聖女転生? だが断る

日村透

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未知の瘴気

125. 悲劇を回避できた条件

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 読みに来てくださってありがとうございます!
 再開します。

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 隊商の皆と護衛騎士達が手分けをし、どんどん食糧を運び込んでいく。
 グスタフ大神官はアロイスに憎まれ口を叩いて元気そうに見せていたけれど、全体的にやつれている雰囲気は隠し切れていない。

 不幸中の幸いだったのは、神官の一人が水の浄化魔法の使い手だったことだ。
 神殿内には至るところに水路があり、その水を容器に移し、浄化して飲み水にできていたらしい。
 困っていたのは、やはり食べ物。
 この神殿に避難していたのはグスタフ大神官と、同行していた神官の男性二名に加え、近隣から集まったおよそ五十名の村人達がいた。

「五十名もいらしたの……」
「五十名で済んだ、ちゅうところですな。このあたりの村人は瘴気が出始めた頃から、遠い村にどんどん避難を進めとったようです。様子を見るために残ったのが五十名、そのうち数人がうちの神殿に助けを求めに来たっつう流れでして」

 グスタフ大神官によれば、不運ではあったものの、さまざまな幸運が重なったおかげで全員が無事だったということのようだ。
 食べ物に関しても、ちょうど収穫期を迎えた果物がたくさんあり、釣った川魚や狩った獲物を備蓄用の保存食に加工したばかりだった。
 神殿は瘴気の影響を受けないと皆わかっていたので、それら保存食は申し訳ないと思いつつも、神殿の適当なところに積んで保管するのがいつものことだったらしい。

「だからこれほど長期間、食い物がったんだな」

 アロイスが感心したように溜め息をついた。
 本当に、この地の人々は不運ではあったものの、ぎりぎりでラッキーを何度も拾っている。
 安全な水があるというのもそうだ。

「ここの水路の水は、瘴気の影響がないのですわね」
「そうなのですよ。なので、汚れを取る浄化魔法だけで飲めるようになるのです。ほんにこの魔法には助かっとりますわ」

 グスタフ大神官のねぎらいに、水の浄化を担う神官が控え目に頭を下げた。
 控え目だけれど、褒められてどことなく嬉しそうだ。

 ――この方も少々、やつれておいでだわ……本当にぎりぎりでしたのね。

 神官達も村の人々も、私達を充血した目で迎えてくれた。中には号泣して私を拝み出す人まで。
 いえその……今日ばかりは無理には言いませんけれど。
 でも今後はなるべく、拝まないでください。

「グスタフ大神官。あの庭にあるのは?」

 アロイスが指差したのは中庭だ。
 ここの中庭は土の地面になっていて、そこには何本かの植木がある。

「あれは果樹だ。ちょうどあれに実がたっぷり生っとってな。大事に食べて、最後の一個をもいだのが数日前だ。おまえさんの鳥が来たあとだったから、皆にはそこまで悲愴感がなかった。ほんに、感謝しとるぞ」

 もし逆だったら、とグスタフ大神官は小声で添えた。
 アロイスは「いや」と適当に答えたけれど、小声の部分はしっかり聞こえていたはずだ。

 ――もし逆であれば。ミュリの連絡が来る前に、最後の一個をもぐことになっていたら……

 奪い合い、という言葉が頭をよぎり、ぞっとした。
 本当に、間に合ってよかった。




 まずは全員に食べ物を与えなければいけない。
 二日ほど前に食べ物が尽き、それ以来ここの人々は水だけで生き延びていたらしい。
 急に栄養を身体に入れたらよくないと、エディットの指示で食事の準備が行われ、穀物を煮込んだ上澄みのようなスープがまずは配られた。

 近隣の村人が避難していると聞いていたから、身体の弱いお子さんやお年寄りがいるかもと危惧していたけれど、ここにいるのは二十代から五十代手前くらいの働き盛りな人ばかりだった。
 何人かは女性もいるけれど、健康に問題はない。

「子供や年寄りはすぐに弱るから、先に避難させたそうだ」
「合点がいきましたわ」

 比較的身体が強く、すぐに倒れない人々だけが残っていた。
 これも、不幸中の幸いのひとつということだろう。


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