【完結】僕ら二度目のはじめまして ~オフィスで再会した、心に残ったままの初恋~

葉影

文字の大きさ
93 / 104
第二章

93話:霧島への報告①

しおりを挟む
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 日が落ちた頃、2人は『HALTE』に到着した。

 渋谷乗り換えで恵比寿に移動する間、久遠はこれまで霧島にどういうふうにお世話になっていたのかを神永に語った。霧島がいなかったら、久遠は今も向き合うことを恐れていたかもしれないということも。

 バーの本来の店名を覆うように貼られた『HALTE』の看板を確認すると、神永は久遠の手を引いて扉を開けた。

 そこには、こじんまりとした空間いっぱいに既に温かな活気が満ちていた。ガーリックとハーブの食欲をそそる香りが漂い、数組の先客たちが楽しげに声を弾ませている。

  霧島は、キッチンで調理をしていた。カウンター席の客と笑い合いながら器用にフライパンを振っていた霧島が、ドアベルの音に顔を上げる。

「いらっしゃい。……って、え?」

 霧島の手が、目に見えて止まった。 視線の先にあるのは、神永と久遠。――そして、2人の間で繋がれている手。店に入ってすぐ、久遠が自然に離そうとした神永の手は、強固に久遠の手を解放しようとしなかった。

 霧島は数秒ほど呆然としたあと、ちょうど2席分空いていたカウンターの中央を指差した。

「……おー、まじか。思ってたよりだいぶ早かったな」

 ニヤリと微笑んでくれる。自然な祝福の言葉のように感じられ、久遠は気恥ずかしくも、胸にじわりと温かいものが広がった。

 霧島さんはニヤリと笑うと、3つのグラスをカウンターの台に並べた。 忙しそうにしていたはずなのに、手際よく準備してくれる。

「はい、座りな。お祝いの乾杯しないと」

 促され、神永と進みカウンターに座らせてもらう。

「連絡もしないで急に来て悪いね。霧島がどんな顔するか見たくって」

 神永は楽しそうに言うと、霧島もおどけるように肩を竦めて2人の一瞥し、ワインを注ぎ始めた。淡い薔薇色の液体がしゅわしゅわと弾けていく。

「そりゃあ驚きましたよ。俺のさっきの顔で満足した?」

「うん、だいぶ。霧島のあんな驚いた顔って、初めて見たかも」

 2人がここまで朗らかに会話している様子を初めて見た久遠は、普通に仲良いんだ……と内心驚いていた。

 すると、霧島が久遠に目線を移して言う。

「てか久遠、一瞬誰か分かんなかった。スーツじゃなかったから」

 久遠は、あ、と言いながら自分の装いを見下ろす。日中神永がプレゼントしてくれたホワイトコーデに身を包む自分の姿は、久遠自身もまだ見慣れない。

「デートのための服?可愛いじゃん」

 二ッと笑うので、霧島の八重歯がちらりと覗いた。

 恥じらいもなくストレートに褒められ、久遠の笑顔が固まる。1歳しか違わないとは思えない大人の余裕と、横にいる人の心情を想像することが、両方とも怖いからだ。

「か、彼が選んでくれて。プレゼントしてくれたんです、今日」

「ふーん、やるじゃん。さすがのセンスだな」

 霧島から爽やかな笑顔で純粋に褒められるも、複雑な思いの神永は「うん、ありがとう」と笑顔だが無機質な声で返答している。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】京都若旦那の恋愛事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜

藍生蕗
恋愛
大学二年生、二十歳の千田 史織は内気な性格を直したくて京都へと一人旅を決行。そこで見舞われたアクシデントで出会った男性に感銘を受け、改めて変わりたいと奮起する。 それから四年後、従姉のお見合い相手に探りを入れて欲しいと頼まれて再び京都へ。 訳あり跡取り息子と、少し惚けた箱入り娘のすれ違い恋物語

行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました

鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。 けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。 そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。 シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。 困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。 夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。 そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。 ※他投稿サイトにも掲載中

【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~

蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。 嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。 だから、仲の良い同期のままでいたい。 そう思っているのに。 今までと違う甘い視線で見つめられて、 “女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。 全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。 「勘違いじゃないから」 告白したい御曹司と 告白されたくない小ボケ女子 ラブバトル開始

【完結】あなた専属になります―借金OLは副社長の「専属」にされた―

七転び八起き
恋愛
『借金を返済する為に働いていたラウンジに現れたのは、勤務先の副社長だった。 彼から出された取引、それは『専属』になる事だった。』 実家の借金返済のため、昼は会社員、夜はラウンジ嬢として働く優美。 ある夜、一人でグラスを傾ける謎めいた男性客に指名される。 口数は少ないけれど、なぜか心に残る人だった。 「また来る」 そう言い残して去った彼。 しかし翌日、会社に現れたのは、なんと店に来た彼で、勤務先の副社長の河内だった。 「俺専属の嬢になって欲しい」 ラウンジで働いている事を秘密にする代わりに出された取引。 突然の取引提案に戸惑う優美。 しかし借金に追われる現状では、断る選択肢はなかった。 恋愛経験ゼロの優美と、完璧に見えて不器用な副社長。 立場も境遇も違う二人が紡ぐラブストーリー。

【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました

藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。 次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。

溺婚

明日葉
恋愛
 香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。  以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。  イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。 「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。  何がどうしてこうなった?  平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜

椿かもめ
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。 【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】 ☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆ ※ベリーズカフェでも掲載中 ※推敲、校正前のものです。ご注意下さい

Melty romance 〜甘S彼氏の執着愛〜

yuzu
恋愛
 人数合わせで強引に参加させられた合コンに現れたのは、高校生の頃に少しだけ付き合って別れた元カレの佐野充希。適当にその場をやり過ごして帰るつもりだった堀沢真乃は充希に捕まりキスされて…… 「オレを好きになるまで離してやんない。」

処理中です...