聖女転生? だが断る

日村透

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ついに皇国へ

91. 町へお出かけ

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 顔の両脇に兎耳みたいな布の垂れ下がった帽子をかぶせてもらい、国境の町モニークを案内してもらえることになった。
 ジゼルだけでなくリュカもいる。
 この二人がしょっちゅう私の傍にいてくれたことを、多分マティス陛下もグレゴリーも知らないから、彼らを手配してくれたのはきっとアロイスだ。

 それから、ゴーティエ総督が護衛兵を数名つけてくれた。
 私の存在がまだきちんと公表されていないので、守りは厳重にしておかないといけないらしい。

「頭領も今その話をしているらしいんスよね。セレ様が俺らとどこへ行くにも、まず先にそこらへんを公表しといてからじゃないと、どうにもできないってんで。多分セレ様が直接へ行かなくてもいいように、あれこれ段取りしてくれてるんじゃないっスか」

 というと――皇都かな。
 アロイスやグレゴリーの立場的にも、彼らが『聖女を連れて戻って来た』なんてことになったら、変に騒ぐ人がいそう。
 大国のみやこって興味がないわけじゃないけれど、そういうトラブルになってでも観光したくはない。

 ところでリュカの口ぶりと、ジゼルもふんふんと頷いている様子からして、彼らもまたアロイスと一緒にいるあの御方のことを知っているのだ。

「リュカとジゼルが、どこまでご存じなのか……というお話、ここで伺っても支障はありませんかしら?」
「ん~、ここではちょいと遠慮してもらいたいっス」
「すみません、セレ様。あたし達、セレ様にどこまでお話ししていいかっていうの、まだ聞いてなくてわかんないんですよ」
「ああ、そうでしたわね」

 国境の手前でグレゴリーの姿を見つけた時、アロイスは「げっ」と言っていたのだった。
 国境兵に呼び止められて、あれこれ訊かれることは想像できていても、グレゴリーや陛下が出てくるのは完全に予想外だった。
 これについて、みんなと細かい打ち合わせなんてできなかっただろう。

 それにしても、リュカやジゼルの言葉遣いやふるまいは平民にしか見えないけれど、実は違うのだろうか?

 彼らに限らず、ほかの隊商の人達もそうだ。
 なんとなくそれっぽいというか、昔は貴族でもおかしくないなという雰囲気を持つのがヒューゴ。
 それから、元兵士という経歴でもおかしくなさそうなのが、アロイスの右腕のエタン。
 私が内心でいろんな人の背景を想像しそうになると、すぐに察したリュカが「違いますよ」と言った。

「俺らは平民っすからね。お偉い人と商売することもあるんで、ちゃんと行儀のなってる奴がそこそこ多いだけで」

 そうだった。
 ロラン王国でも、貴族の顧客のいる商人はとてもきちんとしていたっけ。
 口調やふるまいをしっかり叩きこんでおかないと、貴族相手の仕事なんてできない。
 そうでないと、門前払いにされるだけならまだしも、うっかり機嫌を損ねただけで「無礼者!」って牢屋に入れられてしまう世界だから。
 



 護衛兵の隊長さんに丁寧な挨拶をしてもらい、私達は町へ繰り出すことになった。
 私の容姿は明らかに有名な聖女のもので、そうでなかったとしても生まれつきの白髪はくはつはかなり珍しい。
 でも総督邸の召使いさん達もそうだったけれど、護衛兵の人達はすごくきちんとしていて、私に物珍しそうな視線を送ってくることがなかった。

 というのもこの町へ着いた直後、道ゆく人々にすごくジロジロ見られていたから、余計にそれを感じるのよね。
 きっと内心では好奇心たっぷりなんだろうけれど、それを出さないところにすごく好感を持てた。

 いちいちロラン王国と比較するのもどうかと思うけれど、こういうことがあるたびに比較したくなるぐらい、あの国って酷かったなぁと思う。
 だって私の侍女を筆頭として、周りに仕えていた人々って……召喚聖女の『リリ』が現れた途端、「こっちに仕えて失敗した」っていうのを顔にも態度にも出していたんだから。

「馬車じゃなく徒歩でいいんスよね?」
「もちろんですわ。自分の足で歩いてみたいですもの」
「了解っス。じゃあまずどこへ案内しますかね~」
「この町にしか売ってない珍しい店のがいいだろ。傘屋とか」

 えっ、傘屋?
 思いがけないジゼルの提案に、目が丸くなった。


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