結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~

馬村 はくあ

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another story ~あの彼の小話~

信じるか信じないかはお前次第

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どうして、燿くんがあたしを初めての彼女に選んでくれたのかはわからない。

あたしが顔で見ていないからとは言っていたけど、そんな人はきっと他にもいる。

きっと、タイミングとかいろんな偶然が重なったんだろう。

やっぱり、あたしはラッキーなんだ。



「すみません、MMコーポレーションのものなんてんすが」



ドアがあいたので、近くにいたあたしが、その人に駆け寄る。

うちの会社は、小さな企業で、特に受付など置いていなく来客は直接用のある部署に来るようになっている。



「あ、はい。どの者とアポイントでしょうか?」


「部長の園田そのださんと」


「かしこまりました。こちらでお待ちください」



その人を応接ブースへと案内する。



「それでは、園田を呼んで参りますので、失礼ですがお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」


「失礼いたしました。MMコーポレーションの遊佐と申します」



立ち上がって、胸ポケットから名刺を取り出す。



「ありがとうございます。すみまさん、他の部署に行く途中で名刺を所持していなくて.......」


「いえ、お気になさらずに」


「では、園田をよんでまいります」



ペコッと遊佐さんに礼をして、応接ブースを出る。



「副社長.......」



あたしたちとそんなに変わらない年齢に見えた彼は肩書きが副社長と書いてある。
仕事がものすごくできるのか、それとも御曹司なのかどちらかだろう。



「菜津、誰か探してんのか?」


「あ、うん。部長を」


「部長なら、コピーしてたぞ」



コピー機が並んでいる場所を指さす。



「ありがとうー。助かる」


「お前、それ.......」



あたしが手に持っている名刺を指でつかむ。



「あ、そうか。燿くん前はMMコーポレーションだったもんね」


「いま、きてんのかよ」


「うん。部長とアポイントみたい。呼びに行ってくるね」



パタパタと走って部長を呼びにいく。



「部長、MMコーポレーションの遊佐さんが応接ブースで待ってます」


「おお、ありがとう。ちょっとこれ、俺のつくえに置いてくれ」


「はーい」



あたしに指示をしたあと、すぐに応接ブースへと向かっていく。



「そういえば、もうお昼だ」



部長の机に書類を置いて、時計を見ると12時を少し過ぎていた。



「ランチ.......って燿くんはどこかな」



今日は、燿くんとランチに行く約束をしていた。

ふと、スマホをみると「駐車場にいる」と燿くんからメッセージ。
忘れられてなかったことに、頬が緩むのを感じながら「お昼いってきまーす」とドアをあける。

燿くんと付き合うようになって、はや3ヶ月。
燿くんは、彼女がいたことないとは到底思えないほどあたしのことをちゃんと彼女にしてくれていた。



「はは、顔はまぁ遊佐似か?」



駐車場に降りていくと、そんな燿くんの声がきこえる。



「うん、そうだねー。でも爪はあたしじゃない?」


「いや、爪ってなぁ.......どうやってわかるんだよ」



すこしみえた燿くんの表情に進もうとした足が止まる。

あたしだって見た事のない、愛に充ちた笑顔をしていたから。



「ていうか、燿くんよくわかったね。ここにいるって」


「遊佐が会社来てたからさ、ちとせの車出来てんだろーなってさ。だから、ちょっと車探しに来てみた」


「学くんにあった?」


「会ってねーよ。俺にあったら、あとからちとせに当たられても困るしな」



2人の会話はよくきこえる。
でも、あたしとの会話の比じゃないほど、燿くんは生き生きとしてて。

分かってしまった。
1度だけ、彼が本気で好きになった人。
それが目の前にいる彼女だって。



「菜津?なにしてんだ、そんなとこで」



あたしに気づいた燿くんが、怪訝な顔をしている。



「あ、うん。邪魔しちゃ悪いなって」


「何言ってんだよ。行くぞ。じゃあ、ちとせまたな」



ちとせさんの頭を撫でてから、抱いている赤ちゃんの頬に指をあてる。



「よかったの?来ちゃって」


「なにが?」


「一緒にいてあげなくて」



自分でも何を言っているのかわからない。
でも、一度芽生えてしまった疑念は、なくなることを知らない。



「あいつは子供かよ。母親だぞ?」



プッと噴き出す燿くん。



「学くん、あの人のことがすきだったんだね」


「.......っ、なんで」



あたしの言葉に目を見開く。



「表情が全然違った」


「隠せねーもんなんだな」



そうだとも違うとも言わなかった。
でも、その言葉と照れくさそうに笑うのは何よりの肯定だった。



「でも、勘違いはすんなよ」


「.......え?」


「いまは、なんとも思ってないとは嘘になるから言わない。でも、俺に他を見なきゃならないって思わせたのも他でもないアイツなんだ」



運転しながら話す燿くんの言葉を黙って聞く。



「アイツ、親がいなくてさ.......ずっと俺が守らなきゃってどこかでおもってて。母親になった瞬間に俺の肩の荷が降りた気がしたんだ」


「.......そっか」


「だからもう、兄的な気持ちでしか今はみてない。信じるか信じないかはお前次第」


「信じるに決まってる」



燿くんの気持ちを受け入れられないなら、はじめから負け戦みたいなことはしない。

自分のほうが気持ちが強いことなんてわかってる。
ただ、少しでもあたしのことを見てくれるなら。
それでいいんだから。
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