久遠の海へ ー最期の戦線ー

koto

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赤く染まる北の大地

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 旭川練兵場には日本陸軍第7師団の司令部が置かれていた。ポツダム宣言受託後、外地は戦場と化していたが、内地では着々と降伏準備が進められ、武装や機密文書の廃棄をしていた。そのため、練兵場内には使用不可能となった武器がまとめられていた。

「ソ連軍の上陸など聞いていないぞ!」
 練兵場内の会議室では司令部人員が一同に集まっていた。日本が降伏文章に調印した後となった今では、彼らはもはや軍人ではない。当然階級関係もないのだが、誰もがこれまでのしきたりに従っていた。
 第7師団長、つまりは司令官の個白中将が報告を聞き、声を荒げた。
「政府からはそのまま待機としか返答がありません!」
「報告では、ソ連軍の上陸は道内では留萌と稚内のみで、どちらも戦車などを揚陸している最中だそうです」
 それに対し複数の士官が発言し、司令部内の誰もが驚きの渦中に立つことを改めて理解する。
 実はこの時、日本占領軍内では2つの派閥により武力を交えない紛争が生じていた。この派閥とは、一刻も早く北海道へ連合国軍を派遣すべきという英国政府及び米軍派と、北海道は近くに軍事拠点があるソ連軍が担当すべきという米ソ両政府派の事である。

 千島列島や択捉島などの島嶼部では輸送船のほか駆逐艦から掃海艇、駆逐艦などに捕虜となった日本軍人を載せられるだけ乗せ、ソ連本土へ輸送しているそうだ。一部では潜水艦の甲板に乗せているとまで噂されている。
「とにかく、現状我々が出来ることは限られている。機密文書の焼却は何があっても完了しなければならない。武器に関しても、連合に付けいれられる隙を作らないよう完璧に廃棄するように」
 司令官からの命令を聞き、それでも多くの士官は不安をぬぐえない。政府や大本営と連絡がつかないこともだが、戦車部隊など占領には過剰な戦力を輸送している事の方が大きな心配事だった。
 翌日、その心配は現実のものとなる。

「なんだと!?間違いないのか!?」
 個白は衝撃のあまり現実と信じることができなかった。突如としてソ連軍が武力侵攻を始めたのだ。
 後にわかる事となるが、これは留萌-釧路ライン確保を目的としたものだった。札幌からの攻撃を防ぐため、まず初めに留萌―旭川のラインを確保することにしたのだ。
「こちらにも敵戦車が向かっております!既に現地との連絡は取れません」
「そんなことがあってたまるか!戦争は終わったのではなかったのか!!」
 
 一方のペトロヴィッチ大佐もまた、個白と同じことを思っていた。
「いきなり発砲するバカがどこにいるか!!」
 留萌近くの住民を撃ち殺しながら前進したことをペトロヴィッチは怒っていた。それこそ盗賊と何ら違いないほどの行為を行っており、見渡す限りの住居が火を起こしている現状はさすがに目をつむる事は出来ないほどだ。
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