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第1章~2人の奇妙な関係~
美味しい料理は涙の味
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「お、上がったか」
学くんが置いておいてくれた部屋着に着替え、髪の毛を拭きながらリビングに行くとソファーから立ち上がる。
「お湯、ちょうどよかった」
「だろ?スマホで管理できるようになってんだよ」
「さすがはお金持ち……」
「なんだそれ」
プッと吹き出す学くんの表情はとてめ楽しそうで、自分の利益のためにだけにあたしと結婚したということを忘れそうになる。
「つーか、髪の毛。ちゃんと乾かさねぇと風邪引くぞ」
すぐ側に歩いてきて、あたしの手からタオルを奪って乱暴に髪の毛を拭く。
でも、その乱暴さが心地よく感じる。
「学くんも……お風呂」
「ん。ご飯食べてからでいい」
「そっか……」
髪の毛を拭かれて、時たま触れる手にドキドキして。
離れてほしいけど、でも離れて欲しくなくて。
自分がどうしたらいいのかもわからなくなる。
「ご飯、食べようか」
学くんが食卓テーブルを指さす。
「え!?これどうしたの!?」
テーブルの上に並ぶのは、どうみても誰かの手作り料理。
「ん、作った」
「学くんが!?」
彼が料理を作るなんて思ってもいなくて、驚きの声をあげてしまう。
「お前、失礼すぎ」
「だって……」
お金持ちのボンボンで、ずっと家政婦さんにいろいろしてもらって何も出来ない人だと思っていた。
というか、それが御曹司のイメージ。
「俺の母親がさ」
「うん」
「俺が教育実習やってた当たりで死んだんだ。交通事故だったんだけど。死ぬ前に、なぜか俺にいろいろレシピを教えてってさ。なんかそれから作るのが当たり前になってたんだよな」
「そうなんだ……」
学くんは懐かしそうに目を細めて話す。
お母さんのことが大好きだったんだろうなってことが見てるだけで伝わってくる。
でも、知らなかった。
あのころ、そんなことがあったなんて。
「もしかして、教育実習を最後までできなかったのって……」
「ん。母さんが危篤になったから」
それなのに、あたしは。
最後までいてくれなくて、約束を守ってもらえなくて。
そんな理由があったなんて思いをせず、憤りを感じたメッセージを学くんくんに送っちゃったね。
「ごめん……あたし何も知らなくて」
「知るわけねーじゃん。でも、その後も何も言わなかった俺がそこは悪いから」
気にすんな。とあたしの頭をぽんぽんっと撫でてくれる。
その手つきが暖かくて。
そして、そう話す学くんがどこか寂しそうで。
「お前、なんで泣くんだよ」
気がついたらあたしの瞳からは涙が出てた。
「何も知らなかったけど、学くんのことたくさん責めたなって思って」
「まぁ、俺そこからお前のメッセージ一切見てないから大丈夫」
「え……?」
ひどい言葉の数々を見られてなくてよかったとは思うけど。
それでも、あたしのメッセージを見てなかったことには疑問が募る。
「俺、母さんのことがあったあたりからお前への気持ち冷めてたからさ」
「そっか……」
ひどいことを言われている気がする。
でも、なんでだろう。
よくわかんないけど、やっぱり好きだって思ってしまう。
そのあと食べた学くんのお手製料理はどれもおいしくて。
でも、涙のせいですこししょっぱい感じがした。
初めて食べた二人でのご飯。
いつか、あの日の料理美味しかったねって
二人で笑える日が来たらいいのにって思った。
学くんが置いておいてくれた部屋着に着替え、髪の毛を拭きながらリビングに行くとソファーから立ち上がる。
「お湯、ちょうどよかった」
「だろ?スマホで管理できるようになってんだよ」
「さすがはお金持ち……」
「なんだそれ」
プッと吹き出す学くんの表情はとてめ楽しそうで、自分の利益のためにだけにあたしと結婚したということを忘れそうになる。
「つーか、髪の毛。ちゃんと乾かさねぇと風邪引くぞ」
すぐ側に歩いてきて、あたしの手からタオルを奪って乱暴に髪の毛を拭く。
でも、その乱暴さが心地よく感じる。
「学くんも……お風呂」
「ん。ご飯食べてからでいい」
「そっか……」
髪の毛を拭かれて、時たま触れる手にドキドキして。
離れてほしいけど、でも離れて欲しくなくて。
自分がどうしたらいいのかもわからなくなる。
「ご飯、食べようか」
学くんが食卓テーブルを指さす。
「え!?これどうしたの!?」
テーブルの上に並ぶのは、どうみても誰かの手作り料理。
「ん、作った」
「学くんが!?」
彼が料理を作るなんて思ってもいなくて、驚きの声をあげてしまう。
「お前、失礼すぎ」
「だって……」
お金持ちのボンボンで、ずっと家政婦さんにいろいろしてもらって何も出来ない人だと思っていた。
というか、それが御曹司のイメージ。
「俺の母親がさ」
「うん」
「俺が教育実習やってた当たりで死んだんだ。交通事故だったんだけど。死ぬ前に、なぜか俺にいろいろレシピを教えてってさ。なんかそれから作るのが当たり前になってたんだよな」
「そうなんだ……」
学くんは懐かしそうに目を細めて話す。
お母さんのことが大好きだったんだろうなってことが見てるだけで伝わってくる。
でも、知らなかった。
あのころ、そんなことがあったなんて。
「もしかして、教育実習を最後までできなかったのって……」
「ん。母さんが危篤になったから」
それなのに、あたしは。
最後までいてくれなくて、約束を守ってもらえなくて。
そんな理由があったなんて思いをせず、憤りを感じたメッセージを学くんくんに送っちゃったね。
「ごめん……あたし何も知らなくて」
「知るわけねーじゃん。でも、その後も何も言わなかった俺がそこは悪いから」
気にすんな。とあたしの頭をぽんぽんっと撫でてくれる。
その手つきが暖かくて。
そして、そう話す学くんがどこか寂しそうで。
「お前、なんで泣くんだよ」
気がついたらあたしの瞳からは涙が出てた。
「何も知らなかったけど、学くんのことたくさん責めたなって思って」
「まぁ、俺そこからお前のメッセージ一切見てないから大丈夫」
「え……?」
ひどい言葉の数々を見られてなくてよかったとは思うけど。
それでも、あたしのメッセージを見てなかったことには疑問が募る。
「俺、母さんのことがあったあたりからお前への気持ち冷めてたからさ」
「そっか……」
ひどいことを言われている気がする。
でも、なんでだろう。
よくわかんないけど、やっぱり好きだって思ってしまう。
そのあと食べた学くんのお手製料理はどれもおいしくて。
でも、涙のせいですこししょっぱい感じがした。
初めて食べた二人でのご飯。
いつか、あの日の料理美味しかったねって
二人で笑える日が来たらいいのにって思った。
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