久遠の海へ 再び陽が昇るとき

koto

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プロローグ マッカーサーの憂鬱

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「それで、朝鮮半島にどれだけの増援を送れるのだ?」
 先の大戦へ思いを馳せる、静かな時間はもうない。朝鮮半島で“内戦”が生じ、軍務に付かなければならなくなったからだ。
中ソが支援する朝鮮が韓国へ奇襲し、圧倒していると報告を受けたのはつい先ほどの事だ。その速さはドイツが第二次大戦中に取った電撃戦そのものだそうだ。
 独ソ戦の経験からより一層強化されたソ連製の強力な戦車と、国共内戦に参加し戦い抜いたパイロットが率いる大規模な航空戦力。これを相手にするのは韓国の軽武装な国境警備隊と、あくまで治安維持を目的に駐留していた米軍の歩兵師団のみだ。

 戦車も対戦車兵器、空軍戦力でさえ持ち合わせていなかった米韓は有効な反撃を与えられず、朝鮮軍は文字通り、戦線を粉砕しながら進行を続けていた。
 さらに、マッカーサーが受けた報告は半島の事のみではなかった。むしろ、そちらの方が問題だった。
「日本国内で大規模な運動が生じており、いま日本から兵を出すとそれこそ革命が生じます。それに、北北海道ではソ連軍が大規模演習を開始しており、日ソが開戦に至った場合、最悪日本を失うこともあります。今増援が必要なのは朝鮮半島ではなく、日本本土なのです!」
 マッカーサーはあまりにも後手後手に回らざるを得ない現状に嘆いた。神に見放されたのはいつからだろうか。少なくとも、その始まりが日米開戦にあることはまちがいない。

 ――今や、アメリカ人が日本人の為に極東で散らなければならないのか。なんとばかばかしい。
 そうであっても、連合国軍最高司令官という自己の立場から、この戦争を無視することは許されない。
 とにもかくにも、最優先事項は日本の共産化を防ぐことだ。その為には、まず初めに国内で行われている、“とても民主主義的な労働運動”を中止させなければならなかった。
「日本の共産化は何としても防がなければならない。早急に組合を解散させ、日本政府にも共産主義者の追放を命じよ。連合各国に派兵を指示し、米本土からも増援を日本に送る様に。太平洋艦隊は総力を挙げ朝鮮半島と日本の航路を維持せよ」

 マッカーサーの命に従い、国内に展開する占領軍が日本の警察組織を差し置いて行動を開始する。この行動は多くの日本国民に“アメリカ軍から弾圧を受けた”と捉えられ、反米感情が芽生えたことは当然だった。
特に、“民主主義的な行為を禁止された”という事実はとても大きい。“活動に参加しなければ再び戦時中の統制下に置かれる”という心配を、己が心に刻まれたからだ。
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