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お家に帰らなきゃ 3
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「……妾は、山姫と呼ばれている。此度は、其方に迷惑をかけた。すまなかった」
「――――迷惑?」
今はもう遥か昔の出来事のように思える、山姫とのやり取りを思い出すかのように、美月は首を傾げる。
……あの時はとにかく、少しでも早くテスト会場に辿り着こうと必死で、山姫さんに道を尋ねた――――テ、……ス、ト…………え?!そういえば、……わたしのテストって、どうなってるの?!
「ああああああああ!」
急に大声を出した美月に驚いた山姫は顔を上げ、しかしその瞬間より、美月の抱えているものから目が離せなくなる。
そのまま無言でツキを凝視する山姫。
美月はそれに気づかず、半ば呆然とひたすらたった今自覚した大事実を反芻している中、今度は何事、とまた近くにいた霖雨教師が飛んできた。
「星野さん――!次は、何事ですか?!」
その顔を見て、美月は彼の先程の名乗りを思い出し、縋る様に声をかける。
「――――先生!あなたは、五月雨学園の先生ですよね?!」
鬼気迫る美月の迫力に押され、霖雨教師はたじろぎながらも、力強く頷く。
「如何にも――――星野さん、どうされましたか?」
「わたし!……わたし、どうしてか、試験会場にはたどり着かなくて――――!今もこれって夢なのでは、と半信半疑なんですけど、……でもでも、やっぱりそうとは思えなくて――――!」
美月は大事に抱え込んだツキの温かさとその重みを感じながら、なお言葉を続ける。
「でももし、これが夢ではないのなら、…………わたしの、……わたしのテストって、どうなるのですかぁ~~?!」
悲壮感漂う美月の魂の叫びに、周りのあやかし達はてすと?てすと、とは何ぞや?!と狼狽え、どうやら美月様の一大事らしい、とまた新たな緊張感が高まってくる。
その中で、慌てて緑雨理事長とその馴染みのあやかし達が、周りのあやかし達をかき分けて、美月の方へと向かってきた。
「星野さん――――!無事で、本当に良かった――――!!」
「り、理事長?!何故ここに――――?」
特別面接の時よりも、げっそりとやつれた理事長の姿に美月はぎょっとして声を上げる。
そして、へにょっとした顔で恐る恐る同じことを理事長にも尋ねた美月は、その答えを聞く前に後ろから聞こえた大爆笑に気を取られて、思わず振り返った。
「ぶはははは――――!この状態で、気にするのは、ソコかよ?!」
「……こら、喬司。その態度は、失礼だろう?」
「ふ、ふふふ――――!それでこそ、ボクの見込んだ美月ちゃん!」
「うわぁぁ~~ん!……美月ちゃんが、無事で良かった――――!」
「そうだな。よく頑張ったな!」
そこに居たのは、これまた遥か昔のことに感じられるが、美月がこの騒動に巻き込まれる前に出会った同じ学年の生徒達。
そのうちの一人は見覚えがなかったが、無言でこちらを見つめる湊の姿を見つけた美月は、慌てて頭を下げた。
「……あの、先程は色々とありがとうございました」
そこで、はっと何かに気付いたのか、美月は霖雨教師にも向きなおり、丁寧に頭を下げてお礼を述べる。
「……いえいえ。こちらこそ、こちらの不手際でこの様な事態になってしまい、申し訳ありません。――――もちろん、星野さんのテストについては、これからこちらで最大限に考慮させて頂くので、心配はありませんよ?そうですよね、理事長?」
やさしげな霖雨教師の言葉とそれにしっかりと頷いた理事長を見て、心底安堵したせいか、美月はふうっと身体中の力が抜け、思わずふらついてしまった。
そこをすかさず支え、また先程のように抱え上げる三つ目。
(……美月殿は、お疲れじゃ。早う、休ませんと、いかん)
(――――そうじゃな。我らも、しばし休まねば)
(行こう、行こう。我らの棲みかへ――――)
そのまま、当然のように美月を抱え、深山のあやかし達を従えつつ歩き出した三つ目に、仰天したのは五月雨学園の陣営。
「待たんか!どさくさに紛れて、何を勝手に攫っていこうとするのか?!そのようなこと、妾は許さぬぞ――――!」
いち早く立ち直り、激しく食って掛かるのは、山姫。
(そうじゃ――――!何、勝手なことをしれっと言っておるのか?!)
(そもそも、その女子は、五月雨学園の生徒ぞ?!)
(誘拐じゃ――――!)(この、人さらい共め――――!)
そこへ理事長馴染みのあやかし達も加わり、その場はあっという間に騒乱の渦にのみ込まれた――――
「――――迷惑?」
今はもう遥か昔の出来事のように思える、山姫とのやり取りを思い出すかのように、美月は首を傾げる。
……あの時はとにかく、少しでも早くテスト会場に辿り着こうと必死で、山姫さんに道を尋ねた――――テ、……ス、ト…………え?!そういえば、……わたしのテストって、どうなってるの?!
「ああああああああ!」
急に大声を出した美月に驚いた山姫は顔を上げ、しかしその瞬間より、美月の抱えているものから目が離せなくなる。
そのまま無言でツキを凝視する山姫。
美月はそれに気づかず、半ば呆然とひたすらたった今自覚した大事実を反芻している中、今度は何事、とまた近くにいた霖雨教師が飛んできた。
「星野さん――!次は、何事ですか?!」
その顔を見て、美月は彼の先程の名乗りを思い出し、縋る様に声をかける。
「――――先生!あなたは、五月雨学園の先生ですよね?!」
鬼気迫る美月の迫力に押され、霖雨教師はたじろぎながらも、力強く頷く。
「如何にも――――星野さん、どうされましたか?」
「わたし!……わたし、どうしてか、試験会場にはたどり着かなくて――――!今もこれって夢なのでは、と半信半疑なんですけど、……でもでも、やっぱりそうとは思えなくて――――!」
美月は大事に抱え込んだツキの温かさとその重みを感じながら、なお言葉を続ける。
「でももし、これが夢ではないのなら、…………わたしの、……わたしのテストって、どうなるのですかぁ~~?!」
悲壮感漂う美月の魂の叫びに、周りのあやかし達はてすと?てすと、とは何ぞや?!と狼狽え、どうやら美月様の一大事らしい、とまた新たな緊張感が高まってくる。
その中で、慌てて緑雨理事長とその馴染みのあやかし達が、周りのあやかし達をかき分けて、美月の方へと向かってきた。
「星野さん――――!無事で、本当に良かった――――!!」
「り、理事長?!何故ここに――――?」
特別面接の時よりも、げっそりとやつれた理事長の姿に美月はぎょっとして声を上げる。
そして、へにょっとした顔で恐る恐る同じことを理事長にも尋ねた美月は、その答えを聞く前に後ろから聞こえた大爆笑に気を取られて、思わず振り返った。
「ぶはははは――――!この状態で、気にするのは、ソコかよ?!」
「……こら、喬司。その態度は、失礼だろう?」
「ふ、ふふふ――――!それでこそ、ボクの見込んだ美月ちゃん!」
「うわぁぁ~~ん!……美月ちゃんが、無事で良かった――――!」
「そうだな。よく頑張ったな!」
そこに居たのは、これまた遥か昔のことに感じられるが、美月がこの騒動に巻き込まれる前に出会った同じ学年の生徒達。
そのうちの一人は見覚えがなかったが、無言でこちらを見つめる湊の姿を見つけた美月は、慌てて頭を下げた。
「……あの、先程は色々とありがとうございました」
そこで、はっと何かに気付いたのか、美月は霖雨教師にも向きなおり、丁寧に頭を下げてお礼を述べる。
「……いえいえ。こちらこそ、こちらの不手際でこの様な事態になってしまい、申し訳ありません。――――もちろん、星野さんのテストについては、これからこちらで最大限に考慮させて頂くので、心配はありませんよ?そうですよね、理事長?」
やさしげな霖雨教師の言葉とそれにしっかりと頷いた理事長を見て、心底安堵したせいか、美月はふうっと身体中の力が抜け、思わずふらついてしまった。
そこをすかさず支え、また先程のように抱え上げる三つ目。
(……美月殿は、お疲れじゃ。早う、休ませんと、いかん)
(――――そうじゃな。我らも、しばし休まねば)
(行こう、行こう。我らの棲みかへ――――)
そのまま、当然のように美月を抱え、深山のあやかし達を従えつつ歩き出した三つ目に、仰天したのは五月雨学園の陣営。
「待たんか!どさくさに紛れて、何を勝手に攫っていこうとするのか?!そのようなこと、妾は許さぬぞ――――!」
いち早く立ち直り、激しく食って掛かるのは、山姫。
(そうじゃ――――!何、勝手なことをしれっと言っておるのか?!)
(そもそも、その女子は、五月雨学園の生徒ぞ?!)
(誘拐じゃ――――!)(この、人さらい共め――――!)
そこへ理事長馴染みのあやかし達も加わり、その場はあっという間に騒乱の渦にのみ込まれた――――
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