BLゲームの主人公なんだから攻略対象たちと仲良くやっててください

ネギマ

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 しかし、そうは思っていても扉の向こうからは未だトマリの喚く声が聞こえる。面倒くさい、関わりたくない、という空気が僕たちの間に流れるが、今日に関しては放っておくわけにはいかない。
 なぜなら今日はこの後、名家白金家の屋敷にて、トマリと同い年かつ白金家長男で次期当主であるレオンの生誕パーティーがあるからだ。
 白金家とは、我が灰羽家と肩を並べる国内有数の名家である。手掛ける事業も似通っていて、昔からライバルとしていがみ合ったり同業者として切磋琢磨したりと、仲がいいのか悪いのかわからない、けれどいい意味で互いを重要視している関係性を家単位で築いていた。それは現在でも変わらずで、子どもの生誕パーティーに招待し合うくらいには仲良くやっている。
 ただ今代は、いい関係を築いてる、だけではおさまらない縁が両家の間にできていた。それは、白金家長男レオンと、灰羽家三男トマリが、将来結婚を約束している婚約者同士である、というものだ。
 前世の僕がいた世界では考えられないことだが、僕が生きているこの世界は男性同士でも子を成すことができる。そしてなんと、人体には魔力が宿っていて、それを放出することで魔法なんてものも使える。
 男性が子を成すときはその人体に流れる魔力を利用し、薬でひと月ほどかけて内側から魔力を活性化さることで、男性でも子どもを宿せる体に作り変えることができる。子どもを産んだら元の男性の体に戻るので、もう一人産みたいとなったらまたひと月薬を服用し続けなければならないのだが、副作用はないので、跡継ぎ問題などが出やすいうちみたいな良家からはわりと重宝されている代物だ。そんな事情から、同性同士の結婚もごくごく当たり前になっている。
 なので世間的にはレオンとトマリの婚約にはなんらおかしな部分はないのだが、灰羽家と白金家は付き合いは長いが今まで縁を結んだことなどなかった。それがどうして今代で縁を結ぶことになったのか。それは幼少期に出会ったレオンとトマリが一目惚れ同然に惹かれ合ったからだ。
 将来結婚したいと言い出したのはレオンの方かららしい。溺愛して育ててきたトマリを嫁がせるなどまだ考えていなかった父は当然反対していたものの、トマリの希望と数度の話し合いの結果、結局婚約を結ぶことになったようだ。その辺の詳しい事情は兄さんから聞き及んだだけなのでよくわからない。しかし二人が惹かれ合って婚約したのは確かだ。よくある子ども同士の一過性のものだと思わなくもないが、婚約から数年経った今でも二人の仲は良好そうに見える。あのワガママ放題のトマリを、レオンは上手く扱っているようだ。さすがは白金家の次期当主である。
 そして今日は、そんなトマリの婚約者でもあるレオンの生誕パーティー。僕と兄さんの着替えも終えて、そろそろ家を出なければ道の混みようによってはギリギリの到着になってしまう、という時間が差し迫っている。それなのに、トマリがまた面倒くさい癇癪を起こしてしまった。こうなっては使用人ではおさめることは難しい。

「仕方ない」

 兄さんはもう一度ため息を吐き、金切り声がした部屋の部屋の扉をノックした。

「トマリ、カケルだ。入るぞ」

 そう言って、兄さんは返事を待たずに扉を開ける。僕もその後に続いて部屋の中に入った。
 この部屋はトマリの自室のため、勉強机やベッド、寛げるソファーとテーブルの他にはトマリの私物が所狭しと詰め込まれている。そしてトマリの服が収められているクローゼットの前で下着姿のトマリが蹲り、その傍に着替えを手伝っていた二人の使用人がいて、こちらを涙目で見上げてきた。

「カケル様、ススム様……!」
「すまない、トマリが苦労をかけたな」

 僕たちにお辞儀をする使用人二人を部屋の隅に下げさせ、兄さんは蹲っているトマリの体を揺する。

「トマリ、またワガママを言ったのか。時間が無いんだから、用意してくれた服にさっさと着替えろ」
「……いやだ、あのきらきらじゃないと僕いやだもん」

 トマリが顔も上げずクローゼットを指差す。
 そこにはトマリの服がずらっと並んでいてどれを指さしているのかはわからなかったが、きらきらと言っているからおそらくはトマリが気に入っている装飾がふんだんに施された服のことだろう。

「あのなトマリ。今日はレオンの生誕パーティーだけじゃなく、ほうぼうへのお披露目の日でもあるんだ。それなのにトマリが目立つ服を着ていったら誰が主役か分からなくなるし、婚約者であるレオンに恥をかかせることになるんだぞ」
「……でも、僕はあれが着たいんだもん……」
「でもじゃない。今回ばかりは我慢しろ。時間もないんだから、さっさと着替えるんだ」
「…………」

 兄さんが少々圧を滲ませた声色で諭す。本当はこんな回りくどく語りかけないで、無理やり起こさせて無理やり着替えさせれば終わる話なのだが、後々の両親が面倒なので兄さんはこうしている。変に優しくしてしまっているから、トマリも付け上がって僕たちの言うことは聞かないので最早為す術が見当たらない。
 顔を上げないトマリを横目に、僕はクローゼットに視線を移す。

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