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気を引き締めてトレーニングとストレッチを済ませると、二度目のシャワーを浴びてすぐにベッドに潜り込む。
あくびをしながらテレビ流し見して、オフタイマーをセットすると、短い間とはいえ住み慣れた自室に安堵したのか、そのままウトウトしてだんだん意識が薄れていく。
だから気が付かなかった。
玄関を開けて誰かが入って来たことも、その人が足音を消して二階に上がって来たことにも。
「香澄、眠いの?」
「ん……」
ベッドが軋んでゆっくりと体が沈むと、懐かしいような匂いに包まれて、まるで樹貴さんに抱かれてるみたいで安心して夢の中に没入していく。
「香澄ちゃん、寝ちゃうの」
「ん、樹貴さん……」
何気なく名前を呼ぶと、僅かに笑うような気配を感じて、私の髪を掻き上げる指の温かさが妙にリアルで、私は重たい瞼をなんとか開けようとする。
「樹貴さん?」
「うん。武田さんが連絡くれたんだ」
「武田さんが……そうですか。……え、樹貴さん? どうしてこに」
完全に目が覚めて眉を顰めると、隣で肘をつく樹貴さんの唇がおでこに触れる。
「しばらく家を空けてたみたいだけど、どこに居たの」
「福岡に。祖母に会いに行ってたんです。ていうか、なんでここに居るんですか」
「香澄ちゃんに早く会いたくて」
そう言って私を抱き締めると、樹貴さんのつけてるフレグランスがふわりと香って、彼の腕の中にいることをようやく実感する。
「お帰りなさい」
「君こそおかえり」
「お茶でも淹れましょうか」
「ううん。今はまだ、こうして香澄ちゃんと一緒に居たい」
「そう、ですか」
にっこり笑う樹貴さんと目が合うと、あれほど悩んだのに、その時間がバカらしく感じるくらい、愛しさが募って思いっきり抱き締め返して首筋に顔を埋める。
「まずはごめんね」
「ん?」
「遥香のこと、言い出せなくてごめん」
私以外の女性の名前が出て、一瞬にして体が強張る。
樹貴さんもそれを感じ取ったのか、私の頭を優しく撫でると、複雑な家庭事情を打ち明けてくれた。
「腹違いの妹だから、親父がしたことは受け入れられないけど、遥香のことは妹として気掛かりでね」
「そうだったんですね」
「友梨はあんな性格だから、不倫相手の娘だって分かってからは、なかなか遥香のことを受け入れられなかったんだよね。まあ、無理もない。いまだに親父とも不仲だしね」
「そうですか」
「ごめんね。親父が外に子ども作ったなんて身内の恥だし、香澄ちゃんとはずっと一緒に居たいから、俺の親に先入観を持ってもらいたくなくて、なかなか言い出せなかった」
「それは仕方ないと思います」
遥香さんが自殺未遂を図ってから、樹貴さんは異母兄として、他に頼る人のない遥香さんの面倒を見ると決めたらしい。
それがたまたま私の引っ越しの時期と重なって、仕事が忙しくなったこともあって、打ち明けるのに時間が掛かってしまったと樹貴さんが何度も謝る。
話を聞いて驚きはしたけど、そんな事情があったのなら、簡単に打ち明けられなかった樹貴さんの気持ちを理解出来なくはない。
だけど、本当にこれから先ずっと一緒に居たいと思ってくれてるなら、きちんと話して欲しかった。
「事情は分かりましたけど、私は遥香さんを恥ずかしい存在だなんて思いませんし、お兄さんしか頼れないのなら、それは仕方ないと思います」
「香澄ちゃん」
「だけど、ずっと一緒に居たいと思ってくれてるなら、もっと信用してください。隠し事をされているのが分かってるのに、何も聞けない状況は本当に辛いです」
「ごめんね。嫌な思いをさせてしまって」
「違います。嫌な思いをしたから言ってるんじゃないんです。お互いに信用や信頼しないと、長くは一緒に居られないって話です」
「そうだね。君の信頼を裏切ってごめん」
「分かってくれたのなら良いです」
あくびをしながらテレビ流し見して、オフタイマーをセットすると、短い間とはいえ住み慣れた自室に安堵したのか、そのままウトウトしてだんだん意識が薄れていく。
だから気が付かなかった。
玄関を開けて誰かが入って来たことも、その人が足音を消して二階に上がって来たことにも。
「香澄、眠いの?」
「ん……」
ベッドが軋んでゆっくりと体が沈むと、懐かしいような匂いに包まれて、まるで樹貴さんに抱かれてるみたいで安心して夢の中に没入していく。
「香澄ちゃん、寝ちゃうの」
「ん、樹貴さん……」
何気なく名前を呼ぶと、僅かに笑うような気配を感じて、私の髪を掻き上げる指の温かさが妙にリアルで、私は重たい瞼をなんとか開けようとする。
「樹貴さん?」
「うん。武田さんが連絡くれたんだ」
「武田さんが……そうですか。……え、樹貴さん? どうしてこに」
完全に目が覚めて眉を顰めると、隣で肘をつく樹貴さんの唇がおでこに触れる。
「しばらく家を空けてたみたいだけど、どこに居たの」
「福岡に。祖母に会いに行ってたんです。ていうか、なんでここに居るんですか」
「香澄ちゃんに早く会いたくて」
そう言って私を抱き締めると、樹貴さんのつけてるフレグランスがふわりと香って、彼の腕の中にいることをようやく実感する。
「お帰りなさい」
「君こそおかえり」
「お茶でも淹れましょうか」
「ううん。今はまだ、こうして香澄ちゃんと一緒に居たい」
「そう、ですか」
にっこり笑う樹貴さんと目が合うと、あれほど悩んだのに、その時間がバカらしく感じるくらい、愛しさが募って思いっきり抱き締め返して首筋に顔を埋める。
「まずはごめんね」
「ん?」
「遥香のこと、言い出せなくてごめん」
私以外の女性の名前が出て、一瞬にして体が強張る。
樹貴さんもそれを感じ取ったのか、私の頭を優しく撫でると、複雑な家庭事情を打ち明けてくれた。
「腹違いの妹だから、親父がしたことは受け入れられないけど、遥香のことは妹として気掛かりでね」
「そうだったんですね」
「友梨はあんな性格だから、不倫相手の娘だって分かってからは、なかなか遥香のことを受け入れられなかったんだよね。まあ、無理もない。いまだに親父とも不仲だしね」
「そうですか」
「ごめんね。親父が外に子ども作ったなんて身内の恥だし、香澄ちゃんとはずっと一緒に居たいから、俺の親に先入観を持ってもらいたくなくて、なかなか言い出せなかった」
「それは仕方ないと思います」
遥香さんが自殺未遂を図ってから、樹貴さんは異母兄として、他に頼る人のない遥香さんの面倒を見ると決めたらしい。
それがたまたま私の引っ越しの時期と重なって、仕事が忙しくなったこともあって、打ち明けるのに時間が掛かってしまったと樹貴さんが何度も謝る。
話を聞いて驚きはしたけど、そんな事情があったのなら、簡単に打ち明けられなかった樹貴さんの気持ちを理解出来なくはない。
だけど、本当にこれから先ずっと一緒に居たいと思ってくれてるなら、きちんと話して欲しかった。
「事情は分かりましたけど、私は遥香さんを恥ずかしい存在だなんて思いませんし、お兄さんしか頼れないのなら、それは仕方ないと思います」
「香澄ちゃん」
「だけど、ずっと一緒に居たいと思ってくれてるなら、もっと信用してください。隠し事をされているのが分かってるのに、何も聞けない状況は本当に辛いです」
「ごめんね。嫌な思いをさせてしまって」
「違います。嫌な思いをしたから言ってるんじゃないんです。お互いに信用や信頼しないと、長くは一緒に居られないって話です」
「そうだね。君の信頼を裏切ってごめん」
「分かってくれたのなら良いです」
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