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『元』聖女、出発する
100. 王の頭が……!? -side王宮の人々
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予約投稿の設定を失敗していました(汗)
なのでいつもと違う時間ですが投稿いたします~!
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国王陛下の髪が、恐ろしい呪いの色に染まっている。
ロラン王国の王宮内でにわかに広まった噂は、やがて市井にまで勢いよく伝わっていった。
国王の髪はもともと、年齢のために色あせた灰色まじりの金髪だった。
それを肩より少し長い程度に伸ばしており、口元と顎には豊かなヒゲがある。
その髪が、ある日突然、奇妙な色に変わった。
『それはもう、さながら毒キノコのような……何色もの塗料を糸の先につけ、じわじわと染みこませてゆくような……ああぁ、恐ろしい……!』
そう。
その瞬間、国王は人払いをしていなかった。
室内には何人もの使用人がおり、ほとんどの者がその異変を目撃していたのである。
最初に誰かが気付き、目の錯覚かと同僚に肘鉄をして、なんだなんだと振り返った同僚が……と、結果的に大勢の者がそれを見ることになった。
頭髪の色が、有り得ない速さで変わってゆく。
根元からではなく、まさに毛先を染料に浸し、じわじわと吸い上げてゆくように異なる色へ染まっていった。
ところで、とある国でとある聖女がくふくふ笑いながら、「女神様お願いしまぁす!」なんて祈った際のことだが。
彼女は『ド派手な虹色』とイメージしつつ、さまざまな色を当てはめていたものの、『虹色』とされるものが具体的に何色であるかは知らなかった。
前世においては赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の七色だったのだが、国によって解釈が異なり、青と藍を区別せず同じブルーとして六色としていた国もある。
ただ、前世の感覚から彼女の中では、『虹色』は七色だった。
そこで、どうなったか。
『ピンクと紫とー、あと黄色は外せないわー。ほかには何色がいいかしらー?』
そう。これである。
青と同一視されやすい藍色の代わりに、ピンク色が採用された。
彼女の指定通り、ほんの少しの光源さえあれば闇の中でもぼんやり浮かび上がる、明るい蛍光色のピンク、レッド、オレンジ、イエロー、グリーン、ブルー、パープルの七色が……。
しかも国王の髪はストレートではなく、ウェーブがかかっている髪質だったため、その蛍光色はうねりながらジワジワと浸透していった。
その様子をとある侍従は「色鮮やかな毒蛇が這うようだった」と、身震いとともに語っている。
それだけではない。
後頭部には、大きな蛍光ピンクのハートマークがでかでかと浮かび上がった。
とある聖女のイメージでは、「わんちゃんの毛並みが自然にハートマークになっている感じ」であり、誰が見てもハートとわかるほどの大きさになったのだ。
目を凝らさなければわからないほど曖昧でささやかなものではなく、そこそこ遠目でも明らかなハート型。
――ところがこの世界、ラブを意味するハートマークは存在しなかった。
『何なのだあれは!?』
『何かを意味する記号か!?』
『もしや、邪教の象徴なのでは……!?』
『いやもしかすると、女神が天罰を……!?』
国王が大神殿とともに、聖女を相手に何をしていたのか、もはや知らぬ者はいないほどに広まりきっている。
おまけに国王は「いっそ丸刈りにしてしまえ!」とすら命じたものの、ハサミも刃物も通らない。
どうにもこうにも切れない、剃れない。
髪染めを試してみても、まったく別の色に染まらなかった
ヘアカラーの技術は進んでいないといっても、完全に色が変わらないのは異常だった。
当然ながら国王は、己の頭髪の異常について、目撃者となった使用人の全員に口外をかたく禁じていた。
――それでも漏れた。
己の不安から口を滑らせた者が、ひとりや二人ではなかったのだ。
加えて、かつてここで暮らしたセレスティーヌという聖女が常々感じていたように、この王宮の使用人は質が良いとは言えない。
貴族出身ばかりで自尊心はそこそこ高く、王宮勤めであることを己のステータスとしている一方、『仕えている』という意識は低い。
単純に、臣下としても使用人としても教育が足りていないのだ。
国王は鏡で己の顔を見るたび、眉毛やヒゲに触れては心拍数を上げていた。
今はまだ本来の色のままだが、いつかこれらにも、邪悪な色の支配が始まるかもしれない。
「おのれ、大神官の報告はまだか!?」
「はっ……」
「役立たずめ、早うなんとかせよと申しておるのに!!」
セレスティーヌの行方に関し、かつて己の息子が方々を急かしまくっていたのを叱責しておきながら、国王は自分も同じことをしていた。
2,016
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