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「叔父上、やはり生きていらしたのですね。あの子供たちは叔父上のお子でしょう?」
どうやら部屋から出ていった子供たちを見かけたようで、ジークフリートは一種の確信をもって乗り込んできたようだ。確かにアレックスはローレンスにそっくりなのだから気付かないわけはないだろう。
しかし、宰相はジークフリートには会わないはずではなかったのだろうかとローレンスは眉をひそめた。
それに、王太子ともあろうものがこのマナーのなさはいかがなものか…と。
面倒なことになったと顔に出ているローレンスにリサがまあまあとでもいうように背中をさする。
その姿を目にしたジークフリートが「その女性は?」と声をかけた。今の姿はリサ・ファローではなく、エリザベス・ファロンなのだから見覚えがないのは仕方ない。
「お前が八年前に追い出した女性だ。覚えているだろう?ジーク」
「八年前……?」
ローレンスはまるで親の仇を見るような目をして不機嫌極まりない声でそう答えると、リサは認識阻害の魔法でリサの姿になった。そしてその姿を見たジークフリートは、すぐに思い出したのだろう。顔を真っ青にして立ち尽くしている。
あの日の後、ローレンスに力いっぱい殴られ父親や宰相から「冒険者とはいえSS級の人間はこの国に片手ほどしかいないのだぞ。追い出すなど無礼もいいところだ」と説教をされ、しばらくの間 謹慎を言い渡され肩身の狭い思いをしたのだ。
それもローレンスがリサを探すために出奔したことで、さらにあたりが強くなったと感じていた。
ジークフリートは出来が悪いわけではない。
次期国王としてもしっかりとした教育を受け、臣下からの支持もある。その人格や人望は次期国王として申し分ないと言われてはいるが、少し短慮なところがある。ローレンスがいなくなってからはそう言ったことがないように再教育をしたらしいが、少しは変わったのだろうか。
「黎明の羅針盤のエリザベス・ファロン殿……」
「お久しぶりですわ。王太子殿下。あの時は何も言えずに申し訳ありませんでした。一介の冒険者でもある私が王太子殿下に何かを申し上げることなどできませんでしたから」
嫌味のようにニコリと微笑み、ローレンスもまた彼女の肩を抱いてジークフリートに冷たい視線を向けた。
「あ…いや……」
「ジーク。お前は次期国王の自覚はあるのか?兄上が退位されたらお前が後を継いでこの国を守らなければいけないのだぞ」
「はい…」
ローレンスが諭すようにジークフリートに強めの口調で言い、この先の次期国王と言う立場をしっかりと理解し、そしてその覚悟をしっかりと持つようにと注意をした。
「では兄上、私はそろそろ帰ります。お身体ももう大丈夫でしょうから、ジークの教育をしっかりとしてください」
「待ってください、叔父上!戻ってこられたのではないのですか?」
「ここにはもう私の居場所はない。私はリサたち家族と暮らす場所がちゃんとある」
「叔父上、せめてもう少しいてください。お願いします」
懇願するジークフリートの姿はローレンスには全く響かないが、甥っ子にここまで慕われているローレンスの姿を見てリサは少し助け舟を出そうかと考えた。ここを離れるならなおさら、ローレンスとジークフリートの仲を少しは改善しておくのもアリだろうと親心ならぬ妻心である。
「ねえ、ラリー?子供たちに少し王都を観光させたいの。だから、そうねぇ…もう数か月くらいあなたのお屋敷でゆっくりしない?」
「はぁ…リサ。観光はさせたいが、そこまで長居するつもりは…」
「では、私が子供たちを案内します!これでも王都は隅々まで見て回ったので安心してください。では、明日の朝、叔父上の屋敷まで迎えに行きます。いや、子供たちをこのまま王宮に泊まらせましょう」
「お…おいっ、ジーク!」
ジークフリートは言いたい事を言って、そのまま国王の部屋を飛び出し、恐らく子供たちのいる部屋に向かったのだろう。
「あらあら。王太子殿下はせっかちなのね」
「リサ…どうするんだ?」
「まあ、いいんじゃないの?甥っ子の可愛らしい面も見られて。ねぇ、ふふふっ」
ローレンスはリサには弱いが、こういう楽しんでいる時に浮かべる彼女の笑顔にはさらに弱かった。まあ、いざとなればすぐにでもすべてを捨てて消えることもできる。そう割り切って、しばらくは王都観光と言う名目で残ってもいいだろう。兄がきちんと復帰するまでの間だけだが、それで十分だろう。そう考えて国王にも返事をしておいた。
「兄上。兄上が復帰するまでですよ。復帰した時にはすぐに私たちは帰りますから」
国王は、嫌々だという口調ではあるが、その顔には嬉しそうな照れが見て取れるその可愛い弟の姿を見て、良い相手と夫婦になったことを嬉しく思っていた。
どうやら部屋から出ていった子供たちを見かけたようで、ジークフリートは一種の確信をもって乗り込んできたようだ。確かにアレックスはローレンスにそっくりなのだから気付かないわけはないだろう。
しかし、宰相はジークフリートには会わないはずではなかったのだろうかとローレンスは眉をひそめた。
それに、王太子ともあろうものがこのマナーのなさはいかがなものか…と。
面倒なことになったと顔に出ているローレンスにリサがまあまあとでもいうように背中をさする。
その姿を目にしたジークフリートが「その女性は?」と声をかけた。今の姿はリサ・ファローではなく、エリザベス・ファロンなのだから見覚えがないのは仕方ない。
「お前が八年前に追い出した女性だ。覚えているだろう?ジーク」
「八年前……?」
ローレンスはまるで親の仇を見るような目をして不機嫌極まりない声でそう答えると、リサは認識阻害の魔法でリサの姿になった。そしてその姿を見たジークフリートは、すぐに思い出したのだろう。顔を真っ青にして立ち尽くしている。
あの日の後、ローレンスに力いっぱい殴られ父親や宰相から「冒険者とはいえSS級の人間はこの国に片手ほどしかいないのだぞ。追い出すなど無礼もいいところだ」と説教をされ、しばらくの間 謹慎を言い渡され肩身の狭い思いをしたのだ。
それもローレンスがリサを探すために出奔したことで、さらにあたりが強くなったと感じていた。
ジークフリートは出来が悪いわけではない。
次期国王としてもしっかりとした教育を受け、臣下からの支持もある。その人格や人望は次期国王として申し分ないと言われてはいるが、少し短慮なところがある。ローレンスがいなくなってからはそう言ったことがないように再教育をしたらしいが、少しは変わったのだろうか。
「黎明の羅針盤のエリザベス・ファロン殿……」
「お久しぶりですわ。王太子殿下。あの時は何も言えずに申し訳ありませんでした。一介の冒険者でもある私が王太子殿下に何かを申し上げることなどできませんでしたから」
嫌味のようにニコリと微笑み、ローレンスもまた彼女の肩を抱いてジークフリートに冷たい視線を向けた。
「あ…いや……」
「ジーク。お前は次期国王の自覚はあるのか?兄上が退位されたらお前が後を継いでこの国を守らなければいけないのだぞ」
「はい…」
ローレンスが諭すようにジークフリートに強めの口調で言い、この先の次期国王と言う立場をしっかりと理解し、そしてその覚悟をしっかりと持つようにと注意をした。
「では兄上、私はそろそろ帰ります。お身体ももう大丈夫でしょうから、ジークの教育をしっかりとしてください」
「待ってください、叔父上!戻ってこられたのではないのですか?」
「ここにはもう私の居場所はない。私はリサたち家族と暮らす場所がちゃんとある」
「叔父上、せめてもう少しいてください。お願いします」
懇願するジークフリートの姿はローレンスには全く響かないが、甥っ子にここまで慕われているローレンスの姿を見てリサは少し助け舟を出そうかと考えた。ここを離れるならなおさら、ローレンスとジークフリートの仲を少しは改善しておくのもアリだろうと親心ならぬ妻心である。
「ねえ、ラリー?子供たちに少し王都を観光させたいの。だから、そうねぇ…もう数か月くらいあなたのお屋敷でゆっくりしない?」
「はぁ…リサ。観光はさせたいが、そこまで長居するつもりは…」
「では、私が子供たちを案内します!これでも王都は隅々まで見て回ったので安心してください。では、明日の朝、叔父上の屋敷まで迎えに行きます。いや、子供たちをこのまま王宮に泊まらせましょう」
「お…おいっ、ジーク!」
ジークフリートは言いたい事を言って、そのまま国王の部屋を飛び出し、恐らく子供たちのいる部屋に向かったのだろう。
「あらあら。王太子殿下はせっかちなのね」
「リサ…どうするんだ?」
「まあ、いいんじゃないの?甥っ子の可愛らしい面も見られて。ねぇ、ふふふっ」
ローレンスはリサには弱いが、こういう楽しんでいる時に浮かべる彼女の笑顔にはさらに弱かった。まあ、いざとなればすぐにでもすべてを捨てて消えることもできる。そう割り切って、しばらくは王都観光と言う名目で残ってもいいだろう。兄がきちんと復帰するまでの間だけだが、それで十分だろう。そう考えて国王にも返事をしておいた。
「兄上。兄上が復帰するまでですよ。復帰した時にはすぐに私たちは帰りますから」
国王は、嫌々だという口調ではあるが、その顔には嬉しそうな照れが見て取れるその可愛い弟の姿を見て、良い相手と夫婦になったことを嬉しく思っていた。
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