白い部屋で愛を囁いて

10

　三日後雪路は発情期に入った。
　発情期中のαは性欲が増し、精液の量も通常の三倍となる。
　薬である程度はコントロールできるが、百パーセントではない為、後腐れがなく決して孕まないβの男とだけ寝ていた。
　雪路は何時ものように馴染みのβを相手に欲望を捌かせていた。
　葵を重ね何度も貫く。

　――俺を選べば良かったのに。

　自然の摂理としてαとΩはそうなるように作られているのだから。
　だというのに、葵はβの竜を選んだ。
　番が居ないΩは発情期に苦しみ続けると知っていてもだ。
　それが全てだと、熱に浮かされた頭で無理矢理納得し、雪路は腰を振り続けた。






　再び葵の家から見合いの打診があった。
　どうすれば良いかを本人に訊こうと、日曜に会いに行く旨をメールをしたが返事はなかった。
　日曜日当日に携帯電話に掛けるが、電源が入っていないとアナウンスが流れた為、直接竜の店に向かえば、丁度二人が車で出るところだった。
　すぐさまタクシーを捕まえ二人を追いかければ、辿り着いたのは産婦人科だった。
　そこで帰れば良かったのだろう。
　だが、妊娠が間違いであったと聞きたかった雪路は、病院から出てくる二人を更に追った。

　そして神社にて悲劇が起こった。