15 / 69
第1章~2人の奇妙な関係~
過去の人
しおりを挟む
〝もうすぐ着く〟
時刻は18時ちょっと前。
学くんがメッセージをくれたから、あたしもホテルの前で待ってみようとエントランスを抜けて外に出る。
「あれ?」
声と視線を感じ、聞こえた方向に目をやる。
「……っ」
見た瞬間、見なければよかったと後悔をした。
大学生のとき、好きだなと思ったひと。
1年間くらいつきあってた。
「ちとせ……だよね?」
あのころのことなんて、水に流したかのように爽やかそうに笑ってあたしに近づいてくる。
隣の女の人の肩を抱いて。
「人、待ってるので」
あたしは彼から視線を外して、学くんを待つ。
「へぇ。その格好は誰かの結婚式?」
あたしの態度も気にすることなく、変わらずに彼は話かけてくる。
「関係ないです」
「えー?そう?まぁ、いっかー。俺ね、彼女と結婚するんだよ」
隣にいる彼女は、くすくすと笑ってあたしを見てる。
彼女はあたしを知っている。
だって、同じサークル内であたしから彼を奪っていったから。
さぞかしいい気分だろう。
自分が勝ったのだから。
彼を手に入れて、そして結婚まで行き着いて。
でも、あたしだって……。
「ちとせ、待たせたね」
二人から逃れたくて、俯くあたしの肩をふわりと後から包み込まれた。
優しい声で。
「学くん……」
学くんの顔を見て、堪えていた涙が出そうだった。
でも、絶対にこの二人の前では泣きたくなかった。
「俺たちも結婚したんだよ」
学くんはあたしを自分の腕の中へと包み込んだ。
〝泣いてももう見えないよ〟ってコソッと言ってくれた。
その優しさが嬉しくて、あたしは学くんの腕の中で涙を流した。
「君たちが浮気してくれたから、俺たちが結婚できたんだ。ちとせ共々、君たちには感謝しかないよ」
どうしてなのだろう。
あたしはこの二人のことを学くんに言ったことがない。
高校時代の話ならわかるが、学くんと一切関わってない大学時代の話だ。
「じゃあお幸せに」
それだけ言うと、学くんはあたしの手を引いてホテルの中へと入った。
去り際にみた彼の顔は心底悔しそうだった。
隣にの彼女は、学くんに見とれていた。
どうみても、彼よりも学くんのほうが顔面偏差値が高い。
学くんは高すぎるのだ。
「あいつの顔みたか?」
学くんが面白そうに言う。
「うん、見た。でもなんで……?浮気のこと」
「んー、なんとなく?そんな雰囲気だったから。あの女も勝ち誇ったような顔してたし」
「そっか……」
それだけで瞬時に判断できる学くんはやっぱりすごい。
「お前のほうがいい女だよ」
「……え?」
「さっきのやつ、もったいないことしたよな。絶対お前の方がいいのに」
あーあと言って、ポンポンっとあたしの頭を撫でてくれる学くんに心が暖かくなる。
「そろそろ時間だ」
腕時計をあたしに見せてくる。
「あ、本当だ。ちょっとメイク直してくるね」
「あぁ、早くしろよ」
少し泣いてしまったから、崩れてしまったメイクを直すべくトイレにかけこんだ。
時刻は18時ちょっと前。
学くんがメッセージをくれたから、あたしもホテルの前で待ってみようとエントランスを抜けて外に出る。
「あれ?」
声と視線を感じ、聞こえた方向に目をやる。
「……っ」
見た瞬間、見なければよかったと後悔をした。
大学生のとき、好きだなと思ったひと。
1年間くらいつきあってた。
「ちとせ……だよね?」
あのころのことなんて、水に流したかのように爽やかそうに笑ってあたしに近づいてくる。
隣の女の人の肩を抱いて。
「人、待ってるので」
あたしは彼から視線を外して、学くんを待つ。
「へぇ。その格好は誰かの結婚式?」
あたしの態度も気にすることなく、変わらずに彼は話かけてくる。
「関係ないです」
「えー?そう?まぁ、いっかー。俺ね、彼女と結婚するんだよ」
隣にいる彼女は、くすくすと笑ってあたしを見てる。
彼女はあたしを知っている。
だって、同じサークル内であたしから彼を奪っていったから。
さぞかしいい気分だろう。
自分が勝ったのだから。
彼を手に入れて、そして結婚まで行き着いて。
でも、あたしだって……。
「ちとせ、待たせたね」
二人から逃れたくて、俯くあたしの肩をふわりと後から包み込まれた。
優しい声で。
「学くん……」
学くんの顔を見て、堪えていた涙が出そうだった。
でも、絶対にこの二人の前では泣きたくなかった。
「俺たちも結婚したんだよ」
学くんはあたしを自分の腕の中へと包み込んだ。
〝泣いてももう見えないよ〟ってコソッと言ってくれた。
その優しさが嬉しくて、あたしは学くんの腕の中で涙を流した。
「君たちが浮気してくれたから、俺たちが結婚できたんだ。ちとせ共々、君たちには感謝しかないよ」
どうしてなのだろう。
あたしはこの二人のことを学くんに言ったことがない。
高校時代の話ならわかるが、学くんと一切関わってない大学時代の話だ。
「じゃあお幸せに」
それだけ言うと、学くんはあたしの手を引いてホテルの中へと入った。
去り際にみた彼の顔は心底悔しそうだった。
隣にの彼女は、学くんに見とれていた。
どうみても、彼よりも学くんのほうが顔面偏差値が高い。
学くんは高すぎるのだ。
「あいつの顔みたか?」
学くんが面白そうに言う。
「うん、見た。でもなんで……?浮気のこと」
「んー、なんとなく?そんな雰囲気だったから。あの女も勝ち誇ったような顔してたし」
「そっか……」
それだけで瞬時に判断できる学くんはやっぱりすごい。
「お前のほうがいい女だよ」
「……え?」
「さっきのやつ、もったいないことしたよな。絶対お前の方がいいのに」
あーあと言って、ポンポンっとあたしの頭を撫でてくれる学くんに心が暖かくなる。
「そろそろ時間だ」
腕時計をあたしに見せてくる。
「あ、本当だ。ちょっとメイク直してくるね」
「あぁ、早くしろよ」
少し泣いてしまったから、崩れてしまったメイクを直すべくトイレにかけこんだ。
0
あなたにおすすめの小説
灰かぶりの姉
吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。
「今日からあなたのお父さんと妹だよ」
そう言われたあの日から…。
* * *
『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。
国枝 那月×野口 航平の過去編です。
Short stories
美希みなみ
恋愛
「咲き誇る花のように恋したい」幼馴染の光輝の事がずっと好きな麻衣だったが、光輝は麻衣の妹の結衣と付き合っている。その事実に、麻衣はいつも笑顔で自分の思いを封じ込めてきたけど……?
切なくて、泣ける短編です。
幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
葉月 まい
恋愛
近すぎて遠い存在
一緒にいるのに 言えない言葉
すれ違い、通り過ぎる二人の想いは
いつか重なるのだろうか…
心に秘めた想いを
いつか伝えてもいいのだろうか…
遠回りする幼馴染二人の恋の行方は?
幼い頃からいつも一緒にいた
幼馴染の朱里と瑛。
瑛は自分の辛い境遇に巻き込むまいと、
朱里を遠ざけようとする。
そうとは知らず、朱里は寂しさを抱えて…
・*:.。. ♡ 登場人物 ♡.。.:*・
栗田 朱里(21歳)… 大学生
桐生 瑛(21歳)… 大学生
桐生ホールディングス 御曹司
嘘をつく唇に優しいキスを
松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。
桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。
だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。
麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。
そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。
10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。
友達の肩書き
菅井群青
恋愛
琢磨は友達の彼女や元カノや友達の好きな人には絶対に手を出さないと公言している。
私は……どんなに強く思っても友達だ。私はこの位置から動けない。
どうして、こんなにも好きなのに……恋愛のスタートラインに立てないの……。
「よかった、千紘が友達で本当に良かった──」
近くにいるはずなのに遠い背中を見つめることしか出来ない……。そんな二人の関係が変わる出来事が起こる。
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
吉野葉月
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
君に何度でも恋をする
明日葉
恋愛
いろいろ訳ありの花音は、大好きな彼から別れを告げられる。別れを告げられた後でわかった現実に、花音は非常識とは思いつつ、かつて一度だけあったことのある翔に依頼をした。
「仕事の依頼です。個人的な依頼を受けるのかは分かりませんが、婚約者を演じてくれませんか」
「ふりなんて言わず、本当に婚約してもいいけど?」
そう答えた翔の真意が分からないまま、婚約者の演技が始まる。騙す相手は、花音の家族。期間は、残り少ない時間を生きている花音の祖父が生きている間。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる