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大森研究員の、……野望?! 2
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「良いか?!これは、我が「食」グループの、巻き返しの大チャンスだ!しっかり、働け――――!」
朝早くからグループ内に緊急招集をかけ、慌てて集まったメンバーに激を飛ばすのは、チーフの大森拓実。
一週間ほど前、長年の研究の成果?を手にした(と思われていた)彼は、その幸福の絶頂から一夜にして叩き落とされ、……今また再起をかけて、奮闘を始める。
「大体、今ドキは誰もかれもが「食」を軽んじ過ぎる――――!「食」は、生き物の基本だぞ?!……まして、我々一族の者達はその性質上、一切今ドキの人工食物を全く受け付けぬ体質のくせに――――!!」
我々の崇高なる研究に対する敬意が足りないのだ、敬意が――――!と、喚き散らしながらも、その手つきは鮮やか。
「食」グループ内に納められた数々の本物の調味料を取り出し、味を見ながら配合をしていく――――
「……情報によると、星野美月は和食党だそうだ。我が「食」グループの最も得意とする和食――――!良い趣味だ」
うんうんと頷きながらも、大森は選び抜かれた食材を前にして、次々と指示を飛ばす。
そして、いざ出陣!とばかりに、気合を入れて下ごしらえ済の食材その他を抱え、数名と研究エリアを出て行こうとする――――
その時、何か思いついたのか、大森は首を傾げ、小声で女性研究員に指示を新たに出してから、今度こそ足取り軽くそこを出て行った。
…………何だろう?いい匂い――――?
これは、おばあちゃんの御出汁の匂い――?……ううん、ちょっと違う。もっと複雑で、今まで食べたことがないような、美味しそうな匂い――――
深い深い意識の底で、美月の食い気が身じろぎをする……。
あ、これは、香ばしい焼き魚の匂いだ――!
ご飯が炊ける、匂いもする――!
それにより、美月の思考も動き出す。
そして、匂いと思考が連動すれば、次に動き出すのは、…………腹の音。
「――――――お腹が空いた!今日のご飯は、なに……?!」
四日ぶりに目覚めた美月の第一声は、コレだった……。
それに仰天したのは、周りで固唾を呑んで見守っていた山姫をはじめとする館の者達。
実はこの四日間、自らを守るためか薄い膜のようなモノに包まれ、外からの呼びかけに何の反応も示さなかった美月とツキ、それにお供の深山のあやかし達。
それに、いつ目覚めるのか、果たして目覚めるのか?と聞いたこともないその現象に気を揉み、案じ続けた山姫らは、気が気ではなかったのだ。
緑雨理事長も気にかけ、絶えず人や術者を送り込んではきたが、何分予想もつかないその事態に、誰もが有効な手を思いつかず、ただいたずらに時が過ぎるばかりだった。
それが、たった今、美月は目覚め、しかも食を欲している――――!
「……「食」というものは、つくづく素晴らしいものなのじゃな――!」
感動に目を輝かせ、心底感心した様子の山姫に、大森は胸を張って応える。
「その通り――――!「食」とは、生きることと切っても切れない、まさに生きる力――!良くお分かりで」
……その間、寝起きで頭の回らない美月は、本能の赴くまま、隣の部屋に並べられたご飯に目が釘付けに。
それに気がついた実嶺は、素早く食べやすいように盆に乗せ、美月の元まで運んできて食べることを勧める――
美月の隣で可愛らしく小さく伸びをして起きたツキのミルクも、もちろん忘れずに。
「……え?これ、ここで食べても良いのですか?」
「勿論です。――――どんどん、お好きなだけ、お召し上がりくださいませ」
にこやかに勧めてくれる実嶺に、美月はちらっとツキの方へと目を遣り、ツキの前にミルクのお皿を差し出すと、にっこりと笑って手を合わせた。
「わわっ!すごく美味しそう~~!………………それでは、お言葉に甘えて、いただきます――!」
そうして、とても嬉しそうに、美味しそうに食べだした美月を見て、大森とその他の研究員たちは皆、目を細め満足げに見守っていた。
「――――よぉし!私たちの研究は、間違っていない!…………しかし、彼女は本当に「食」グループ冥利に尽きる食べっぷりだな――――!なんて、研究しがいのある、モルモット――いや、被験者だ。やはり、何としても、その身柄は我らが「食」グループにこそ、欲しい――――!」
……あやかし関連、全ての人モノ達に好かれる、という美月の特質が遺憾なく発揮されたのか、見果てぬ夢?野望を抱く大森研究員。
斯くして、今後激しさを増す(だろう)美月争奪戦に対し、華々しく無事大金星を挙げた「食」グループが名乗りを上げた……。
朝早くからグループ内に緊急招集をかけ、慌てて集まったメンバーに激を飛ばすのは、チーフの大森拓実。
一週間ほど前、長年の研究の成果?を手にした(と思われていた)彼は、その幸福の絶頂から一夜にして叩き落とされ、……今また再起をかけて、奮闘を始める。
「大体、今ドキは誰もかれもが「食」を軽んじ過ぎる――――!「食」は、生き物の基本だぞ?!……まして、我々一族の者達はその性質上、一切今ドキの人工食物を全く受け付けぬ体質のくせに――――!!」
我々の崇高なる研究に対する敬意が足りないのだ、敬意が――――!と、喚き散らしながらも、その手つきは鮮やか。
「食」グループ内に納められた数々の本物の調味料を取り出し、味を見ながら配合をしていく――――
「……情報によると、星野美月は和食党だそうだ。我が「食」グループの最も得意とする和食――――!良い趣味だ」
うんうんと頷きながらも、大森は選び抜かれた食材を前にして、次々と指示を飛ばす。
そして、いざ出陣!とばかりに、気合を入れて下ごしらえ済の食材その他を抱え、数名と研究エリアを出て行こうとする――――
その時、何か思いついたのか、大森は首を傾げ、小声で女性研究員に指示を新たに出してから、今度こそ足取り軽くそこを出て行った。
…………何だろう?いい匂い――――?
これは、おばあちゃんの御出汁の匂い――?……ううん、ちょっと違う。もっと複雑で、今まで食べたことがないような、美味しそうな匂い――――
深い深い意識の底で、美月の食い気が身じろぎをする……。
あ、これは、香ばしい焼き魚の匂いだ――!
ご飯が炊ける、匂いもする――!
それにより、美月の思考も動き出す。
そして、匂いと思考が連動すれば、次に動き出すのは、…………腹の音。
「――――――お腹が空いた!今日のご飯は、なに……?!」
四日ぶりに目覚めた美月の第一声は、コレだった……。
それに仰天したのは、周りで固唾を呑んで見守っていた山姫をはじめとする館の者達。
実はこの四日間、自らを守るためか薄い膜のようなモノに包まれ、外からの呼びかけに何の反応も示さなかった美月とツキ、それにお供の深山のあやかし達。
それに、いつ目覚めるのか、果たして目覚めるのか?と聞いたこともないその現象に気を揉み、案じ続けた山姫らは、気が気ではなかったのだ。
緑雨理事長も気にかけ、絶えず人や術者を送り込んではきたが、何分予想もつかないその事態に、誰もが有効な手を思いつかず、ただいたずらに時が過ぎるばかりだった。
それが、たった今、美月は目覚め、しかも食を欲している――――!
「……「食」というものは、つくづく素晴らしいものなのじゃな――!」
感動に目を輝かせ、心底感心した様子の山姫に、大森は胸を張って応える。
「その通り――――!「食」とは、生きることと切っても切れない、まさに生きる力――!良くお分かりで」
……その間、寝起きで頭の回らない美月は、本能の赴くまま、隣の部屋に並べられたご飯に目が釘付けに。
それに気がついた実嶺は、素早く食べやすいように盆に乗せ、美月の元まで運んできて食べることを勧める――
美月の隣で可愛らしく小さく伸びをして起きたツキのミルクも、もちろん忘れずに。
「……え?これ、ここで食べても良いのですか?」
「勿論です。――――どんどん、お好きなだけ、お召し上がりくださいませ」
にこやかに勧めてくれる実嶺に、美月はちらっとツキの方へと目を遣り、ツキの前にミルクのお皿を差し出すと、にっこりと笑って手を合わせた。
「わわっ!すごく美味しそう~~!………………それでは、お言葉に甘えて、いただきます――!」
そうして、とても嬉しそうに、美味しそうに食べだした美月を見て、大森とその他の研究員たちは皆、目を細め満足げに見守っていた。
「――――よぉし!私たちの研究は、間違っていない!…………しかし、彼女は本当に「食」グループ冥利に尽きる食べっぷりだな――――!なんて、研究しがいのある、モルモット――いや、被験者だ。やはり、何としても、その身柄は我らが「食」グループにこそ、欲しい――――!」
……あやかし関連、全ての人モノ達に好かれる、という美月の特質が遺憾なく発揮されたのか、見果てぬ夢?野望を抱く大森研究員。
斯くして、今後激しさを増す(だろう)美月争奪戦に対し、華々しく無事大金星を挙げた「食」グループが名乗りを上げた……。
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