(あやかし御用達)民泊始めます~巫女になれ?!無理です!かわりに一泊いかが?

岬野葉々

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お家に帰らなきゃ 2

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 はじめに飛び出してきたのは、……山蛍の大群だった。

 一体何処からこれほど、と怪しむまでの大群――――それを率いる先頭のひと際大きな山蛍を見て、山姫は目を見開く。

「な、……?!し、神格化しておる――――?何故?!」

 続いて飛び出してきたのは、大きな一角の鬼――――言わずと知れた三つ目である。彼は大事そうに少女を抱えているが、彼自身は胸から下は漆黒に染まり、満身創痍の有様。

 けれども、彼が現れるや否や、座り込んでいた深山のあやかし達の目に力が戻り、辺りは大きなどよめきに包まれた。

(おお~~~!!巫女様――――)
(一角の、でかした…………!)
(よくまあ、御無事で――――!)

 涙ぐまんばかりになって、三つ目の方へとよたよたと近寄って行く深山のあやかし達。
 それに、ガハハハッと笑い、胸を張って応える三つ目。

 それから、次から次へとあやかし第十班のメンバーも境界から飛び出して合流し、あっという間に三つ目を中心に何重もの深山のあやかし達の輪が形成され、腕に抱えられた少女の姿は見えなくなった。
 


「美月ちゃん?――――涙、ね、あれ、美月ちゃんだよね?!」
「あ、あわわわ……大変だ!ひょっとして、あやかしどもに捕まってる――――?!」
「助けないと――――!!」

 仲良くハモった涙と澪の頭を、軽くポカンと颯太が叩く。

「ちょっと、落ち着け!……ありゃ、どう見ても、そんな感じじゃねえって」

 そして、一瞬見えた美月の無事な姿に心底安堵し、顔を綻ばせた怜士だったが、その後の展開にまた眉を寄せ、聞き耳を立てる(怜士の場合は、遠耳を使うのだが)

 その怜士の頭を、今度は喬司がポカンと叩く。

「……だから、お前は能力の使い過ぎたっつーの!もうやめとけって言ってるだろうが?!」

 目をむいて怒りつつも、喬司はそのまま手を境界から出てきた二人の方へ向ける。

「――――ほら、あそこに事情を聞けそうな者がやっと出てきただろう?あっちへ、行こうぜ」

 その言葉を聞きつけた幼馴染三人組が騒ぎ出し、湊の元へと駆け寄るのに便乗して、すかさず怜士と喬司もまたそちらへと歩み寄った。



 一方、深山のあやかし達に取り囲まれた美月は狼狽え、三つ目を見上げた。

「……三つ目さん?あの、わたし……」
(ああ、皆、騒ぎ過ぎじゃな。すまんすまん。おおーい、皆のモノ、少しは落ち着けぃ――――!巫女殿が驚くじゃろうが!)

 周りのあやかし達を一喝した三つ目に美月は軽く首を振り、三つ目と周りのあやかし達に話しかける。

「あの、あの、……一体、巫女って――――?わたし、……わたしは、星野美月です。呼ぶならば、美月、と呼んでください」

 余りにも色々とあり過ぎて、今の今まで訂正する時間も気力もなかった美月は、ここぞとばかりに自己紹介をする。
 ところが、美月の、自分は巫女ではない、という意思を込めた筈の自己紹介を聞いた途端、周りのあやかし達は声を上げて泣き始めた……。

(おおーん、うおおぉぉーん)
(巫女様、巫女様が、我らに御名を呼んでもよい、と…………!)
(うおおぉぉーん、わしは、何処までも美月様について行きますぞーーー!!)
(我もじゃ~~!)(美月さま、万歳~~!!)
(我らの美月様~~~!)

 瞬く間にすごい騒ぎとなってしまったため、そこへ霖雨教師が血相を変えて飛び込んでくる。

「――――星野さん?!今度は、何をしでかしたのですか?!」
「な、……わたし、何もしてません!ただ自己紹介をして、これからは名前で呼んで欲しい、とお願いしただけです」

 首を振って無実を訴えた美月だったが、それを聞いた霖雨教師は、深く深く項垂れた。

「…………またですか……この様な場所でわざわざ名を明かし、縁を繋ぐとは」

 意味の分からなかった美月は不安になって、ツキをぎゅっと抱きしめる――――その時、キィィーーーーンという甲高い音と共に、ついに狭間の境界が閉じられた。

 一瞬の静寂の後、今度はその反動なのか、辺り一帯は物凄い喧騒に包まれる。

 人モノ全てが興奮気味にこれまであったこと、無事であった喜び、何でもかんでも思いついたこと全てを吐き出している中、それを呆然と見守っていた美月の元に、いつの間にか山姫が近寄ってきていた。

「あ……!あなたは、あの時の――――?!」

 印象的な赤い着物を着た艶やかなその女性は、美月に向かって深々と頭を下げた――――

    
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