結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~

馬村 はくあ

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after story ~ふたりの小話~

家族になってください

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「もうすぐ、DVD流れるぞ」



結婚式も中盤になってきた頃、学くんがこそっと耳打ちをしてくる。


「うん」


「泣く準備、しとけよ」



意地悪そうに笑う。



「どんなふうになってるんだろう.......」



DVDの映像は、この前みたのはほんの一部らしく、お父さんが持っていた映像を集めて編集したんだとか。

全部みるのは、初めてでドキドキしてしまう。



「ここで、新婦である鈴野ちとせさんの亡くなられたご家族と幼い頃のちとせさんの映像を集めたVTRがございますのでご覧下さい」



司会の、うちの会社で社長秘書を勤める菅野(すがの)さんという男性が一言言ったあと、落ち着いた感じのBGMとともに、スクリーンに映像が映し出される。

最初は、この前学くんに見せてもらったお母さんに抱かれているあたしと家族。
その様子は、幸せに満ち溢れている。

そして、場面は家族4人で花見をしている場面へとうつる。
優しく、あたしのことを頑張って抱っこするお兄ちゃんの姿。



「タマがお兄ちゃんしてる.......」


「環のとこで泣くなよ」



クスクスっと笑って、あたしの涙を拭ってくれる。



「だって、こんなところあたし知らないもん」



ずっと、天涯孤独だなんて自分のことを思っていた。
こんなに幸せな家庭に生まれていたなんて、想像もつかなかったんだ。



「お母さん、産んでくれてありがとう.......」



次々と移りゆく場面は、涙で潤んで、微かに見える程度になる。

こんなの、涙なしでなんか見れるわけがない。



「ここで、新婦ちとせさんより、亡くなられたお母さんへのお手紙です」



一通り、映像が終わって、司会の人の言葉にあたしは椅子から立ち上がる。

その瞬間、クラっと一瞬視界が揺れた。



「ちとせ?」


「あ、うん。大丈夫」



あたしの様子を心配そうに見る学くんに返事をして、マイクの前へと歩こうと1歩踏み出した。

その瞬間、グラッと視界が大きく揺れて、「ちとせ!?」とそばで大好きな人が呼んでいる声を最後にあたしは意識を手放した。



✱✱✱



「.......ん」



目を開けると、白い色が見える。



「ちとせ?目、覚ましたか?」


「あたし.......?」



あたしの手を握って、優しく覗き込んでくれる大好き学くん。



「倒れたんだよ、もう大丈夫か?」


「うん.......、あっ、結婚式!」



自分がどこにいたのか、何をしていたのかを思い出してサーっと血の気がなくなる。



「大丈夫だよ」


「でも、せっかくの結婚式.......ごめんなさい」



前の晩だって、ちゃんと睡眠はとったはずだったのに。
緊張していたからだろうか。
倒れるなんて、いままで一度もなかった。



「何、言ってんだよ。ちとせの体のほうが大切にきまってるだろ」


「ありがとう。でも、来てくれた人たちに申し訳ないね.......」



せっかく、あたし達のお祝いに来てくれた人達だ。
会社関係の人もたくさんいたのに、倒れてしまうなんて申し訳ない。



「いいんだ.......そんなことより大事なことがあるんだよ」


「え.......?」



心なしか、さっきから学くんがどこか浮かれている気がする。



「いるんだって、ここに」



学くんがあたしのお腹に手を触れる。



「え?いるって.......」


「俺らの赤ちゃん」


「.......うそ」



信じられなかった。自分が親になるなんて。



「すげぇ嬉しいんだ。俺、ちとせと家族を作るのが夢だった」



「学くん.......」




学くんの嬉々とした表情に嬉しくなる一方で、不安も急に押し寄せる。

あたしは、親の愛をほとんど知らない環境で育っている。
母親の記憶はほとんどないし、実の父親に会えたのだって会えたのは最近だ。
そんなあたしに子供を育てることなんて、愛してあげることなんてできるのだろうか。

同じ施設で育った人の中にも子供ができて結婚をした人何人か知ってるけど、今度は愛せなくて、その子供が施設で育っているというのも何人も目にしている。

自分は、そうはならない。きちんと愛せると思いつつも、やっぱり不安は尽きない。



「ちとせ、嬉しくなかった?」



黙ってしまったあたしに、不安そうに眉をよせる学くん。



「そうじゃないの.......でも.......」


「ちとせは、きっと誰よりも子供を愛せるよ」


「え.......?」



あぁ、どうしてだろう。
この人は本当にあたしの欲しい言葉をきちんとくれる。



「ちとせがずっとお母さんのこと、そんなに覚えていのに、大切に思ってたの知ってるよ。復讐しようとしてた俺が言うのもなんだけど.......でも、きっとちとせは子供のことを大切にできる。だから、俺とお腹の中の子と家族になってください」


「まな、ぶくん.......」



嬉しくて、嬉しくてたまらない。
自分の存在もお母さんの存在も、お腹の子の存在も。
全て認めて貰えた気がして。



「すぐ泣くんだから、生まれて来る子に言われるぞ?ママは泣き虫だって」



フッと笑ってあたしの涙を拭う。



「今度は、孫が生まれるよって報告だな。手紙もそこで読みなよ」



ベッドの横にある手紙をあたしの手に乗せる。



「うん、お母さん、喜んでくれるかな」


「大喜びに違いないよ」


「そうだね」



お母さんが喜ぶ姿が想像の姿だけど、能力に浮かぶ。



「お母さん、あたしちゃんとお母さんになるよ」



お腹に触れて、お母さんに誓った。


-after story 完-
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