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樹貴さんとの誤解も解けて、遥香さんの子どもが無事に産まれ、季節は巡って早くも十月になった。
親御さんに似て、体が丈夫ではないと言う遥香さんは、産後しばらく入院生活をしていたけれど、亡くなった婚約者のご両親の勧めもあって、彼らを頼って東京を離れた。
「それにしても、まさか香澄ちゃんがお兄ちゃんと付き合うなんて」
「それは本当に、色々と事情がありまして。引っ越してくる前から存じ上げていたと言いますか」
「知ってる。お兄ちゃんから聞いてるから」
それはどこまでですかと喉元まで出掛かって、言葉にするのをなんとか堪える。
今日は友梨さんと菜穂ちゃんが家に遊びに来て、三人で女子会を開催中だ。
ちなみに菜穂ちゃんは大豪邸に興奮して、今は一人で家中を探検して回っている。
「でも、本当にあんな人で良いの? 香澄ちゃんまだ若いのに。何もあんなオッサンと付き合わなくても良いじゃない。あ、これは別に小姑として言ってるわけじゃないのよ?」
「あはは、分かってますけど、手厳しいですね」
「だって四十一になるのに、今までプラプラしてたんだから」
それは樹貴さんが浮き名を流して来た話だろうか。
あれだけのイイ男なんだから、それは過去に色々あっただろうけど、本人の話だと遥香さんのこともあって、妹を嫁に出すまではと、結婚自体意識したことがなかったらしい。
友梨さんに言うと怒るだろうから黙っておいてと言われたけれど、ボロクソに言われているのを見てると、いたたまれない気持ちになってしまう。
「でもそうよね、おかしいと思ったのよ」
「何がですか」
「お兄ちゃんがさ、香澄ちゃんがここに住むって聞いた時、自分が様子を見に来るなんて、どうしちゃったのかと思ったけど、そういうことだったのね」
「すみません、友梨さんに言い出せなくて」
「別に良いわよ。あんな調子の人だから、しっかり手綱を引いといてくれると助かるわ」
頼むわねと優しく笑う顔は、やっぱり兄妹なだけあって、樹貴さんと雰囲気が似ている。
「ちょっと、何この豪邸! 香澄、あんたこんなとこに一人で住んでるなんて本当贅沢ね」
探検を終えた菜穂ちゃんがリビングに戻ってくると、家の中が一気に賑やかになる。
「菜穂ちゃんが知らないってことは、友梨さんはご両親のマンションに住んでらしたんですか」
「ここには中学生くらいまでね。ちょうど菜穂子と出会う前くらいだったと思う」
「ちょっと、今度泊めてよ。ね、良いでしょ友梨」
「ダメよ。ここは香澄ちゃんの愛の巣なの。ね、香澄ちゃん」
「いえ、そんなことないんで。全然いつでも大丈夫ですから」
「また、照れちゃって」
私を揶揄う友梨さんに、菜穂ちゃんがどういうことなのかと、今度は二人が私の恋愛話で勝手に盛り上がり始めた。
だけど実際友梨さんが言ったように、樹貴さんはほとんど自宅のマンションには帰らずに、この家で生活をしてるし、今朝もこの家から仕事に向かった。
だから樹貴さんが、そのうちマンションも手放して実家に帰ってくるというのは、あながち冗談じゃない気がしてる。
「へえ、そんな偶然があるのね。それにしたって香澄、あんたかなり面食いだったのね」
「え?」
「だって友梨のお兄さん、めちゃくちゃイケメンじゃない」
「ヤダちょっと菜穂子、気持ち悪いこと言わないでよ」
「気持ち悪いって、そんな言い方したら香澄が可哀想でしょ」
「ヤダ違うのよ、香澄ちゃん。でもアレがイケメンとか、それはないでしょ」
友梨さんはオエッと顔を歪めて、どうしても樹貴さんをイケメンだとは認めたくないらしい。
そうして賑やかに三人で雑談をしていると、あっという間に時間が過ぎて、窓の外にはオレンジ色の空が広がっている。
「時間が足りないわね」
「もうそろそろ帰らないとね」
親御さんに似て、体が丈夫ではないと言う遥香さんは、産後しばらく入院生活をしていたけれど、亡くなった婚約者のご両親の勧めもあって、彼らを頼って東京を離れた。
「それにしても、まさか香澄ちゃんがお兄ちゃんと付き合うなんて」
「それは本当に、色々と事情がありまして。引っ越してくる前から存じ上げていたと言いますか」
「知ってる。お兄ちゃんから聞いてるから」
それはどこまでですかと喉元まで出掛かって、言葉にするのをなんとか堪える。
今日は友梨さんと菜穂ちゃんが家に遊びに来て、三人で女子会を開催中だ。
ちなみに菜穂ちゃんは大豪邸に興奮して、今は一人で家中を探検して回っている。
「でも、本当にあんな人で良いの? 香澄ちゃんまだ若いのに。何もあんなオッサンと付き合わなくても良いじゃない。あ、これは別に小姑として言ってるわけじゃないのよ?」
「あはは、分かってますけど、手厳しいですね」
「だって四十一になるのに、今までプラプラしてたんだから」
それは樹貴さんが浮き名を流して来た話だろうか。
あれだけのイイ男なんだから、それは過去に色々あっただろうけど、本人の話だと遥香さんのこともあって、妹を嫁に出すまではと、結婚自体意識したことがなかったらしい。
友梨さんに言うと怒るだろうから黙っておいてと言われたけれど、ボロクソに言われているのを見てると、いたたまれない気持ちになってしまう。
「でもそうよね、おかしいと思ったのよ」
「何がですか」
「お兄ちゃんがさ、香澄ちゃんがここに住むって聞いた時、自分が様子を見に来るなんて、どうしちゃったのかと思ったけど、そういうことだったのね」
「すみません、友梨さんに言い出せなくて」
「別に良いわよ。あんな調子の人だから、しっかり手綱を引いといてくれると助かるわ」
頼むわねと優しく笑う顔は、やっぱり兄妹なだけあって、樹貴さんと雰囲気が似ている。
「ちょっと、何この豪邸! 香澄、あんたこんなとこに一人で住んでるなんて本当贅沢ね」
探検を終えた菜穂ちゃんがリビングに戻ってくると、家の中が一気に賑やかになる。
「菜穂ちゃんが知らないってことは、友梨さんはご両親のマンションに住んでらしたんですか」
「ここには中学生くらいまでね。ちょうど菜穂子と出会う前くらいだったと思う」
「ちょっと、今度泊めてよ。ね、良いでしょ友梨」
「ダメよ。ここは香澄ちゃんの愛の巣なの。ね、香澄ちゃん」
「いえ、そんなことないんで。全然いつでも大丈夫ですから」
「また、照れちゃって」
私を揶揄う友梨さんに、菜穂ちゃんがどういうことなのかと、今度は二人が私の恋愛話で勝手に盛り上がり始めた。
だけど実際友梨さんが言ったように、樹貴さんはほとんど自宅のマンションには帰らずに、この家で生活をしてるし、今朝もこの家から仕事に向かった。
だから樹貴さんが、そのうちマンションも手放して実家に帰ってくるというのは、あながち冗談じゃない気がしてる。
「へえ、そんな偶然があるのね。それにしたって香澄、あんたかなり面食いだったのね」
「え?」
「だって友梨のお兄さん、めちゃくちゃイケメンじゃない」
「ヤダちょっと菜穂子、気持ち悪いこと言わないでよ」
「気持ち悪いって、そんな言い方したら香澄が可哀想でしょ」
「ヤダ違うのよ、香澄ちゃん。でもアレがイケメンとか、それはないでしょ」
友梨さんはオエッと顔を歪めて、どうしても樹貴さんをイケメンだとは認めたくないらしい。
そうして賑やかに三人で雑談をしていると、あっという間に時間が過ぎて、窓の外にはオレンジ色の空が広がっている。
「時間が足りないわね」
「もうそろそろ帰らないとね」
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