ヘタレ転移者 ~孤児院を救うために冒険者をしていたら何故か領地経営をすることになったので、嫁たちとスローライフを送るためにも頑張ります~

茶山大地

文字の大きさ
144 / 317
第八章 ヘタレパパ

第二十六話 正月と言えばクールなあれ

しおりを挟む
 真っ暗な中での観覧車から見るライトアップされたファルケンブルク城はすごく神秘的だとかで、ガキんちょどもは大興奮だ。「もう一周」「もう一周」とうるさかったが、「年越し蕎麦があるぞ」と言うと大人しく魔導観覧車から降りだしてくる。
 食欲で釣れば簡単なんだよなこいつら。
 寮生と寮の職員の分もすでに届けてあるので、それぞれ分かれて戻っていく。


「兄ちゃん! 兄ちゃん!」


 リビングに戻って天ぷら蕎麦を食べさせていると、またうるさいのが絡んできた。


「なんだ一号。さっさと食って歯を磨いて寝ろよ」

「そんなことより兄ちゃん! このそばってやつに、カレーをかけたらもっと美味くなると思うんだけど!」

「流石食い意地が張ってるな一号。カレー南蛮蕎麦っていうメニューが俺の世界にはあるんだぞ」

「かれーなんばんそば! 美味そうな名前だな兄ちゃん!」

「カレーも和風出汁に合わせて味を少し変えるけどそれも美味いぞ。今度作ってやるからな。今日のところはとりあえず俺の鶏天をやるから自分の席で食え」

「ありがとな兄ちゃん!」


 俺の鶏天を一号の蕎麦の上に乗せてやると、一号は急に周りをきょろきょろしだす。
 まさかこいつマヨネーズを探してるのか?


「今日はタルタルもマヨネーズも出してないぞ。蕎麦だからな」

「ちぇっ。兄ちゃんは俺と同じマヨラーなのによくマヨネーズなしでいられるよな」

「お前と一緒にするな一号。あとサクラがいないからって俺にやたらと絡んでくるのはやめろ」

「兄ちゃんとサクラ姉ちゃんと俺の三人でマヨラー同盟だろ?」

「勝手に加えるなよ……」


 俺から戦利品をゲットした一号は「おーいどこかにマヨネーズかタルタルソースは無いかー?」と聞きながらテーブルの上を探し回っている。
 俺のマジックボックスの中にはマヨネーズとタルタルソースは常備してあるが絶対に出さないようにしよう。

 ガキんちょどもが年越しそばを食い終わったころにはすでに日付が変わっていた。


「お兄ちゃん! エマちゃんが一歳になったよ!」

「まあまだ生後半年なんだけどな」

「みんなと一緒だよお兄ちゃん!」

「そうだな。みんなと一緒に年を取っていこう」

「うん!」

「っとそうだ。忘れるところだった。シル!」


 年越し蕎麦の食器を片付けていたシルを呼び止める。


「なんですかお兄様」

「お前今日で二十歳の成人だろ? これみんなで買ったんだ」


 マジックボックスから白箱を取り出してシルに渡す。
 そう。武器屋の親父に前から依頼してあって、先日受け取ってきた玉鋼で出来た脇差だ。
 俺が去年貰ったのも脇差だったので、同様の物を用意した。
 すでに成人済みだったクリスには俺とエリナとクレアからすでに魔法石を仕込んだ魔法杖を渡してある。


「あっ、これは……」

「脇差だ。武士は二本差しだからな。抜いて確かめて見ろ」


 まあ江戸時代からの風習だがな。
 白箱から脇差を取り出し、早速抜刀して刀身を眺めるシル。


「これはまた凄く美しいです!」

「刃長は一尺六寸二分。刃文は互の目ぐのめで俺の脇差と同じく作風は総州伝。魔宝石は仕込んでないけど、玉鋼で打ったものだ」

「ありがとう存じます! お兄様、エリナちゃん!」

「あとでクレアとクリスにもお礼を言っておけよ」

「はい!」


 余程うれしかったのか、小走りでクレアとクリスのもとに行き、礼を言うシル。
 礼を言い終わったあと、脇差を自分の部屋に置くためか、早速自分の部屋に戻るシル。
 時間ももう遅いのでささっとマジックボックスにぶち込んで、洗い物などは翌日に洗うことにして、シルと同じように皆自室に戻る。





「お兄様、もちごめが蒸しあがりましたよ!」

「じゃあ早速外でやるか」


 翌朝、一号の作った臼と杵で餅を搗くことになった。
 先週あたりから餅を食べたいと言われまくっていたからだ。

 ちゃんと小豆から作った餡子や、枝豆から作ったずんだあんの他、大根おろしや磯辺焼き用の甘醤油など色々用意して上で、あまり餅を気に入らなかったガキんちょ用にパスタやおにぎりなども用意する。


「お兄ちゃん、これでおもちができるの?」

「そうだぞ。まあ見てろ」


 蒸したもち米を臼に入れ、杵を使ってもち米をつぶしていく。
 ある程度まとまりが出てきたら、杵でぺったんぺったんと搗いていくのだ。
 異世界本の雑誌を見て、これをやりたいと一号が言っていたので杵を渡す。
 餅つきじゃなくて、お笑い芸人が芸を披露しているページを見せられて絶句したが。


「兄ちゃん良いぜ!」

「いいか一号! 絶対に俺が餅をひっくり返してる時に搗くなよ! 振りじゃないからな!」

「わかってるよ兄ちゃん!」

「イマイチ信用できん。が、しょうがない。行くぞ!」

「おう!」


 一号が「よいしょー!」と先端を濡らした杵で餅を搗く。一号が杵を上げた隙に、餅を真ん中に寄せ、適度に手水を使ったり、餅をひっくり返したりしていく。


「お、上手いぞ一号。あまり力を入れなくても、杵の重さで十分だからな」

「わかった!」

「ほいっと」


 手水をつけて餅を中央に寄せる。
 一号も慣れてきて大分ペースが上がってきたところで、一号があのおなじみのセリフを言い出した。


「カッコつけて怖い話を聞いても平然と振る舞ってるふりをしてる男がいるんですよ」

「なーにー! ってそれ俺だけどやっちまってないからな。というか違うから。それ芸だから」

「こうやってもちつきするんじゃないの?」

「実際は搗いてないんだよあれは」

「ふーん」


 急に恐ろしい振りをしてきた一号をなんとか黙らせて餅搗きを続ける。


「お、もういいぞ」

「結構面白かったよ兄ちゃん!」

「何言ってんだ一号。最低でもあと十臼は搗くぞ」

「えっ」


 最初に搗きあがった餅をクレアに渡す。すでにクレアには手順は説明してあるので安心だ。
 熱々の餅を受け取ったクレアは、どんどん一口大にちぎっていき、ガキんちょどもに提供する。
 ガキんちょどもはそれぞれ餡子や大根おろしなど好きなものをかけて食べていく。


「ほら一号、こんどは蒸したばかりの餅米を潰すところからやってみろ」

「兄ちゃん俺ももちを食べたいんだけど」

「男子チームでは俺とお前が一番の年長だからな。さっさと搗くぞ」

「えっえっ」


 その後は「兄ちゃんごめん許して」というまでこき使ってやった。
 シルがノリノリで一号と代わってくれたおかげで、ガキんちょどもが腹いっぱいになった上に、のし餅をストックできるまで餅を搗くことができた。


晴れ着エリナのファンアートを頂きました!
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

処理中です...