(あやかし御用達)民泊始めます~巫女になれ?!無理です!かわりに一泊いかが?

岬野葉々

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お家に帰らなきゃ 1

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(ええい――――!まだか?まだ、あやつらは帰って来ぬのか?!)

 美月が落ちた狭間の境界の外では、山姫率いる山の眷属達と管理者に属するあやかし達、それに緑雨理事長率いる学園関係者達が、じりじりとしながら霖雨教師と湊が情報を持ち帰るのを待っていた。

 其処には当然、疲れ果て闇に侵食されつつある深山のあやかし達も勢ぞろいして、彼らの巫女様の帰還を待ち望んでいた。
 救援を求め走ったあやかし第二~五班と、救助要員としてこの境界線に留まった第十一班を除いたあやかし達は、全て身体の何処かに黒く染まった部分を持ち、暗澹たる有様だ。

 けれども、彼らはどれ程後を任せて休むよう勧告しても、決して頷かず、じっと蹲りつつも彼女の帰りを待ち続けている。

「――――ほれ、あれを見い!誰にも跪いたことのない、深山のあやかし達があれ程心を砕くのじゃ。星野美月と申す女子が只人である筈がない!ましてや、あの時、彼女はあの封筒・・・・を手に持っておったのじゃぞ?!従って、妾のあの時の判断は、間違ってはおらぬ!」
(……それは、其方がこの異界へと放り投げたショックで、何やらの力に目覚めたのかも、知れぬなぁ――――?)
(そうじゃ、そうじゃ!……か弱い人の女子の身で、このような処へいきなり落とされ、不憫でならぬわ)
「だーーー!!しつっこい奴らめ!それは確かに妾も悪かったが、その原因の一つには、そもそもお主等の目が節穴じゃったということもあるぞ?!其処の、春の者、何とか申せ」

 特別面接の責任者である緑雨理事長を指した山姫に対し、周りの彼と馴染みのあやかし達は牙をむく。

(――――だから、そういう所が責任転嫁じゃと言うとる!)
(そも、其方がこのような騒ぎを起こさなんだら、良かったのじゃ!)
(……例え、異能持ちであったとしても、いずれ分かれば良い事じゃ。決して、このような事態は誰も望んでおらん!)

 疲れと苛立ちで、もう何度目になったか分からぬやり取りを繰り返す山姫と管理者側のあやかし達。
 それもそのはず、美月の失踪事件から、現世ではおよそ三日が経とうとしていた――――

 現世と異界とは、時の流れが異なる。
 そして、異界と狭間もまた、同じ。

 ましてや、美月の落ちた狭間は、深山のあやかし達も二の足を踏む、闇の世界。

 如何な山姫や緑雨理事長率いる関係者達も、迂闊に手を出せぬ場所であった。

 迅速な救助活動を目指し集まったメンバーであったが、それでも力を合わせて狭間で安全を確保できる防御膜は、二人分しか確保できなかった。

 狭間へ実際入る者を何度も吟味し、決定された霖雨教師と湊だったが、何分時間がかかり過ぎている。

 まさか狭間内で核の代替わりが成されようとされているなどとは露思わず、防御膜へと力を送り続ける疲労と、美月の身を案じるが故に新たな情報が全く入ってこない苛立ちで、ひたすら待ち続けている人モノ全てが何度もあちらこちらで衝突を繰り返していた。

 ……深山のあやかし達に至っては、もはや衝突する元気も持ち合わせていない様子。

 その片隅で、新入生五人もまた気を揉みつつもずっと待ち続けていた。

「……なあ、流石の湊もヤバいんじゃね?」
「バカ颯太。湊なら、大丈夫に決まってる――!」
「そうだ、そうだ!それで、きっと美月ちゃんも一緒に連れて帰ってきてくれるの!」
「――――お前等、それを言うなら、霖雨教師だろ?彼ほど優秀な術者はいないって言われてるしな。……どれだけ、身内びいきなの?恥ずかしくないか?」
「バカバカ!何にも知らない冬家の者は、黙っとけ!」
「……喬司、いちいち突っかかるなよ」

 美月の身を案じ此処まで来た怜士だったが、思うように進まない救助活動に加え、長時間の異界入り、そしてとどめに刻一刻と厳しくなる美月の状況から受ける自らのダメージにより、既に疲労困憊していた。

 それでも、限られた能力を使って、少しでも情報を得、何か少しでも事態を好転させようとする怜士を見かねて、喬司は忠告する。

「――――怜士、お前、能力の使い過ぎだ。もうよせ!」

 その時、怜士は境界からいち早く何かを聴き取っていた。

「しっ、少し黙って――――」

 境界から聴こえる微かな羽音、そして、おびただしい数の気配――――

「何かが、何かが多数境界を抜けて、こちらへ来ます――――!」

 怜士の言葉に、周りの人モノ全てが境界に注目した。

  
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