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第一章
72話:あの日の構図③
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彼が言った言葉は、また、2人の過去の存在を示唆するものだった。
しばらくの間見つめ合う。
給湯室の中と、入り口と。2人が立っている場所には距離がある。けれど、心はより近づいたような気がした。
「……あの」
久遠が口を開く。神永は、久遠を見つめたまま、瞬きを1つした。話の先を促すように。
「もし、時間があったら、昼休み――」
ブーッブーッブーッ
昼休みに話をする時間があるかを聞こうとしたら、電話の着信音が鳴った。神永のポケットからだった。
神永は「ごめん、ちょっと」と久遠に断り、スマホを耳に当てる。久遠も頷いた。
「はい神永です。……はい。はい。今日ですか。可能です。承知いたしました。これからですと、到着は……16時半頃になってしまいますが問題ありませんか。はい。分かりました、向かいます」
神永はそう言って電話を切ると、いくらかスマホを操作し、何かを打ち込んだ。そしてすぐに久遠の社内用スマホも震える。彼からチームへのslack連絡が今送られたのだ。
「ごめん、明日からの出張を急遽今から来られないかって言われちゃったから、俺出るね」
電話から断片的に聞こえていた内容で察していたため、久遠も頷く。
「はい、お気をつけて」
「あさっき……何か言いかけてたよね?すぐ済むものだったら今聞くけど」
仕事モードの神永に問われ、久遠は首を振った。緊急の連絡を受け性急な雰囲気を漂わせている神永に、間違っても出来る話ではない。
「大したことないので、大丈夫です。また後日」
ニュートラルな声色でそう言ったはずだが、神永は少し怪訝そうな顔をする。
「本当に?何かあるんだったら今言って」
本当に今話したいことではなかったが、神永に何も感じ取られないようにと意識しすぎて、かえって構ってほしいムーブに見えてしまったのかもしれない。
「本当に大丈夫です。行ってきてください」
霧島に宣言した手前、出来れば今日神永と話してみたかったけれど、この緊急の出張によりまた猶予が出来るのだと思うとどこかほっとする気持ちもあった。
そもそも、久遠が話し合うタイミングを決められると思っていたのも烏滸がましい話だ。自分は、傷つけた側なのに。
神永はまだ少し疑いの目で久遠を見ていたが、腕時計を確認し、「それじゃ、お疲れさま」と言ってその場を去っていった。
神永がいない数日間で久遠が会社から迫害されることになるだなんて、この時の2人は知る由もなかった。
しばらくの間見つめ合う。
給湯室の中と、入り口と。2人が立っている場所には距離がある。けれど、心はより近づいたような気がした。
「……あの」
久遠が口を開く。神永は、久遠を見つめたまま、瞬きを1つした。話の先を促すように。
「もし、時間があったら、昼休み――」
ブーッブーッブーッ
昼休みに話をする時間があるかを聞こうとしたら、電話の着信音が鳴った。神永のポケットからだった。
神永は「ごめん、ちょっと」と久遠に断り、スマホを耳に当てる。久遠も頷いた。
「はい神永です。……はい。はい。今日ですか。可能です。承知いたしました。これからですと、到着は……16時半頃になってしまいますが問題ありませんか。はい。分かりました、向かいます」
神永はそう言って電話を切ると、いくらかスマホを操作し、何かを打ち込んだ。そしてすぐに久遠の社内用スマホも震える。彼からチームへのslack連絡が今送られたのだ。
「ごめん、明日からの出張を急遽今から来られないかって言われちゃったから、俺出るね」
電話から断片的に聞こえていた内容で察していたため、久遠も頷く。
「はい、お気をつけて」
「あさっき……何か言いかけてたよね?すぐ済むものだったら今聞くけど」
仕事モードの神永に問われ、久遠は首を振った。緊急の連絡を受け性急な雰囲気を漂わせている神永に、間違っても出来る話ではない。
「大したことないので、大丈夫です。また後日」
ニュートラルな声色でそう言ったはずだが、神永は少し怪訝そうな顔をする。
「本当に?何かあるんだったら今言って」
本当に今話したいことではなかったが、神永に何も感じ取られないようにと意識しすぎて、かえって構ってほしいムーブに見えてしまったのかもしれない。
「本当に大丈夫です。行ってきてください」
霧島に宣言した手前、出来れば今日神永と話してみたかったけれど、この緊急の出張によりまた猶予が出来るのだと思うとどこかほっとする気持ちもあった。
そもそも、久遠が話し合うタイミングを決められると思っていたのも烏滸がましい話だ。自分は、傷つけた側なのに。
神永はまだ少し疑いの目で久遠を見ていたが、腕時計を確認し、「それじゃ、お疲れさま」と言ってその場を去っていった。
神永がいない数日間で久遠が会社から迫害されることになるだなんて、この時の2人は知る由もなかった。
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