28 / 28
婚前旅行編
純白の海外ウェディング
しおりを挟む
ふいに耳元に囁かれた低い声音が、じわりと胸の奥底まで浸透していく。
九十九夜が経っても、やっぱり瑛司は私の初恋の人で、愛しい旦那様だ。
「私も……愛してるよ、瑛司」
私たちは互いの体温を自らの体に刻みつけながら、快楽の余韻に浸る。
瞼を開くと、瑛司の肩越しに濃紺の海と夜空が見えた。
満天の星空から、ひとつの流れ星が落ちて弧を描く。
瑛司と、ずっと一緒にいられますように……
私は胸の裡で、そっと願いを込めた。
スカイブルーの空とターコイズブルーの海。
地球にはこの二色しか存在しないのではと思えるほど、南の島は美しい青たちで彩られている。
けれど、今日は新たな色が誕生した。
純白のウェディングドレスに身を包んだ私は、島の岬に建てられたチャペルを見上げる。こぢんまりとした白亜のチャペルは、波間に浮かぶ聖なる神殿のよう。
「さあ、瑞希。行くぞ」
瑛司と繫いだ手と、もう片方の手には白薔薇のブーケを携えている。
私はひとつ頷くと、瑛司と共にチャペルへ向かった。
シャツとスラックスに、ベストを重ねた軽装は南国らしい新郎の衣装だ。体躯の良い瑛司によく似合っている。私のドレスはマーメイドラインで、細身だけれど膝下からは華やかなフリルが広がっている。まるで本物の人魚姫になったみたい。
もちろん、私のドレスは瑛司が着せてくれた。
世界は広いけれど、新郎に結婚式のドレスを着せてもらった花嫁は私くらいじゃないかな……
嬉しいような恥ずかしいような心地でチャペルへ入場すると、島のスタッフが拍手で出迎えてくれた。列に並んだ彼らの先には、大きな窓から覗く海と空、そして礼装を纏う牧師が笑顔で立っている。
「私たち、とうとう結婚しちゃうんだね……まだ心の準備ができてないよ」
この海外ウェディングは、突然の瑛司の提案だ。
当然のように私は何も聞かされておらず、今日になって純白のドレスを見せられてから結婚式を挙げることを知ったのだった。本当にこの俺様御曹司には困ってしまう。
祭壇の前に辿り着くと、瑛司はふいに私の胴を持ち上げた。
「きゃあ⁉」
まるで赤ちゃんを高い高いするような格好に、驚いた私は咄嗟に瑛司の肩に手をつく。
ブーケの白い花びらが、ふわりと舞い散った。
「結婚式は何度も行うぞ。もちろん日本でも、招待客を招いて盛大な披露宴をしよう。その他にも各地の海外ウェディングを網羅して、九十九回は結婚式を挙げる。おまえは俺とそのたびに、愛の誓いを交わすんだ」
瑛司とは九十九夜を過ごしたけれど、結婚式も九十九回挙げなければならないようだ。
そんな強引で執着愛の激しい瑛司に付き合ってあげられるのは、私くらいかもしれない。
「じゃあ、今日が記念すべき一回目の結婚式だね」
「そうだ。生涯をかけておまえを守ると、俺は誓う」
「私も。一生、俺様な瑛司についていくと誓います」
空と海を背景に、純白の衣装を纏った私たちは笑い合った。
その笑い声は弾けて、蒼穹の空へと舞い上がっていったのだった。
九十九夜が経っても、やっぱり瑛司は私の初恋の人で、愛しい旦那様だ。
「私も……愛してるよ、瑛司」
私たちは互いの体温を自らの体に刻みつけながら、快楽の余韻に浸る。
瞼を開くと、瑛司の肩越しに濃紺の海と夜空が見えた。
満天の星空から、ひとつの流れ星が落ちて弧を描く。
瑛司と、ずっと一緒にいられますように……
私は胸の裡で、そっと願いを込めた。
スカイブルーの空とターコイズブルーの海。
地球にはこの二色しか存在しないのではと思えるほど、南の島は美しい青たちで彩られている。
けれど、今日は新たな色が誕生した。
純白のウェディングドレスに身を包んだ私は、島の岬に建てられたチャペルを見上げる。こぢんまりとした白亜のチャペルは、波間に浮かぶ聖なる神殿のよう。
「さあ、瑞希。行くぞ」
瑛司と繫いだ手と、もう片方の手には白薔薇のブーケを携えている。
私はひとつ頷くと、瑛司と共にチャペルへ向かった。
シャツとスラックスに、ベストを重ねた軽装は南国らしい新郎の衣装だ。体躯の良い瑛司によく似合っている。私のドレスはマーメイドラインで、細身だけれど膝下からは華やかなフリルが広がっている。まるで本物の人魚姫になったみたい。
もちろん、私のドレスは瑛司が着せてくれた。
世界は広いけれど、新郎に結婚式のドレスを着せてもらった花嫁は私くらいじゃないかな……
嬉しいような恥ずかしいような心地でチャペルへ入場すると、島のスタッフが拍手で出迎えてくれた。列に並んだ彼らの先には、大きな窓から覗く海と空、そして礼装を纏う牧師が笑顔で立っている。
「私たち、とうとう結婚しちゃうんだね……まだ心の準備ができてないよ」
この海外ウェディングは、突然の瑛司の提案だ。
当然のように私は何も聞かされておらず、今日になって純白のドレスを見せられてから結婚式を挙げることを知ったのだった。本当にこの俺様御曹司には困ってしまう。
祭壇の前に辿り着くと、瑛司はふいに私の胴を持ち上げた。
「きゃあ⁉」
まるで赤ちゃんを高い高いするような格好に、驚いた私は咄嗟に瑛司の肩に手をつく。
ブーケの白い花びらが、ふわりと舞い散った。
「結婚式は何度も行うぞ。もちろん日本でも、招待客を招いて盛大な披露宴をしよう。その他にも各地の海外ウェディングを網羅して、九十九回は結婚式を挙げる。おまえは俺とそのたびに、愛の誓いを交わすんだ」
瑛司とは九十九夜を過ごしたけれど、結婚式も九十九回挙げなければならないようだ。
そんな強引で執着愛の激しい瑛司に付き合ってあげられるのは、私くらいかもしれない。
「じゃあ、今日が記念すべき一回目の結婚式だね」
「そうだ。生涯をかけておまえを守ると、俺は誓う」
「私も。一生、俺様な瑛司についていくと誓います」
空と海を背景に、純白の衣装を纏った私たちは笑い合った。
その笑い声は弾けて、蒼穹の空へと舞い上がっていったのだった。
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(4件)
あなたにおすすめの小説
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
諦めて身を引いたのに、エリート外交官にお腹の子ごと溺愛で包まれました
桜井 響華
恋愛
旧題:自分から身を引いたはずなのに、見つかってしまいました!~外交官のパパは大好きなママと娘を愛し尽くす
꒰ঌシークレットベビー婚໒꒱
外交官×傷心ヒロイン
海外雑貨店のバイヤーをしている明莉は、いつものようにフィンランドに買い付けに出かける。
買い付けの直前、長年付き合っていて結婚秒読みだと思われていた、彼氏に振られてしまう。
明莉は飛行機の中でも、振られた彼氏のことばかり考えてしまっていた。
目的地の空港に着き、フラフラと歩いていると……急ぎ足の知らない誰かが明莉にぶつかってきた。
明莉はよろめいてしまい、キャリーケースにぶつかって転んでしまう。そして、手提げのバッグの中身が出てしまい、フロアに散らばる。そんな時、高身長のイケメンが「大丈夫ですか?」と声をかけてくれたのだが──
2025/02/06始まり~04/28完結
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
偽りの婚約者のはずが、極上御曹司の猛愛に囚われています
冬野まゆ
恋愛
誕生日目前に恋人に裏切られた舞菜香は、行きつけの飲み屋で顔見知りだった男性・裕弥と誘われるままに一夜を過ごしてしまう。翌朝も甘く口説かれ、動揺のあまりホテルから逃げ出した舞菜香だったが、その後、彼が仕事相手として再び舞菜香の前に現れて!? すべて忘れてなかったことにしてほしいと頼むが、彼は交換条件として縁談を断るための恋人役を提案してくる。しぶしぶ受け入れた舞菜香だったが、本当の恋人同士のように甘く接され、猛アプローチを受け……!?
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
カラダからはじめる溺愛結婚~婚約破棄されたら極上スパダリに捕まりました~
結祈みのり
恋愛
結婚間近の婚約者から、突然婚約破棄された二十八歳の美弦。略奪女には生き方を全否定されるし、会社ではあることないこと噂されるしで、女としての自尊心はボロボロ。自棄になった美弦は、酔った勢いで会ったばかりの男性と結婚の約束をしてしまう。ところが翌朝、彼が自社の御曹司・御影恭平と気がついて!? 一気に青くなる美弦だけれど、これは利害の一致による契約と説明されて結婚を了承する。しかし「俺は紙切れ上だけの結婚をするつもりはないよ」と、溺れるほどの優しさと淫らな雄の激しさで、彼は美弦の心と体を甘く満たしていき――。紳士な肉食スパダリに愛され尽くす、極甘新婚生活!
エリートドクターと再会したら、溺愛が始まりました
青花美来
恋愛
旧題:忘れたとは言わせない。〜エリートドクターと再会したら、溺愛が始まりました〜
「……三年前、一緒に寝た間柄だろ?」
三年前のあの一夜のことは、もう過去のことのはずなのに。
一夜の過ちとして、もう忘れたはずなのに。
「忘れたとは言わせねぇぞ?」
偶然再会したら、心も身体も翻弄されてしまって。
「……今度こそ、逃がすつもりも離すつもりもねぇから」
その溺愛からは、もう逃れられない。
*第16回恋愛小説大賞奨励賞受賞しました*
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている
と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている
と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
面白くて一気読み‼️
特にようやく 瑞希と気持ちが伝わり結ばれて良かった😆🎵🎵 瑞希の天然と鈍感ぶりが面白いです
コメントありがとうございます。
無事に結ばれることができました。
ご愛読ありがとうございました。
お姉さんの性格好きだなぁー(๑˃̵ᴗ˂̵)
コメントありがとうございます。
お好みに合ったようで幸いです。
ご愛読ありがとうございました。
いやはや、アンジャッシュの、コントみたいで面白い‼️けど、ここまで、鈍いのも、😖ですね。
コメントありがとうございます。
楽しんでいただけたようで幸いです。
ご愛読ありがとうございました。