久遠の海へ 再び陽が昇るとき

koto

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プロローグ マッカーサーの憂鬱

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 GHQに求められたことは非武装化のみではない。日本国の急速な民主化もまたその一つだ。だからこそ戦時中に禁止されていた労働運動を許容し、さらには拘束されていた共産党員などの活動家も解放した。彼らは戦後すぐに活発に活動し、日本の民主化に大きく貢献した。
 組合参加者は爆発的な右肩上がりを記録し、ホワイトハウスを始め多くの戦勝国は民主化が成功していると認識し満足していた。実際には運動に興味が無く、日々飢えと戦わなければならない現状を脱するために参加しているに過ぎないのに。
 日本における労働運動の主催者は、彼ら旧政府に捕えられていた者達のほか、朝鮮半島から不法入国した者、さらには北北海道からの避難民に紛れた中ソの工作員など、多岐にわたっていた。今もマッカーサーは眼下に労働者たちのデモ行進を見ていた。
 時の日本政府から警察では対応不能と報告を受けたが、それが民主主義だと祖国の政府は運動を許容し続けた。それは、労働運動が暴力闘争となり、日本の警察官に死者が出た後も変わらなかった。

 朝鮮半島からの不法入国は、戦後の早い時期から行われていた。右派、左派の両勢力がアメリカ軍政下の南朝鮮で大規模に争い、それからの避難民が日本に渡ってきたのだ。この時、日本の非武装化が進められ、日本海は文字通り無法地帯だった。それこそ海賊が出現していたほどだ。
 問題はその密入国者が感染症患者だったことだ。これにより九州や沖縄にコレラが爆発的に蔓延し、食糧難により衰弱していた日本人を苦しめた。彼らの多くは自己やその家族の為に活動家となった。
 不法入国の第二派は、済州島で生じた虐殺に起因する。これもまた沿岸警備力のない時期に行われたもので、大規模な避難民が堂々と日本本土へ渡ってきた。さすがのGHQも焦ったのか日本政府に沿岸警備隊の設置を命じたが、自国の復興に手一杯な各国は事情を知ろうともせず、ただ再軍備を恐れ拒否に回った。結局、妥協案として非武装の小型艇、それも速力15ノットの鈍足な船舶を多数有する、力ない組織が出来上がっただけだ。この組織は不法入国への対策に何一つ役に立たなかった。むしろ負債の面が大きい。
 この組織の設置を理由に、国内では大規模なデモ行進やストライキが起き、全国的に混乱が生じたのは言うまでもない。

 1948年、米軍政下にある南朝鮮が右派勢力を主体に大韓民国を建国し、その1か月後にソ連が軍政を引く北朝鮮が左派勢力を中心に朝鮮民主主義人民共和国を建国した。これを原因に、政権とは相いれない勢力を両国が粛清し、朝鮮半島は混乱の渦中に落ちたのだ。そして、両国からの避難民が一斉に日本へ流れ、九州を舞台に彼らが争い始めたことは、日本とGHQに大きな問題を与えたのだった。
 そして1949年、ついにソ連が核兵器を完成させた。これにより、アメリカは核兵器による優位的立場を失うこととなる。さらに米英が支持していた中華民国が国共内戦に敗れ、日本統治領だった台湾へ避難した。中国は完全にソ連率いる共産陣営に就くこととなったのだ。
 朝鮮半島の混乱、中華共産党の台頭、核優位の損失。アメリカが日本の占領政策の間違いを認識したのは、終戦から4年も経過した後の事であった。その時間が戻る事はない。
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