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第三章~真実~
眩しい存在
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「そ。明日からホームルームとかに俺もいるからよろしくね。ちなみに田代先生と同じく英語担当」
「あ、は、はい」
あたしに目線を合わせてくる遊佐先生に対して、すぐに逸らしてしまうあたし。
元々、人と話すのなんて苦手だし。
初対面なんてなおのこと。
しかも、この人に見られると心臓が騒ぎ出す。
あたしを見て、にっこり笑う遊佐先生に耐えられなくて燿くんの後ろへと回る。
「おい、なにしてんだよ」
背中に回ったあたしに振り向いて苦笑いをする燿くん。
「遊佐先生は……眩しい」
自分でも何言ってるのかわかんない。
でも、社交的じゃないあたしにとって遊佐先生はとても眩しかった。
燿くんも眩しいくらい輝いてる存在だけど、また違う。
燿くんとは目を合わせられる。
「はは、眩しいって面白いね。鈴野さん」
「あ、いえ……」
顔はまだ見れない。
でも、思った。
下の名前で読んでほしいって。
この気持ちをなんて言うんだろう。
✱✱✱
「お前さ……もしかして……」
先生たちが生徒会室をあとにしてすぐ、ためらいがちに燿くんが口を開く。
「え?もしかして……?」
「気づいてないならいい」
少し不機嫌そうにドカッと椅子に坐る。
「なにさー!途中まで言うとか気になるじゃん!」
「ずっと気にしとけ!」
むすーっとしたまま、資料作成に戻る燿くん。
「なんだよー、それ」
燿くんが何を言いたいのか、なんで不機嫌なのか。
その理由がまったくわからなかった。
「俺が教えるとかムカつくから、きづかないなら一生気づくな」
なんだかよくわからないことを、むすっとした顔のまま呟いて、ふわっとあたしの頭に触れる。
「今日の燿くん、なんか男の子みたい」
「は?俺が女だったことあった?」
あたしの頭から手を離して、首を傾げる。
「そういうわけじゃなくて……。なんか男の人みたいだなって」
「あ?襲うぞ?」
「すみません、もう言いません」
怒ったら怖い燿くんのことを怒らせたくなくて、頭を下げる。
「ほんっと、お前って変なやつ」
ぷはっと吹き出す。
「もう、変とか言わないでよ」
「頼むからこのままでいてくれよ。何も知るなよ」
もう一度あたしの頭に触れる。
燿くんの言葉が何を意味するのか。
まだまだ子供なあたしにはわからなかった。
「なんか、あたし燿くんの妹みたいだね」
「あ?妹?俺は妹には手は出さねぇぞ?」
「まって、まだ手出されてないし」
燿くんに向かって、顔の前でブンブンと手を振る。
「まだ?ふーん、これからあるかもしれねぇの?」
「あ!ないない!」
ニヤっと笑う燿くんに焦って、椅子から立ち上がる。
「ぶはっ!嘘だよ!嘘!なんもしねぇから安心しろよ」
「もう、頼むよお兄ちゃん」
「はいはい、妹よ」
燿くんが本当にお兄ちゃんだったらいいのにってずっと思ってきた。
そしたら、どんなに幸せな人生だっただろうか。
燿くんが言う〝知らなくていいこと〟
それをあたしが知るのはもうすぐそこにあるなんて、この時のあたしは知る由もなかった。
「あ、は、はい」
あたしに目線を合わせてくる遊佐先生に対して、すぐに逸らしてしまうあたし。
元々、人と話すのなんて苦手だし。
初対面なんてなおのこと。
しかも、この人に見られると心臓が騒ぎ出す。
あたしを見て、にっこり笑う遊佐先生に耐えられなくて燿くんの後ろへと回る。
「おい、なにしてんだよ」
背中に回ったあたしに振り向いて苦笑いをする燿くん。
「遊佐先生は……眩しい」
自分でも何言ってるのかわかんない。
でも、社交的じゃないあたしにとって遊佐先生はとても眩しかった。
燿くんも眩しいくらい輝いてる存在だけど、また違う。
燿くんとは目を合わせられる。
「はは、眩しいって面白いね。鈴野さん」
「あ、いえ……」
顔はまだ見れない。
でも、思った。
下の名前で読んでほしいって。
この気持ちをなんて言うんだろう。
✱✱✱
「お前さ……もしかして……」
先生たちが生徒会室をあとにしてすぐ、ためらいがちに燿くんが口を開く。
「え?もしかして……?」
「気づいてないならいい」
少し不機嫌そうにドカッと椅子に坐る。
「なにさー!途中まで言うとか気になるじゃん!」
「ずっと気にしとけ!」
むすーっとしたまま、資料作成に戻る燿くん。
「なんだよー、それ」
燿くんが何を言いたいのか、なんで不機嫌なのか。
その理由がまったくわからなかった。
「俺が教えるとかムカつくから、きづかないなら一生気づくな」
なんだかよくわからないことを、むすっとした顔のまま呟いて、ふわっとあたしの頭に触れる。
「今日の燿くん、なんか男の子みたい」
「は?俺が女だったことあった?」
あたしの頭から手を離して、首を傾げる。
「そういうわけじゃなくて……。なんか男の人みたいだなって」
「あ?襲うぞ?」
「すみません、もう言いません」
怒ったら怖い燿くんのことを怒らせたくなくて、頭を下げる。
「ほんっと、お前って変なやつ」
ぷはっと吹き出す。
「もう、変とか言わないでよ」
「頼むからこのままでいてくれよ。何も知るなよ」
もう一度あたしの頭に触れる。
燿くんの言葉が何を意味するのか。
まだまだ子供なあたしにはわからなかった。
「なんか、あたし燿くんの妹みたいだね」
「あ?妹?俺は妹には手は出さねぇぞ?」
「まって、まだ手出されてないし」
燿くんに向かって、顔の前でブンブンと手を振る。
「まだ?ふーん、これからあるかもしれねぇの?」
「あ!ないない!」
ニヤっと笑う燿くんに焦って、椅子から立ち上がる。
「ぶはっ!嘘だよ!嘘!なんもしねぇから安心しろよ」
「もう、頼むよお兄ちゃん」
「はいはい、妹よ」
燿くんが本当にお兄ちゃんだったらいいのにってずっと思ってきた。
そしたら、どんなに幸せな人生だっただろうか。
燿くんが言う〝知らなくていいこと〟
それをあたしが知るのはもうすぐそこにあるなんて、この時のあたしは知る由もなかった。
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