(あやかし御用達)民泊始めます~巫女になれ?!無理です!かわりに一泊いかが?

岬野葉々

文字の大きさ
54 / 80

お家に帰らなきゃ 4

しおりを挟む
 美月は突如始まった激しい言い争いについていけず、ポカンと口を開けてその様子を見守った。

(ええい、ごちゃごちゃとうるさいわ!美月殿は、お疲れの御様子。我らの棲みかで我らと共にゆっくりと休養して頂くのに、何の不都合がある――――?!)
(何の不都合だと――――?!大アリじゃ――――!)
(むしろ、不都合しかないわ!この大たわけモノ――――!)

 一触即発で喧々諤々と美月の身柄を争う二大勢力――――異界の自分達の棲みかへ連れて行きたい深山のあやかし達と、それを絶対に阻止しようとする五月雨陣営。

 半ば呆然とそれを見守っていた美月であったが、ようやく争点が自分の身柄だということに気付くと、慌てて声を上げる。

「三つ目さん、そしてそのお仲間?達。心配してくれて、ありがとう!でもね、わたし、お家に帰らなきゃ――――」

 それを聞いた三つ目以下深山のあやかし達は、皆この世の終わりのような絶望感に満ちた表情をする。

(そ、……そんな、美月様)
(我らを置いて、何処へ行かれるのか?)
(家?……家ならば、我ら一同、すぐに美月様のご要望通りのモノを御用意致します故――――)

 当然のように、美月に家まで与えようとする深山のあやかし達に驚いて、美月は懸命に首を振る。

「だ、ダメだよ?そんなの、絶対に受け取れない。それに、わたし、……クロとおばあちゃんの待ってるお家に帰らなきゃ――――!」

 そのまま必死に言い募る美月の気持ちを汲んだのか、やがて、三つ目はがっくりと項垂れ、深く深~くため息を吐いた。

(やれ、……仕方がない。――――美月殿のお望みだ)

 三つ目の言葉を皮切りに、周りのあやかし達も皆しょんぼりと項垂れながらも、諦めの言葉をつぶやく。

(……美月様、どうか、どうかお元気で)
(我らのこと、……忘れないで欲しい)
(偶にで良いから、我らのことを思い出して下され…………)

 そして、段々とまるで今生の別れのような様を為してきたことに、美月は思いっきり狼狽え、うっかりと口走る。

「そんな――――?それはもう、……たとえ忘れたくても、忘れられないっていうか、……だから、…………お泊まりは無理だけど、またすぐに会いに来るから――――」

 五月雨陣営が止める間もなく口走った美月に対し、今度は鬼の首でも取ったように、ハイテンションで約束を念押しする深山のあやかし達……。

(ほう――!またすぐに、とな!)
(約束ですぞ――――?!美月様!)
(すぐ、とは、どれ位かのう?いや、楽しみじゃ――――!)
(楽しみじゃ)(楽しみ)(楽しみ――!)

 それを渋い表情で眺める、理事長の馴染みのあやかし達。

(……呆れた奴らじゃ。なりふり構わず、じゃな)
(……しっかり、言質を取りよって――――!)  

 しかし、山姫は何か思案気に彼らを見遣り、先程とは違いそっと庇うような発言をする。

「……まあ、そう言うてやるな……。あやつらにとっては、死活問題なのじゃろう。――――招かれもせずに、そう易々とはこちらへは来れぬだろうしな。美月なる女子をあやつらに任せ、この異界に置き去りにするのは断固反対じゃが、……また会いに行かせるくらいのお目こぼしは必要じゃろうて」
(それはまた、山姫とは思えんほどの慈悲溢れるお言葉じゃな)

 意外そうに目を見開くあやかしに対し、山姫は物憂げに言い返す。

「……お主等には、分からぬのか」

 それっきり山姫は口をつぐみ、深山のあやかし達を見つめるのみ。

 深山のあやかし達は一部を除き、皆身体のあちらこちらが黒く染まり、リーダー格の三つ目に至ってはその身体の三分の二以上が黒く染まり、いずれも満身創痍の有様だ。

 今はまだ美月を中心として、明るく張り切っているが、もし彼女がいなくなったら――――?

 そのことにやっと思い至った理事長の馴染みのあやかし達は、皆はっと理事長の方を振り返った。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

S級ハッカーの俺がSNSで炎上する完璧ヒロインを助けたら、俺にだけめちゃくちゃ甘えてくる秘密の関係になったんだが…

senko
恋愛
「一緒に、しよ?」完璧ヒロインが俺にだけベタ甘えしてくる。 地味高校生の俺は裏ではS級ハッカー。炎上するクラスの完璧ヒロインを救ったら、秘密のイチャラブ共闘関係が始まってしまった!リアルではただのモブなのに…。 クラスの隅でPCを触るだけが生きがいの陰キャプログラマー、黒瀬和人。 彼にとってクラスの中心で太陽のように笑う完璧ヒロイン・天野光は決して交わることのない別世界の住人だった。 しかしある日、和人は光を襲う匿名の「裏アカウント」を発見してしまう。 悪意に満ちた誹謗中傷で完璧な彼女がひとり涙を流していることを知り彼は決意する。 ――正体を隠したまま彼女を救い出す、と。 謎の天才ハッカー『null』として光に接触した和人。 ネットでは唯一頼れる相棒として彼女に甘えられる一方、現実では目も合わせられないただのクラスメイト。 この秘密の二重生活はもどかしくて、だけど最高に甘い。 陰キャ男子と完璧ヒロインの秘密の二重生活ラブコメ、ここに開幕!

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

処理中です...