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another story③~彼らの長男の小話~
両立させてやるよ
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「お兄ちゃん!」
もうすぐ結婚式を控えた妹が、買い物に付き合って欲しいというので、駅前に来ていた。
「光架、なんか久しぶりだなー」
昔はあんなにいつも一緒にいて、なにするのも一緒だったのに。
そんな妹が先日、大学を卒業して結婚をするから結婚式には来てと招待状を持ってきた。
もうずっと実家には帰ってないし、父親と顔を合わせるとすぐに喧嘩になってしまうので、本当なら親族の集まる場所には行きたくない。
でも、光架の結婚式にはちゃんと出てあげたい。
「で?今日は何を買いにきたんだ?」
「ほら、もうすぐお父さんとお母さんの結婚記念日でしょ?だから、なにかプレゼントしたくて」
「あー、もうそんな時期かぁ」
曲づくりに没頭してばかりいて、日付の感覚も実際にぶっている。
「そんなことだろうと思ったよ。ほら、買いに行こう」
「光架が選んでくれてよかったのに」
「やっぱり、ふたりで選びたいんだよ。お父さんとお母さんから生まれたのはあたしだけじゃないでしょ?」
「まぁ、な.......こんな出来損ないの兄ですみませんね」
俺だって、いい加減ちゃんとしたいとは思っている。
仕事も、家のことも。
でも、やっぱり父親の跡を継ぐということだけは認められない。
「大丈夫だよ、跡継ぎについてはもう諦めてるから」
「諦めるってあの親父が?」
親父にはいつまでもきっと言われるもんだと思っていた。
「提携を結んだんだよ。霧島物産と」
「.......え?」
「ほら、結婚するじゃない?」
「あぁ.......」
光架の結婚相手が霧島物産の長男と聞いたときな正直驚いた。
ライバル会社の長男となんて、親父が一番怒りそうなのに。
「航のとこは、弟がいて、その弟が継ぐから問題なく航がお父さんの跡を継げるの」
「へぇ、そりゃよかった」
知らないところで決まっていたことになんだかわからないけどポッカリ穴が空いたようになる。
俺が一番継がなくていい未来を求めていたはずなのに。
いざ、要らないと言われると、なぜだかそっちに向かいたくなってしまう。
あぁ、これはあの時と一緒だと思った。
音楽がすべてで、彼女のことも放っておいていた。
そんな俺に愛想を尽かして彼女が俺の前からいなくなったとき、初めて彼女のことを追いかけた。
彼女は、結局俺が自分のことを要らないと思っていると思ってたみたいで、戻ってきてくれたけど。
あの時と同じ虚しさを俺は今感じている。
✱✱✱
「凜菜、俺が実家戻るって言ったらどーする?」
光架との買い物が終わって、家に帰った俺は出迎えてきた彼女の凜菜にそう話してみる。
「ん?突然どうしたの?あんなに帰るの嫌がってなかった?」
「ん。なーんかね、妹と結婚するやつが跡を継ぐらしいんだけど.......すげぇ嫌だって思っちゃったんだよね」
俺がいま帰ったところで、継ぎたいって言ったって、話になんからならないだろう。
でも、小さい頃から俺が見てきた親父のこと、他の人に継いで欲しくないと思っちまったんだ。
「なにそれ、あたしの時と同じじゃん」
可笑しそうにくすくすと笑う。
「それ、俺も思った」
「でも、実家に帰ったら音楽ができなくなるんじゃないの?」
凜菜が俺の作業部屋をチラッとみる。
「両立させてやるよ。今なら、俺の音楽だって文句言われねぇだろ」
親父に反対だけされていた頃の俺とは違う。
いまは、作曲家としてちゃんと生計を立てれてる。
俺が出したデモテープを聞いてくれた事務所の社長が俺の曲をアイドルのデビュー曲に使ってくれた。
そのアイドルの曲がヒットしたおかげで、去年は作曲賞も年末にとることが出来た。
母さんが「お父さんも結果気にしてソワソワしてた」って、教えてくれたから。
だからあの頃みたいに、ただ音楽をやっているだけじゃない。
だから、両立させてやる。
「明日、実家に行こうと思うんだ」
「うん、お父さんと勝負しておいでよ。でも、もしも跡を継いだからってあたしのこと、捨てないでよ?」
「ばーか。俺がお前にどんだけ惚れてるかわかってんだろ」
凜菜のことをぐいっと引っ張って、自分の方へと引き寄せる。
「凜菜こそ、俺から逃げんなよ?」
「逃げないよ。次期社長夫人になってやんだから.......って、御曹司ってお見合い結婚とかしちゃうもの?」
急に俺から離れて、顔を青くする。
「大丈夫。うちは代々恋愛結婚らしいから」
うちの親父と母さんも恋愛結婚らしいし、じいちゃんとばあちゃんもばあちゃんの一目惚れとか聞いたし。
だから、政略結婚なんてのは、特にさせるつもりはないって親父が前に言っていた。
「そっか、よかった。政略結婚とかなったら、あたしじゃダメだよなーって考えた」
「つーか、お前以外と結婚なんて考えらんねーよ。あ、明日いっそお前も一緒に行くか?」
「え!?ほんと、考えなしだね、あんた」
呆れたように俺をみる。
「今更だろ。俺にムードもへったくれもあるかよ」
「ないねぇ」
「だろ?いいから、明日行くぞ」
俺たちにロマンチックな場所とか言葉とか。
そんなものは必要ない。
指輪も挨拶が終わってからだなんて、行き当たりばったりだけど。
コイツしかいないと思ってるんだから。
もうすぐ結婚式を控えた妹が、買い物に付き合って欲しいというので、駅前に来ていた。
「光架、なんか久しぶりだなー」
昔はあんなにいつも一緒にいて、なにするのも一緒だったのに。
そんな妹が先日、大学を卒業して結婚をするから結婚式には来てと招待状を持ってきた。
もうずっと実家には帰ってないし、父親と顔を合わせるとすぐに喧嘩になってしまうので、本当なら親族の集まる場所には行きたくない。
でも、光架の結婚式にはちゃんと出てあげたい。
「で?今日は何を買いにきたんだ?」
「ほら、もうすぐお父さんとお母さんの結婚記念日でしょ?だから、なにかプレゼントしたくて」
「あー、もうそんな時期かぁ」
曲づくりに没頭してばかりいて、日付の感覚も実際にぶっている。
「そんなことだろうと思ったよ。ほら、買いに行こう」
「光架が選んでくれてよかったのに」
「やっぱり、ふたりで選びたいんだよ。お父さんとお母さんから生まれたのはあたしだけじゃないでしょ?」
「まぁ、な.......こんな出来損ないの兄ですみませんね」
俺だって、いい加減ちゃんとしたいとは思っている。
仕事も、家のことも。
でも、やっぱり父親の跡を継ぐということだけは認められない。
「大丈夫だよ、跡継ぎについてはもう諦めてるから」
「諦めるってあの親父が?」
親父にはいつまでもきっと言われるもんだと思っていた。
「提携を結んだんだよ。霧島物産と」
「.......え?」
「ほら、結婚するじゃない?」
「あぁ.......」
光架の結婚相手が霧島物産の長男と聞いたときな正直驚いた。
ライバル会社の長男となんて、親父が一番怒りそうなのに。
「航のとこは、弟がいて、その弟が継ぐから問題なく航がお父さんの跡を継げるの」
「へぇ、そりゃよかった」
知らないところで決まっていたことになんだかわからないけどポッカリ穴が空いたようになる。
俺が一番継がなくていい未来を求めていたはずなのに。
いざ、要らないと言われると、なぜだかそっちに向かいたくなってしまう。
あぁ、これはあの時と一緒だと思った。
音楽がすべてで、彼女のことも放っておいていた。
そんな俺に愛想を尽かして彼女が俺の前からいなくなったとき、初めて彼女のことを追いかけた。
彼女は、結局俺が自分のことを要らないと思っていると思ってたみたいで、戻ってきてくれたけど。
あの時と同じ虚しさを俺は今感じている。
✱✱✱
「凜菜、俺が実家戻るって言ったらどーする?」
光架との買い物が終わって、家に帰った俺は出迎えてきた彼女の凜菜にそう話してみる。
「ん?突然どうしたの?あんなに帰るの嫌がってなかった?」
「ん。なーんかね、妹と結婚するやつが跡を継ぐらしいんだけど.......すげぇ嫌だって思っちゃったんだよね」
俺がいま帰ったところで、継ぎたいって言ったって、話になんからならないだろう。
でも、小さい頃から俺が見てきた親父のこと、他の人に継いで欲しくないと思っちまったんだ。
「なにそれ、あたしの時と同じじゃん」
可笑しそうにくすくすと笑う。
「それ、俺も思った」
「でも、実家に帰ったら音楽ができなくなるんじゃないの?」
凜菜が俺の作業部屋をチラッとみる。
「両立させてやるよ。今なら、俺の音楽だって文句言われねぇだろ」
親父に反対だけされていた頃の俺とは違う。
いまは、作曲家としてちゃんと生計を立てれてる。
俺が出したデモテープを聞いてくれた事務所の社長が俺の曲をアイドルのデビュー曲に使ってくれた。
そのアイドルの曲がヒットしたおかげで、去年は作曲賞も年末にとることが出来た。
母さんが「お父さんも結果気にしてソワソワしてた」って、教えてくれたから。
だからあの頃みたいに、ただ音楽をやっているだけじゃない。
だから、両立させてやる。
「明日、実家に行こうと思うんだ」
「うん、お父さんと勝負しておいでよ。でも、もしも跡を継いだからってあたしのこと、捨てないでよ?」
「ばーか。俺がお前にどんだけ惚れてるかわかってんだろ」
凜菜のことをぐいっと引っ張って、自分の方へと引き寄せる。
「凜菜こそ、俺から逃げんなよ?」
「逃げないよ。次期社長夫人になってやんだから.......って、御曹司ってお見合い結婚とかしちゃうもの?」
急に俺から離れて、顔を青くする。
「大丈夫。うちは代々恋愛結婚らしいから」
うちの親父と母さんも恋愛結婚らしいし、じいちゃんとばあちゃんもばあちゃんの一目惚れとか聞いたし。
だから、政略結婚なんてのは、特にさせるつもりはないって親父が前に言っていた。
「そっか、よかった。政略結婚とかなったら、あたしじゃダメだよなーって考えた」
「つーか、お前以外と結婚なんて考えらんねーよ。あ、明日いっそお前も一緒に行くか?」
「え!?ほんと、考えなしだね、あんた」
呆れたように俺をみる。
「今更だろ。俺にムードもへったくれもあるかよ」
「ないねぇ」
「だろ?いいから、明日行くぞ」
俺たちにロマンチックな場所とか言葉とか。
そんなものは必要ない。
指輪も挨拶が終わってからだなんて、行き当たりばったりだけど。
コイツしかいないと思ってるんだから。
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