久遠の海へ 再び陽が昇るとき

koto

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民主主義の崩壊

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 戦争が終わった後も身なりを整えることを忘れず、今も髭を生やさず、髪の毛は丸刈りに近い。鍛えられた肉体は今もなお磨き続けられており、だからこそ絶望した人々は彼を飢えの知らない金持ちと認識してしまう。日々そういう輩から挑発を受けることも何度もあった。
 だからこそ、行進に参加する一部がこちらに近づいてきても、「またか」と面倒臭そうに対応しようとしたところで、耳をふさぐほどの罵声と悲鳴、そして銃声がデモ隊の前方で鳴り響いた。

「なんだあれは!?」
 平野はとっさに姿勢を低くし、音の正体を探ろうと見渡す。
銃声がしたらまず地に伏せろと、軍隊時代に嫌ほど味わった経験がここで活かされた。

 視界に映ったのは、米軍兵士が運動家たちを拘束し、ジープの隊列に連行されていく姿だ。反抗している参加者も同様に拘束され、一部は血を流す者もいた。
 先ほどの銃声は、そのうちの一人が威嚇の為に放ったのだろうと予測できたが、小銃で武装した兵士がいきなり行進を取りやめさせるのは理解できなかった。
「あいつら何をしている。なぜ軍隊が……」
 平野には米軍の行動を理解できなかった。というよりも不可思議だった。
 戦後に共産党員を収容所から解放し、デモもストライキも許可したのは占領軍に他ならない。許可したと言うよりも、むしろ積極的に活動させたとさえいる。
 その米軍が、なぜ今になって武力対応に出たのか。全く理解不能だった。
「何をする!!俺は党員だぞ!!」
 特に、米軍兵士数人に囲まれ捕えられた代表者らしき者は、自分のことを“党員”だと叫び続けていた。
 それを見た参加者が彼を助けようと一斉に飛び掛かり、阻止しようと米軍側も腕を振り下ろしていた。初めの銃声は確かに意を突いた行動だったが、今となっては群衆の声の方が大きい。
 遂にはデモ参加者と米占領軍の両組織が、殴り合いの乱闘を行うに至っていた。戦争は終わったが、戦場は今も目の前に存在していたのだ。
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