初恋は溺愛で。〈一夜だけのはずが、遊び人を卒業して平凡な私と恋をするそうです〉

濘-NEI-

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 かくいう私も、もう三年も彼氏のいない生活を送っているので、そういうセンサーは錆び付いていなくもないけれど、相手はイケメンとは云え大人だ。
 自分の勘違いだろうなと思いつつも、心臓がドキドキしている割に、無防備で距離感がバグってしまっているかも知れない。
 そんなことを考えながら餃子を頬張っていると、彼が不意に私の顔を覗き込んできた。
「あのさ」
「はい」
「良かったら、どこかで飲み直さない?」
「飲み直し、ですか」
「そう。君はお酒強いみたいだし。あ、でも今日は平日だから二軒目は無理か」
 苦笑した彼に、よく考えたらその場で断れば良かったんだと思う。
 だけど話してみると気さくで楽しくて、もう少しこの楽しい時間を味わいたい感覚が芽生えてしまっていた。
「大丈夫ですよ。私は休みが不規則なので、明日は休みですし」
「本当に」
「はい。良いですよ。お兄さんが大丈夫なら」
「俺から誘ったんだから、大丈夫に決まってるでしょ」
「そうでしたね」
 緊張を誤魔化すみたいに愛想笑いすると、残ったビールを飲み干してからお勘定を済ませる。
 椅子から立ち上がった彼はすらりと背が高く、一八〇センチ以上あるんじゃないだろうか。一六二センチの私でも、彼の顔は見上げないと様子が分からない。
 彼は奢ってくれると言ったけど、私もそれなりにしっかり食べたので、ここはお願いしてきちんと割り勘で精算させてもらった。
「ごちそうさまでした」
「美味しかったです」
 女将さんにまた来ますと伝えてから、そういえばもうこの町を離れるんだと思い出して、また来ることはないのかも知れないと一気に現実に引き戻される。
「どうかしたの」
「いえ、なんでもないです。行きましょうか」
「そう? 話なら聞くよ」
「ありがとうございます」
 曖昧に笑って話を濁すと、さすがに大人だからか、彼は根掘り葉掘り聞いては来なかった。
 二十一時を過ぎて、ようやく夜風が涼しくなって来た裏通りを歩くと、駅の反対側まで散歩がてら歩いて、彼が道すがらネットで調べてくれたバーに移動する。
「あれ、この辺りのはずなんだけどな」
 辿り着いたのは五階建ての古いマンションで、どう見てもバーがあるようには見えない景観に、二人して首を傾げる。
「道を一本間違ったとかですかね」
「どうだろう。電話して聞いてみようか」
 彼がスマホで電話をかけると、やっぱりこのマンションで間違いないらしく、ここは古いマンションを改装して色んなお店が入った施設になっているらしかった。
「五階の501号室だって。隠れ家っぽくて面白いね」
「本当ですね。こんなところがあるなんて、知りませんでした」
 マンションのエントランスを抜けると、エレベーターに乗り込んで四角いボタンを押して五階に上がる。
 ブゥンというモーターの音と、若干の浮遊感があってゆっくりと上昇していくエレベーターの中は、奇妙な沈黙で少々息苦しい。
 五階に到着すると、確かにそれぞれのドアには看板らしきプレートが掛けられていて、バーだけでなく、他にもカフェなんかの色んな種類のお店があるようだ。
「なんか、ワクワクするね」
「そうですね」
 チャイムも鳴らさずに扉を開けるのはドキドキしたけれど、角部屋の501号室に入ると、内装はコンクリート打ちっぱなしで、狭い廊下を抜けると一気に視界が広がった。
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