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第1章~2人の奇妙な関係~
今は、俺のものだ
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「妻の仕事ぶりを見にきて何が悪いんだ」
「燿くんがいるって分かってて来たくせに」
学くんの行動なんてわかってる。
あの時からちっとも変わってない。
「俺のことをよくわかってるようだな。それなら話は早い」
「何が?」
「あいつと仲良くするのはやめろ」
「なっ……!」
親も兄弟も親戚もいなくなって。
天涯孤独になってしまったあたしの唯一の理解者だった。
「お前、俺が好きなんじゃないのかよ」
「それとこれとは話が違う!」
「違わねぇんだよ。俺のことだけ見てろよ」
グイッと腕を引っ張られて、気づけば学くんの腕のなか。
「なによ……あたしのことなんて好きじゃないくせに」
口ではこんなことを言いながら、強引さに嬉しく思ってる。
あたしもなかなかの天邪鬼だ。
「好き……になんかならねぇよ」
「だったらなんでよ……」
「俺のものには変わんねぇだろ。俺の嫁だろ」
あたしのことを好きにならないと言うくせに。
あたしのことは自分のものだと言う。
そんな学くんに悔しいけど、ドキドキしてるのも事実で。
でも、燿くんと話さないとかそんなのはまた別の話。
「なんで、燿くんを目の敵にするの?」
「気に食わない」
「なんで……」
副社長たるものが、一社員を気に入らないなんて。
大問題ではなかろうか。
「お前があいつのこと信頼しすぎ」
「……っ」
なんで、そんなことを言うのだろう。
あたしのことが好きじゃないなら期待させることを言わないでほしいのに。
「あのころだって、俺よりも全部あいつに言ってて……まぁ、俺といた期間なんて短いけど、それでも悔しかった」
「学くん……」
「あのころの話だからな。俺は今は好きじゃないからな」
「わかってるよ……」
念を押さなくても。
そんなのは分かってる。
自惚れてはいけないってことくらい。
「でも、今は俺のものだ」
「うん……」
「仕事戻るわ。帰り、一緒に帰ろう」
「わかった」
あくまでも、彼の利益のため。
一緒にいるのはあたしに気持ちにあるからじゃない。
そうやって自分に言い聞かせないと、どうしても期待してしまう。
自分のものだと言う学くんの表情が、どうしても大切なものを見ている目をしてる気がして。
あたしの心臓はざわつくんだ。
「あ」
そんなことを考えてると、机の上のスマホが震えていて、LINEの通知を告げていた。
「燿くん」
ディスプレイに表示されたのは、燿くんの名前。
〝ドリンク、サンキューな!〟
〝お前、副社長と結婚したならちゃんと言っとけよな〟
焦った顔のスタンプつき。
「自分で言いたかったなぁ」
本当は寝る前に言うつもりだった。
すぐに寝てしまったからそれは叶わず、起きたら言おうとしてたら学くんが来てしまった。
「燿くんがいるって分かってて来たくせに」
学くんの行動なんてわかってる。
あの時からちっとも変わってない。
「俺のことをよくわかってるようだな。それなら話は早い」
「何が?」
「あいつと仲良くするのはやめろ」
「なっ……!」
親も兄弟も親戚もいなくなって。
天涯孤独になってしまったあたしの唯一の理解者だった。
「お前、俺が好きなんじゃないのかよ」
「それとこれとは話が違う!」
「違わねぇんだよ。俺のことだけ見てろよ」
グイッと腕を引っ張られて、気づけば学くんの腕のなか。
「なによ……あたしのことなんて好きじゃないくせに」
口ではこんなことを言いながら、強引さに嬉しく思ってる。
あたしもなかなかの天邪鬼だ。
「好き……になんかならねぇよ」
「だったらなんでよ……」
「俺のものには変わんねぇだろ。俺の嫁だろ」
あたしのことを好きにならないと言うくせに。
あたしのことは自分のものだと言う。
そんな学くんに悔しいけど、ドキドキしてるのも事実で。
でも、燿くんと話さないとかそんなのはまた別の話。
「なんで、燿くんを目の敵にするの?」
「気に食わない」
「なんで……」
副社長たるものが、一社員を気に入らないなんて。
大問題ではなかろうか。
「お前があいつのこと信頼しすぎ」
「……っ」
なんで、そんなことを言うのだろう。
あたしのことが好きじゃないなら期待させることを言わないでほしいのに。
「あのころだって、俺よりも全部あいつに言ってて……まぁ、俺といた期間なんて短いけど、それでも悔しかった」
「学くん……」
「あのころの話だからな。俺は今は好きじゃないからな」
「わかってるよ……」
念を押さなくても。
そんなのは分かってる。
自惚れてはいけないってことくらい。
「でも、今は俺のものだ」
「うん……」
「仕事戻るわ。帰り、一緒に帰ろう」
「わかった」
あくまでも、彼の利益のため。
一緒にいるのはあたしに気持ちにあるからじゃない。
そうやって自分に言い聞かせないと、どうしても期待してしまう。
自分のものだと言う学くんの表情が、どうしても大切なものを見ている目をしてる気がして。
あたしの心臓はざわつくんだ。
「あ」
そんなことを考えてると、机の上のスマホが震えていて、LINEの通知を告げていた。
「燿くん」
ディスプレイに表示されたのは、燿くんの名前。
〝ドリンク、サンキューな!〟
〝お前、副社長と結婚したならちゃんと言っとけよな〟
焦った顔のスタンプつき。
「自分で言いたかったなぁ」
本当は寝る前に言うつもりだった。
すぐに寝てしまったからそれは叶わず、起きたら言おうとしてたら学くんが来てしまった。
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