結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~

馬村 はくあ

文字の大きさ
41 / 69
第三章~真実~

学くんのいる毎日

しおりを挟む
「ちとせちゃん、帰ろう」



金曜日。
学くんとこうして一緒にいるようになったのは、月曜日のこと。

あれから、学くんとはことある事に一緒にいるようになった。



『お前、あいつに騙されてんじゃねーの?』



なんて、燿くんは不吉なことを言ってくれるけど。
でも、いま隣にいる学くんはいつも優しい。



「月曜で終わるな」


「うん……」



このなんとも言えない関係が始まる時。
〝終わったら言う〟そう言われていた。

だから、月曜。
教育実習が終わったら、あたしたちの関係に名前がつく。



「気は変わってない?」


「学くんこそ……」



学くんは、あたしのことを可愛いとか、好きだとか。
たくさんの甘い言葉を言ってくれるけど。

でも、学校中に学くんのファンがいるし。
その中にはあたしよりも可愛い子なんてたくさんいる。

だから、いつも他の子に気が向いてしまうんじゃないかと不安だらけだ。



「なんか、不安気な顔してるけどどうかした?」



あたしの表情の変化に気づいてか、立ち止まって顔を覗きこむ。



「いや……」


「ん?どうした?」



そう聞く学くんの表情はとても優しくて。
気づけば、素直に自分の気持ちを口にしてた。



「学くん、すごい人気だし……」


「うん」


「実習が終わって……大学、戻ったらやっぱり……そこでも人気だろうし」


「うん」



あたしの言葉をひとつひとつ汲み取るように相槌を打ってくれる。



「あたしのことなんて、すぐに……「それはないよ」



あたしの言葉が言い終わらないうちに、学くんの言葉が降ってくる。



「え?」



学くんの顔を見上げれば、少し怒ったような顔をしてる。



「俺は、ちとせちゃんが好きだって言ってるでしょ?」



ぎゅっと、両頬をはさまれる。



「うう、学、くん……」


「霧島になに吹き込まれたかしんないけど」


「え?燿くん?」



突然、燿くんの名前が出てきて首をかしげる。



「どうせ、騙されてるとか言われてんだろ」


「……っ、それ、は……」



燿くんにはいつも学くんのことを相談してて。
嬉しいときも、不安になったときも話を聞いてくれるのは燿くんだった。



「霧島にばっか頼ってたら、俺嫉妬しちゃうよ?」



クイッと顔を上げられて、チュッとおでこに軽いキス。



「……っ」



唇にキスをされたわけでもないのに。
学くんは、少しおでこに触れるだけであたしを悩殺しようとする危険人物だ。

だって、たったそれだけのことであたしの心臓はうるさくなる。

あぁ、この人のことが好きなんだなって実感する。



「ぷっ、ほんとすぐ顔真っ赤になるな」



今度はあたしの頬を優しく包みこむ。



「誰になんと言われても不安になんかなる必要ないよ。俺が好きなのはちとせちゃんなんだから」


「うん……」



好きな人の言葉は偉大だ。
その人に言われたらなんでも信じられる。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

灰かぶりの姉

吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。 「今日からあなたのお父さんと妹だよ」 そう言われたあの日から…。 * * * 『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。 国枝 那月×野口 航平の過去編です。

熱のない部屋で

中道舞夜
ライト文芸
合鍵預かってくれない?から始まる同期との恋。もどかしい純愛ラブストーリー

Short stories

美希みなみ
恋愛
「咲き誇る花のように恋したい」幼馴染の光輝の事がずっと好きな麻衣だったが、光輝は麻衣の妹の結衣と付き合っている。その事実に、麻衣はいつも笑顔で自分の思いを封じ込めてきたけど……? 切なくて、泣ける短編です。

幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜

葉月 まい
恋愛
近すぎて遠い存在 一緒にいるのに 言えない言葉 すれ違い、通り過ぎる二人の想いは いつか重なるのだろうか… 心に秘めた想いを いつか伝えてもいいのだろうか… 遠回りする幼馴染二人の恋の行方は? 幼い頃からいつも一緒にいた 幼馴染の朱里と瑛。 瑛は自分の辛い境遇に巻き込むまいと、 朱里を遠ざけようとする。 そうとは知らず、朱里は寂しさを抱えて… ・*:.。. ♡ 登場人物 ♡.。.:*・ 栗田 朱里(21歳)… 大学生 桐生 瑛(21歳)… 大学生 桐生ホールディングス 御曹司

10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。

嘘をつく唇に優しいキスを

松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。 桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。 だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。 麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。 そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。

友達の肩書き

菅井群青
恋愛
琢磨は友達の彼女や元カノや友達の好きな人には絶対に手を出さないと公言している。 私は……どんなに強く思っても友達だ。私はこの位置から動けない。 どうして、こんなにも好きなのに……恋愛のスタートラインに立てないの……。 「よかった、千紘が友達で本当に良かった──」 近くにいるはずなのに遠い背中を見つめることしか出来ない……。そんな二人の関係が変わる出来事が起こる。

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

吉野葉月
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

処理中です...