【完結】SS級の冒険者の私は身分を隠してのんびり過ごします

稲垣桜

文字の大きさ
39 / 63

38

しおりを挟む
「やっぱり、罠か?」

「俺たちに罠を仕掛けても、返り討ちにあうのをわかっていながらやる理由はないだろう」

「そうだね…それに、ここ。どうみても、大規模な討伐があったように見えないね」

「ハーピーがいたのは事実だろうが、パーティのいくつかに依頼して討伐したんだろう。まあ、あそこに隠れている奴が話してくれるだろうよ」

「ああ、彼?」


 そう言って二人が視線を向けた先には、一人の男の姿があった。
 向こうもこちらに気が付き、二人に向かってまっすぐと歩み寄ってくる。


「当人登場かな?」


 セオドアはその姿を見て、そうポツリと言った。
 ランドルフも薄々気が付いていたのか、その男の顔を見てニヤッと口元を歪ませる。


「ランドルフ・スコット殿、セオドア・グラント殿」


 話しかけてきたのは、間違うことなくローレンス・イグニス・エクスデイル本人だった。行方不明だという割には元気そうだなと揶揄いながらも二人は返事をした。


「ほう。俺たちがわかるのか?ローレンス・イグニス・エクスデイル王弟殿下」

「頬に傷があり、赤髪で日雷の槍を持つ者。紫紺に同色で刺繍を施した長いローブを羽織る者。黎明の羅針盤のお二人しかいないでしょう」

「そう言われると認めざるを得ない…か。まあ、王弟殿下は我々に何度も接触をしようとしていたから、俺たちの事を調べていてもおかしくはないな。しかし、手紙も依頼も無視したらこれか……」


 呆れたようにそう言ったランドルフにローレンスは頭を下げ謝罪の言葉を述べた。王弟が軽々しく頭を下げるべきではないが、それだけ真摯に対応したかったのだろう。


「騙す様なことをしてすまなかった。もう限界だった。そなたたちの仲間意識が強いことは知っている。リサの…エリザベスの事を大切に思っていることも。だから、彼女の居場所を知っていると確信している。頼む。彼女に会わせてほしい」

「リサの居場所ねぇ…まあ、教えてやらないこともない」

「ランディ、いいの?」

「三年前から一切表舞台に現れなくなったのはリサを探す為なんだろう?俺たちはその事を知っていたが、リサには伝えていない。俺はあんたの真意を知りたかったからな。だから手紙も依頼も一切無視させてもらった。悪いな」

「……リサに、リサに会わせてくれるのか?」

「それには条件がある」

「条件?」

「ああ、町は教えよう。だが後は自分で探せ。リサの家には結界が張られているからそうやすやすと辿り着けないと思うが、お前が心の奥底からリサを想うなら見つけられるはずだ。期限は一か月だ。それを過ぎれば、会う資格がなかったと思ってあきらめろ、いいな」

「ああ、了解した」

「じゃあ、俺たちは先に戻る。町はホルトンだ。どれだけで見つけられるか楽しみだな」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

拾った指輪で公爵様の妻になりました

奏多
恋愛
結婚の宣誓を行う直前、落ちていた指輪を拾ったエミリア。 とっさに取り替えたのは、家族ごと自分をも売り飛ばそうと計画している高利貸しとの結婚を回避できるからだ。 この指輪の本当の持ち主との結婚相手は怒るのではと思ったが、最悪殺されてもいいと思ったのに、予想外に受け入れてくれたけれど……? 「この試験を通過できれば、君との結婚を継続する。そうでなければ、死んだものとして他国へ行ってもらおうか」 公爵閣下の19回目の結婚相手になったエミリアのお話です。

契約結婚の相手が優しすぎて困ります

みみぢあん
恋愛
ペルサル伯爵の婚外子リアンナは、学園に通い淑女の教育を受けているが、帰宅すれば使用人のような生活をおくっていた。 学園の卒業が近くなったある日、リアンナは父親と変わらない年齢の男爵との婚約が決まる。 そんなリアンナにフラッドリー公爵家の後継者アルベールと契約結婚をしないかと持ちかけられた。

虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。

ラディ
恋愛
 一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。  家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。  劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。  一人の男が現れる。  彼女の人生は彼の登場により一変する。  この機を逃さぬよう、彼女は。  幸せになることに、決めた。 ■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です! ■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました! ■感想や御要望などお気軽にどうぞ! ■エールやいいねも励みになります! ■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。 ※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

婚約破棄後のお話

Nau
恋愛
これは婚約破棄された令嬢のその後の物語 皆さん、令嬢として18年生きてきた私が平民となり大変な思いをしているとお思いでしょうね? 残念。私、愛されてますから…

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

元男装傭兵、完璧な淑女を演じます。――嫁ぎ先はかつての団長でした!?

中野森
恋愛
貧乏男爵家の長女クラリスは、弟の学費を稼ぐために男装して傭兵団へ入団した。 副団長にまで上り詰め、団長をはじめとした仲間から信頼を得るが、決して正体は明かさなかった。 やがて戦争が終わり、傭兵団は解散となる。 出稼ぎするために流した嘘の悪評により、修道院入りを覚悟していたクラリスだったが、帰郷した彼女を待っていたのは父からの「嫁ぎ先が決まった」という一言だった。 慌ただしく始まる淑女教育、そして一度も未来の夫と顔合わせすることなく迎えた結婚式当日。 誓いの言葉を促され隣からきこてくる声に、クラリスは凍りつく。 ……嘘でしょ、団長!? かつての想い人でもある傭兵仲間が今は夫となり、妻の正体には気づいていない――気づかれてはいけないのだ、絶対に! 本作品はゆるふわ設定、ご都合主義、細かいことは気にしたら負け! ※この小説は、ほかの小説投稿サイトにも投稿しています。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

処理中です...