【完結】SS級の冒険者の私は身分を隠してのんびり過ごします

稲垣桜

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 リサの元へ戻ったランドルフは、現場には一切の痕跡がなかったことと、地元の住民たちも討伐隊の話しすら知らないことを話し、そもそもこの噂話自体が嘘だったようだと説明をした。

 そして肝心の話をリサに伝えた。


「リサ。正直な気持ちを教えてくれるか?」

「正直な気持ちってなんの?」

「アルの父親の事だ。お前は、そいつの事は嫌いなのか?どうなんだ?」

「なに、突然?」

「いいから、少しでも会いたいと思ったりするのか?」

「……嫌いになった訳じゃないわ。私が居ても邪魔だと思ったから今ここにいるんだし。それに、会いたくないとは思ってない。いつかまた会えるといいなとは思ってる」

「そうか…それなら安心だな」

「何が安心なの?」

「いや、リサもアルも大丈夫だなってな」


 ランドルフがそう聞いたのは、リサの結界に影響があるからだ。

 彼女の展開する結界は、誰もが突破することのできない完ぺきな出来に違いないのだが、この家の周囲に張ってあるものは、リサに対し害意がある場合は家の存在すらわからず辿り着くことはできない。
 だが害意を持たないものやリサが好意を抱く人物に対しては比較的緩い。結界をすり抜けて辿り着ける可能性があるのだ。

 ランドルフはリサにローレンスに対しての気持ちを再確認させ、ローレンスの味方をしたのだ。

 そう、結界が緩くなるように。


 ―――あいつなら必ず来るな。


 ランドルフには確信に近いものがあった。ローレンスは必ずここにたどり着くだろうと。




 
 ランドルフが期日を決めた日が二週間を切った頃、ランドルフたちはセオドアの屋敷でアレックスに魔力制御について教えていた。

 リサはその姿を見ていたが、そろそろ夕食の準備に取り掛かろうと自分の家へと一度戻って行った。
 あらかたのメニューは考えていたので、後は残っていたワイルドボアの肉を焼いて、野菜を盛り付けてと手際よく作業を進めた。

 その準備を終える頃、玄関のドアを叩く音がリサの耳に届いた。


 この家に来るお客など珍しいとリサは思いながらその扉を開け、訪ねてきた人物に驚いて声を出す事すら忘れ立ち尽くした。



 その人物はリサを見て嬉しさを堪えきれず、今にも泣き出しそうに目を潤ませ顔を歪ませながら「リサ……リサ、ようやく会えた」と絞り出すように告げ、彼女を抱きしめた。


「ラ…リー?どうして?」


 ラリーがリサを抱き留めたその腕はまだ震えていた。

 だが、その震える腕はまだしっかりと力がこもっている。


 もう二度とリサがすり抜けて逃げていかないように。


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