久遠の海へ 再び陽が昇るとき

koto

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民主主義の崩壊

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「戦場へ向かうときは多くの民衆に手を振って見送られたのに、帰ってくれば石を投げられ煙たがられる。家は焼夷弾で燃やされ、食糧不足で食べる物もない。そんな時に党に入れば飯を食わせてやると言われたら、入るしかないだろ。」
 日は遡る。これは、戦後間もない時期に共産党員となった元日本軍人が口にしたことだ。

 GHQも極東委員会も、こういう話をした者の存在を知っていた。だからと言って、旧日本軍人に何かしらの援助をしたことはなかった。
 特に食糧不足への対策は全く足りておらず、更にアジア各国に散らばり展開した日本軍人が本土へ復員するのだから、より一層食料需要が高まるのみだ。
 食料のみではない。就業先も圧倒的に不足していた。
 無差別に爆撃され、家族も家も財産も失った兵士たちは、帰国して除隊されてどうすればよいのか。一部の限られた者達はまだ稼働できた工場で働くことができたが、それ以外の多数は職に就けない。
 そもそも、受け皿たる企業はGHQの非工業化の方針の下、資産が差し押さえられているのだ。重工業はほとんどがそういう状況で、軽工業や農業に関しても戦災から立ちいかなくなったところが多く存在した。

「ジャップが死ぬことに何か問題あるのか?」
 これが戦勝国の共通認識だった。飢えで多くの日本人が死ぬこととなるだろうが、何も滅びるわけではない。他のアジア各国のように、軽工業や農業を経済の主体にし、適正に管理できる人数にまで減少すればよいではないか。
そういう考えだった。
 民主化に関しても、危険思想を有する戦前・戦時中の公職に就いていた者達は追放され、二度と復帰できないよう厳重に管理され復興が進められる。独裁者に押さえつけられ、収容されていた共産党員や、平和を愛する戦後の協力者たちが達成してくれるだろう。
 戦勝国は自国の復興が最優先事項であり、極東の敗戦国など今はどうでもいいのだ。そして、戦勝国とはすなわち資本主義者たちであり、共産主義者たちだった。そう誰もが思っていた。
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