを見て、旧友である妖し達は口々に緑雨を急かし出す。
(悪いことは、言わん!ここは、あの秋家のヒナの言う通りにしておくのじゃ!)
(早う、早う――――!)
(我らも、言おうとしていたことじゃ!)
(――――じゃが、先を越された)
(春家と秋家の確執は、我らにはようわからんが…………このまま主導権を秋家に取られると、春家は不味いぞ?)
(早う――我らを信じよ)
必死な旧友達の様子を見るに、どうやらここは素直に彼らの言う通りにした方が良いだろう、と判断した緑雨は頷き、手短にその件の手配を側近に頼んでから、慌てて湊の後を追った。
……あれ?おかしいな。何だか、目がかすむ――――?
美月は、急に霞がかかったように見えだした風景に驚き、右手でごしごしと目をこする。
(美月殿?如何なされた――――?)
美月の行動に気付いた三つ目が心配そうにのぞき込んでくる。
それに笑って、ううん何でもない、と首を振ろうとした瞬間、美月は血の気がひくような感覚と共に、身体中の力がガクッと抜けてしまう――――
倒れそうになった美月を慌てて支えた三つ目は、狼狽えて何度も何度も美月の名前を呼ぶ。
異変に気付いたツキも美月の左手を一生懸命に舐めながら、ミャーミャーと哀しげに鳴いている。
……大丈夫だよ?三つ目さん。ツキも心配しないで――――?
だけど、……わたし、どうしたのかな?何だか、力が全然入らない――――
「――――どうかしたか?」
(春の坊、……あのな、あの女子――星野美月なる者は、これからどうなる?)
突然の問いに首を傾げ、だからその呼び名はよせ、と言いつつも緑雨はその問いに答えた。
「どうなるも何も、今は気が張っていて本人には分かるまいが、……現世ではもう三日も経っている。その日数を考えると、異界、そして狭間で過ごしたその反動で、これから何らかの不調が彼女の心身に表れる可能性は高いな。…………最悪の場合、絶対安静となるような」
(…………やはり、そうなるか……人は、脆いな…………)
(して、その休養所は、何処に――――?)
(無論、考えておるのじゃろう?)
何故そんなことが知りたいのか、と緑雨は不思議そうな顔をしつつも、なおも答える。
「それは、――――学園の上にある研究所だが?…………もちろん、万が一の事態を考えて、そのための準備も手配済だ」
(――――それは、重畳。学園の、五月雨内の研究所、とな?)
「それは、……そうなるだろう。こういう時にこそ、しっかりと有効利用せねば、どうする?」
元々彼らの一族のために設立された研究所で、施設内はかなり充実している。
そして、研究者、技術者も数多く在籍し、無論医療関係者、その施設機材もバッチリだ。
何より、在籍者は全て一族の者モノと何らかの繋がりがあり、守秘義務も万全なのだ。
「今回のようなレアケース、うち以外では対処できまい」
「理事長、ならば、そこへあれら深山の妖し達も招くべきなのでは?」
そこへ低く響く声で会話に入って来たのは、秋霖家の跡取りと目されている湊だった。
「秋霖家の……湊くん、今回は君の活躍のおかげで窮地を逃れることが出来たと聞いている。よくやってくれた――!」
「ありがとうございます、理事長。しかし、あまり悠長に此処で話をしている余裕はないと思います。後程、こちらからも改めて報告しますが、今は早く彼女とあれら深山のあやかし達を一緒に休息を取れる場所へ移動させる方が良い」
「一緒に――――?星野さんは分かるが、何故彼らも共に移動させねばならない?」
怪訝そうに問い返す緑雨に対し、湊は淡々と言い返す。
「――――彼女とあれらの様子を見て、何も感じておられない?……良いでしょう。今は、時間が惜しい。後程、報告には上げますので、今は秋霖家の名において、彼らを招くとします」
そう言いおいて踵を返した湊に驚き緑雨は呼び止めるが、湊はそのまま足早に立ち去った。
それを見て、旧友である妖し達は口々に緑雨を急かし出す。
(悪いことは、言わん!ここは、あの秋家のヒナの言う通りにしておくのじゃ!)
(早う、早う――――!)
(我らも、言おうとしていたことじゃ!)
(――――じゃが、先を越された)
(春家と秋家の確執は、我らにはようわからんが…………このまま主導権を秋家に取られると、春家は不味いぞ?)
(早う――我らを信じよ)
必死な旧友達の様子を見るに、どうやらここは素直に彼らの言う通りにした方が良いだろう、と判断した緑雨は頷き、手短にその件の手配を側近に頼んでから、慌てて湊の後を追った。
……あれ?おかしいな。何だか、目がかすむ――――?
美月は、急に霞がかかったように見えだした風景に驚き、右手でごしごしと目をこする。
(美月殿?如何なされた――――?)
美月の行動に気付いた三つ目が心配そうにのぞき込んでくる。
それに笑って、ううん何でもない、と首を振ろうとした瞬間、美月は血の気がひくような感覚と共に、身体中の力がガクッと抜けてしまう――――
倒れそうになった美月を慌てて支えた三つ目は、狼狽えて何度も何度も美月の名前を呼ぶ。
異変に気付いたツキも美月の左手を一生懸命に舐めながら、ミャーミャーと哀しげに鳴いている。
……大丈夫だよ?三つ目さん。ツキも心配しないで――――?
だけど、……わたし、どうしたのかな?何だか、力が全然入らない――――
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