【完結】僕ら二度目のはじめまして ~オフィスで再会した、心に残ったままの初恋~

葉影

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第一章

41話:三項②

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 思わぬ人物、しかも今日最も会いたくない人物の突然の出没に、久遠の頭は再び真っ白に戻ってしまった。

 神永は切羽詰まったような目で霧島の目を見ていて、そこには非難も含まれているようだった。

 神永も退勤するところだったのだろう。霧島の肩を掴んでいない方の手には鞄がある。

 会社を出て歩いていたら、見知らぬ男性が、女性部下の腕を掴んで対立しているような状況を目撃したのだ。神永からしたら、霧島が久遠を守ったどころか、危害を加えているようにも見えているかもしれない。

 そこまで思考が繋がると、久遠はやっと霧島に腕を掴まれたままであることを思い出し、霧島から離れた。霧島の方も、神永の登場に驚いていてもう手に力は入っていなかったため、簡単に腕を抜くことができた。

「チーム長、この人は今私を――」
「神永じゃん。そっちこそ何して――」

 久遠が神永が霧島に抱いているであろう誤解を解くために状況を説明しようとしたが、霧島の声がかき消した。

 久遠には理解ができなかった。

 今、霧島の口から『神永』という名前が出てきたのだ。

「え……?」「え?」

 久遠が不思議そうに霧島を見上げるのと、霧島がこちらを向くのは同時だった。その間で、神永も不思議そうに久遠と霧島を見ている。

「え、お知り合いですか?霧島さん、と、」

 チーム長と言うべきか神永さんと言うべきかなぜか迷い、最後を濁すと、霧島が言った。

「え、久遠こそなんで……あ」

 霧島は神永と久遠を交互に見たかと思うと、

「あー!あ、あーあー、うわ、すっきりした。あ~、ね。そうそうそう、……それだ」

 と急に喋り出す。

 何かに合点がいったようだが、置いていかれている神永と久遠としては、膝を叩いて納得した身振りの霧島を呆然と見守ることしかできない。

 すると霧島が急に久遠に向き直り、にっと笑った。

「完、全に思い出した。すっきりした」

 勝手に、何を一人で。

 霧島の説明が不十分すぎるので、久遠と神永の眉間にはしわが寄るばかりだ。

「うんうん。……あ、俺怪しくないから。久遠と普通に友だちだから。手離せ」
  
 霧島は軽く笑って、自分の肩にかかっている神永の手を取りそれを払った。

 自分と霧島この人は友だちだったのか、と考えてもなかった関係性が明らかになるが、今はそこに異議を唱えるようなタイミングではない。それに、久遠としても友だちだと思ってもらえていたのは素直に嬉しかった。

 ただ、霧島がどうして神永を知っているのかが分からない。

 一人でニヤニヤしている霧島と、まだ霧島を訝しげに見ている神永は、久遠から見れば非常にちぐはぐだ。まるで、作品の違うキャラクター同士が一緒に出てきたような、そんな違和感がある。

「友だちって本当?」

 不信感をあらわにしたままの神永が、久遠に真偽を確認してきた。

 この状況はわけがわからないが、自分を救ってくれた切島になにかあらぬ疑いがかかっている状態を打破したいことだけは確かだ。久遠はこくこくと頷いた。

 肯定する久遠を見て、霧島は満足気に神永を見る。神永はまだ納得していないようだが、警戒の気配を少し緩ませた。

 その時、一人で謎の納得をすることに満足したらしい霧島が久遠に話しかけてきた。

「久遠さ、この後用事ある?直帰?」

 エプロンを脱ぎながら尋ねる霧島。

 用事?なんで?

「直帰ですけど……」

 久遠がそう言うと、霧島はニヤリと笑った。

「じゃあ……俺とちょっといいとこ行かない?」
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