193 / 317
第九章 変わりゆくヘタレの世界
第十一話 リッターシュラーク
しおりを挟む食事が終わるころになって、アイリーンが到着する。
シルはすっかり元気になって腹いっぱい食べた後、シバ王やサクラと食後のお茶をしながら歓談している。
シバ王はやたらシルの強さを褒めていたが、実際クリスやシバ王が規格外過ぎるだけで、それ以外には無双してるんだよな。
魔導士協会の中ならシルより強いのがあと数人いるかもしれないくらいか。爺さんも強そうだし。
「閣下、遅くなりました」
「ご苦労アイリーン。食事は済んだか? まだなら用意させるが」
「いえ、済ませてまいりました。そしてこちらを」
そう言って俺の前に高級そうな箱ふたつと、布袋が置かれる。
「これは?」
「仮の騎士爵に叙爵する叙任状と、賞金の金貨十枚、そして副賞の品です」
「仮の叙任状って……。さっきクリスと話したばかりなんだが」
「多分そういう形に落ち着くだろうと思い準備いたしました」
「じゃあちわっこの方にもすでに連絡済みか」
「はい、王女殿下には内々で伝わるように手配いたしました」
「ならいいか。シバ王は明日の朝帰るそうだから、早速今渡すか。副賞の品は?」
「我が領の専属鍛冶師が打った業物の脇差です。シバ王ならお喜びになるかと思い準備させました」
もうアイリーンが領主やったほうが早いな。と思いつつ、サクラ、シルと歓談中のシバ王を呼ぶ。
ちなみにシルの賞金やら副賞はすでに渡してある。
「閣下お呼びでしょうか」
「シバ王、仮だが騎士爵に叙爵するから、叙任状を渡しておく。後日正式にラインブルク王女に騎士叙爵してもらうからそれまではファルケンブルク領内にしか効力はないけどな」
「はっ光栄至極!」
箱から取り出した仮の叙任状をシバ王に渡す。
「あと賞金の金貨十枚と副賞の脇差な。親父の打った業物だからシバ王に気に入ってもらえると思うが」
「おお! 我が愛刀を打った名工の作ですと!」
白箱を渡すと、すぐに中を確認したいと目で訴えてくるので、黙ってうなずいてやる。
そそくさと脇差を取り出し、周囲を確認して懐紙を咥えて抜刀したシバ王は、刀身を眺めて目を見開く。
ガキんちょがいるから抜かないでほしかったが、一応周囲の確認をしてたし達人っぽいから平気かな。
そう少し心配していたが、すぐに満足したのか、そそくさと納刀し、白箱に脇差を仕舞う。
「どうだシバ王」
「大変すばらしいものを頂戴いたしました。この御恩は忘れませぬ」
「いやバトルトーナメント優勝の副賞だから気にしないでくれ。あとこれが賞金な」
「かような厚遇を賜り恐悦至極でございます」
「帰りにでも何か買い物して帰ってくれ。領内で消費してくれた方がありがたいからな」
「では日本刀を購入して帰ります」
「専属になって親父の直営店の場所が変わってるからな、あとでアイリーンに確認してくれ」
「はっ」
「じゃあ親子の会話の途中ですまなかったな」
「閣下……、首打ちの儀式はされないのですか?」
「それは後日ちわっこがやるから」
「某は閣下に忠誠を誓いたいのですが」
「任命権はラインブルク王国にしかないし、すべての貴族はラインブルク王国へ忠誠を誓うものなんだが」
「是非! 騎士叙爵式を!」
「あーわかったわかった。ただしあくまでも仮だからな。後日ラインブルク王女に対してもやるんだぞ」
「御意!」
シバ王は正座すると、自身の愛刀である三日月宗近を抜刀し、俺に差し出してくる。
随分作法が違うけど、実際にはローカルで色々あったみたいだしな。まあ仮の騎士叙任式だし構わないか。シバ王自身も跪かずに正座してるし。
三日月宗近を受け取とった俺は、そのまま正座して瞑目するシバ王の首に三度鎬の部分を当てる。
「善良な人々すべてを守護すべし」
「はっ! お任せあれ! この命、閣下の御為に!」
三日月宗近をシバ王に返して、仮の騎士叙任式が終わる。
というかこの人隣国の王様なんだけどな。なんか非常に重たい宣誓をされたけどスルーだスルー。
「じゃあサクラの所に帰って良いぞ。こっちはまだアイリーンと打ち合わせがあるから」
「御意」
シバ王はそそくさと娘の元に戻り、興奮したようにサクラとシルに話しかけている。
滅茶苦茶自慢してるけど、シルは伯爵位を持ってるし、サクラも叙爵はされてないけど隣国から招へいされた技術者ということで准男爵待遇だ。
自慢してるシバ王が一番階級的にはしょぼいんだよな。
あとあまりファルケンブルクに入れ込むようだと亜人国家連合の中で内乱が起きたりしないのかね?
少なくとも亜人国家連合の代表が隣国の騎士爵に叙爵されたなんて屈辱だと言い出す輩は多いと思うんだが。
ちわっことは定期的に手紙でやり取りしてるけど、そろそろ一度王都に行かないと駄目かね。
街道整備が終わって移動距離が短縮されたし、魔導ハイAなら一日で行けるからな。
0
あなたにおすすめの小説
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。
音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、
幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。
魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。
そして再び出会う幼馴染。
彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。
もういい。
密かにやってた支援も打ち切る。
俺以外にも魔道具職人はいるさ。
落ちぶれて行く追放したパーティ。
俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる