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第一章
帝国自由都市
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朝食の席で、ゲオルグもエレオノーラも爽やかな笑顔を見せていた。私の目には、私たちが無事なことにエレオノーラは心底ほっとしたように見えた。やはり、ジークベインリードハルトで最も勢いのあるロレード家は、『次の皇帝』を決める戦いに少なからず関与しているのだろう。
ラファエルは私と熱い夜を過ごした翌日なので、すっきりとした表情で談笑している。私もラファエルと一緒にいると、結婚する前より頭がすっきりするような朝が多くなった。
「日時計はどちらから持ってきたのでしょう?庭日時計も見事でしたが、それぞれ珍しいデザインですね」
ケネス王子はさりげなくゲオルグに質問していた。
「妻の実家のロレード家からの贈り物なんですよ。わざわざ隣国から運んでくれました。近頃は機械時計が流行っていますが、なかなか趣があるでしょう?」
ゲオルグはにこやかに答えていた。
「ええ、私の実家からの贈り物ですわ。様々な国の王族や貴族と商いをしている商売の関係で、実家には常に珍しいものが集められていますのよ」
エレオノーラは微笑んだ。
「近頃、ジークベインリードハルトで採鉱や治金の仕事に従事している者は、若い女性や年老いた女性も含めると、相当な人数になると父から私はも聞きましたわ。10万人にも及ぶとか。金や銀や銅を船で諸外国に運ぶのでしょう?それは胸踊るような冒険でしょうね」
レティシアはうっとりとしたようにつぶやいた。
「商会の仕事は確かにワクワクしますわ。海を超えて異国の港まで船で運ぶなんて、刺激が大きい毎日だと思いますわ。無事に積荷が着くかどうかは運も大きいですし」
今日も髪の毛を綺麗にまとめ上げ、活力のある笑みを浮かべているエレオノーラは、快活に言葉を続けた。
「でも、貧しく生活が困っている人向けにロレード商会は社会福祉住宅を始めたのですよ。本当に貧しければ、ただ同然で住めます。私はそういった取り組みの方にトキメキを覚えるのですよ」
エレオノーラは断言した。
――ロレード家が住宅費や維持費を払う家ですって!?画期的だわ。
「たくさんあるのかしら?」
「ええ。ロウブルクにたくさんの人が住める家をロレード財団が私財を投じて作りましたのよ」
「まあ!」
「それはすごいな」
「うちの国でも始めたいくらいだ」
「妻の話は刺激的で面白いでしょう?」
私たちは口々に感嘆の声をあげて、ゲオルグも楽しそうだ。
「最近、ロレード商会は海を渡る交易だけではなく、6つの国にまたがる大きな街道を作りましたの。主に香辛料などの交易をしておりますわ。私はそういうのにも興味があったのです。けれども今は、ハイルヴェルフェ城のゲオルグのところに嫁いで本当に幸せなのですよ」
「私も幸せだよ」
顔を見合わせて微笑むエレオノーラとゲオルグの様子に思わず見惚れたが、私はリシェール伯爵の領土でも同じようなことができないかしら?と考えていた。交易、農業、宝石研鑽、鉱山、色々なもので利益を出せば、貧しい民に利益を還元することができるかもしれない。
商人の娘ながらシェルボーン伯爵家に嫁ぎ、今や伯爵夫人となったエレオノーラは、博識で楽しい話題に事欠かない人物だった。
――私も貧しい人を助けられるような取り組みに力を入れたいわ。そのためにも、何がなんでもコンラート地方まで無事に辿り着かなければならないわ。
私たちは朝食をいただいた後、お礼を言って城を去ることを告げた。俗語で書かれた物語を読む時間もなく、慌ただしい旅で非常に残念だったけれども、エレオノーラと一緒にその書籍を城の書庫に戻した。
「ちゃんと読む時間がなくて残念ですわ」
「仕方がないですわね。またハイルヴェルフェ城に立ち寄ってくださいね」
エレオノーラは名残惜しそうだった。私は彼女を抱きしめて「ありがとう」とだけ伝えた。ヒントを出してくれたことへの礼もあり、一宿一飯の恩義もある。
ジークベインリードハルト最大の商人の家に生まれた娘であるエレオノーラはそっと私を抱きしめた。
「あなたが困った時ですが、ジークベインリードハルトのロレード家の娘である私の名前を出してください。もしかすると私の名は、あなたの助けになるかもしれません」
小さな声でエレオノーラは私にささやいた。私はうなずいた。
「この城を出ると敵が襲ってくるかもしれませんわ。用心してくださいね。無事に着いたら手紙をください。鉱山運営と貧しい人を助ける住宅のことなら、私はあなたを助けることができますから」
エレオノーラの言葉に私も胸が熱くなった。前回の旅通りならば、私は明日は敵に襲われて死に至るはずだ。
「ありがとう。いつかあなたと一緒にコンラート地方で過ごしたり、ロウブルクの街を歩いたりできることを楽しみにしていますわ」
「あなたは興味がないかもしれないけれど、ファッションも私は得意なのよ。こちらを差し上げるわ。いざという時、あなたの後ろ盾にロレード家がいることを表すものよ」
私の手にそっとエレオノーラがシグネットリンクを渡してきた。私は驚いたけれども、エレオノーラの言葉には思わず嬉しくて微笑んでしまった。
交易と毛織物業をリーデンマルク川と利用してやってはどうだろうと考えたことをふと思い出したのだ。ジークベインリードハルトでは、加工した布でドレスを作るのが大流行りだ。エレオノーラは私にとって非常に興味深い友人になりそうだ。
一晩城の厩舎で休ませてもらってすっかり元気になった馬の手綱を引いて、私たちと騎士たちはゆっくりと岩山を降り始めた。急な斜面のために馬で降りるのは危険だ。ベアトリスとジュリアも一緒だ。
途中で、麓の村から食料を仕入れてきたらしいハイルヴェルフェ城の料理番たちとすれ違った。時間をかけて、私たちは岩山の入り口で待つ門番のところまで戻った。
レティシアの部屋の窓から、私たちは目的の岩を確認済だった。切り立つ岩山の麓に大きな岩が二つあり、ハイルヴェルフェ城の庭で見た他の岩からすると、位置関係はオリオン座のストーンサークルに見えることを確認済だった。
門番が門を開けると、リゲルの位置にあると思われる岩をまっしぐらに目指すのだ。敵がいないことを祈るが、おそらく昨日の敵がまだ潜んでいるだろう。
唯一の救いは、敵は宝石回収ルートの順番性を知らないので、次に私たちがどこに行くかはわかっていないことだ。全ての候補の場所に分散して待機しなければならないはずだ。そもそも、敵は聖イーブル女子修道院にもヴィッターガッハ家にもまだいなかった。昨日襲ってきた敵も、ブロワの街に比べたら少なかったと思う。
私たち全員が騎士も侍女も含めて、修道院長にいただいた『毒消し草』を飲んでいた。これから行う宝石回収の際に前回のような毒が散布されている可能性もあるからだ。
門が開いた。
「行くわよっ!」
レティシアが号令をかけて真っ先に飛び出した。すぐ後をラファエルが追う。私、ケネス王子と続いて騎士たちも続いた。ジュリアとベアトリスも続いてくるだろう。
岩まではすぐのはずだ。敵はまだ襲ってこない。私たちの馬の蹄の音だけが岩山のすぐそばの道に響いた。
目の前を行くレティシアが軽やかに馬を飛び降りて、手綱をそばの木に括りつけた。目的の岩まで用心しながら速やかに移動しているのが見える。彼女は剣を構えている。彼女にラファエルも続いた。
次の瞬間、私の目に二人が敵に襲いかかられるのが見えて、凍りつきそうになった。私が前回死にいたったのは明日だ。私の代わりに二人が死んでしまったらどうしようと思い、恐怖で体がすくんだ。
――まずいわっ!
しかし、皇帝の花嫁になるべく育てられたレティシアは圧倒的な強さで敵をなぎ倒した。ラファエルも強烈な強さを発揮した。ケネス王子も続いた。
私も馬を飛び降りようとして、別のところに潜んでいた敵がケネス王子に後ろから走り寄るのを見かけた。私はとっさに馬を降りるのをやめて、その敵の後ろから馬ごと飛びかかって転ばせた。
私がヒックリ返した敵は足を引きずってそのまま逃げて行った。敵の人数は少なく、あっという間にラファエルとレティシアに制圧された。
「あなたたち、本当に見事だわ」
私はレティシアとラファエルに感嘆の声を上げた。敵を倒したことを喜ぶ間もなく、私たちは目的の大きな岩に駆け寄り、その岩の下に隠してあるはずの宝石を探して回った。
「見て!」
私は土の中から不自然に飛び出している大きな石をどかしたところ、石の下に金の箱を見つけて叫んだ。これまでと違って土の中に埋めてあるので、腐食しない金の入れ物を選んだのかもしれない。
箱を開けると、布に包まれた宝石が出てきた。今まで見つかった宝石と大きさも形も非常に似ている。
「『大陸の岩に眠る石を見つけよ』が正しかったのね!」
レティシアもケネス王子もラファエルも興奮していた。すぐにラファエルが王冠を取り出して、6番目の穴に宝石をはめ込んだ。
「ピッタリだ。回すとどうなるか……」
ラファエルがそっと6番目の宝石を回すと、王冠に文字が浮かび上がった。
「古代語の座標だ」
ラファエルはそうつぶやいた。敵に聞かれるかもしれないので、ラファエルは紙とペンを取り出して古代語を素早く訳して書いた。
ラファエルが訳した座標と地図を無言で確かめたケネス王子は、紙に「帝国自由都市」とだけ書いた。
私たちは衝撃のあまりに固まった。隣国ジークベインリードハルトの皇帝が治める「帝国自由都市」がいよいよ第7の宝石のありかだとわかり、予想を覆す展開に私たちは息を呑んだ。
――ラファエルとレティシアの生まれた国に行くのだわ。
私は明日を無事に生き延びられるのか、一気に不安を感じた。
――死神さま。陛下の国だけではなく、大国ジークベインリードハルトを経由してコンラート地方まで行かなければならなくなりました……それでも必ず生き延びますので、どうかそこでお待ちください!
ラファエルは私と熱い夜を過ごした翌日なので、すっきりとした表情で談笑している。私もラファエルと一緒にいると、結婚する前より頭がすっきりするような朝が多くなった。
「日時計はどちらから持ってきたのでしょう?庭日時計も見事でしたが、それぞれ珍しいデザインですね」
ケネス王子はさりげなくゲオルグに質問していた。
「妻の実家のロレード家からの贈り物なんですよ。わざわざ隣国から運んでくれました。近頃は機械時計が流行っていますが、なかなか趣があるでしょう?」
ゲオルグはにこやかに答えていた。
「ええ、私の実家からの贈り物ですわ。様々な国の王族や貴族と商いをしている商売の関係で、実家には常に珍しいものが集められていますのよ」
エレオノーラは微笑んだ。
「近頃、ジークベインリードハルトで採鉱や治金の仕事に従事している者は、若い女性や年老いた女性も含めると、相当な人数になると父から私はも聞きましたわ。10万人にも及ぶとか。金や銀や銅を船で諸外国に運ぶのでしょう?それは胸踊るような冒険でしょうね」
レティシアはうっとりとしたようにつぶやいた。
「商会の仕事は確かにワクワクしますわ。海を超えて異国の港まで船で運ぶなんて、刺激が大きい毎日だと思いますわ。無事に積荷が着くかどうかは運も大きいですし」
今日も髪の毛を綺麗にまとめ上げ、活力のある笑みを浮かべているエレオノーラは、快活に言葉を続けた。
「でも、貧しく生活が困っている人向けにロレード商会は社会福祉住宅を始めたのですよ。本当に貧しければ、ただ同然で住めます。私はそういった取り組みの方にトキメキを覚えるのですよ」
エレオノーラは断言した。
――ロレード家が住宅費や維持費を払う家ですって!?画期的だわ。
「たくさんあるのかしら?」
「ええ。ロウブルクにたくさんの人が住める家をロレード財団が私財を投じて作りましたのよ」
「まあ!」
「それはすごいな」
「うちの国でも始めたいくらいだ」
「妻の話は刺激的で面白いでしょう?」
私たちは口々に感嘆の声をあげて、ゲオルグも楽しそうだ。
「最近、ロレード商会は海を渡る交易だけではなく、6つの国にまたがる大きな街道を作りましたの。主に香辛料などの交易をしておりますわ。私はそういうのにも興味があったのです。けれども今は、ハイルヴェルフェ城のゲオルグのところに嫁いで本当に幸せなのですよ」
「私も幸せだよ」
顔を見合わせて微笑むエレオノーラとゲオルグの様子に思わず見惚れたが、私はリシェール伯爵の領土でも同じようなことができないかしら?と考えていた。交易、農業、宝石研鑽、鉱山、色々なもので利益を出せば、貧しい民に利益を還元することができるかもしれない。
商人の娘ながらシェルボーン伯爵家に嫁ぎ、今や伯爵夫人となったエレオノーラは、博識で楽しい話題に事欠かない人物だった。
――私も貧しい人を助けられるような取り組みに力を入れたいわ。そのためにも、何がなんでもコンラート地方まで無事に辿り着かなければならないわ。
私たちは朝食をいただいた後、お礼を言って城を去ることを告げた。俗語で書かれた物語を読む時間もなく、慌ただしい旅で非常に残念だったけれども、エレオノーラと一緒にその書籍を城の書庫に戻した。
「ちゃんと読む時間がなくて残念ですわ」
「仕方がないですわね。またハイルヴェルフェ城に立ち寄ってくださいね」
エレオノーラは名残惜しそうだった。私は彼女を抱きしめて「ありがとう」とだけ伝えた。ヒントを出してくれたことへの礼もあり、一宿一飯の恩義もある。
ジークベインリードハルト最大の商人の家に生まれた娘であるエレオノーラはそっと私を抱きしめた。
「あなたが困った時ですが、ジークベインリードハルトのロレード家の娘である私の名前を出してください。もしかすると私の名は、あなたの助けになるかもしれません」
小さな声でエレオノーラは私にささやいた。私はうなずいた。
「この城を出ると敵が襲ってくるかもしれませんわ。用心してくださいね。無事に着いたら手紙をください。鉱山運営と貧しい人を助ける住宅のことなら、私はあなたを助けることができますから」
エレオノーラの言葉に私も胸が熱くなった。前回の旅通りならば、私は明日は敵に襲われて死に至るはずだ。
「ありがとう。いつかあなたと一緒にコンラート地方で過ごしたり、ロウブルクの街を歩いたりできることを楽しみにしていますわ」
「あなたは興味がないかもしれないけれど、ファッションも私は得意なのよ。こちらを差し上げるわ。いざという時、あなたの後ろ盾にロレード家がいることを表すものよ」
私の手にそっとエレオノーラがシグネットリンクを渡してきた。私は驚いたけれども、エレオノーラの言葉には思わず嬉しくて微笑んでしまった。
交易と毛織物業をリーデンマルク川と利用してやってはどうだろうと考えたことをふと思い出したのだ。ジークベインリードハルトでは、加工した布でドレスを作るのが大流行りだ。エレオノーラは私にとって非常に興味深い友人になりそうだ。
一晩城の厩舎で休ませてもらってすっかり元気になった馬の手綱を引いて、私たちと騎士たちはゆっくりと岩山を降り始めた。急な斜面のために馬で降りるのは危険だ。ベアトリスとジュリアも一緒だ。
途中で、麓の村から食料を仕入れてきたらしいハイルヴェルフェ城の料理番たちとすれ違った。時間をかけて、私たちは岩山の入り口で待つ門番のところまで戻った。
レティシアの部屋の窓から、私たちは目的の岩を確認済だった。切り立つ岩山の麓に大きな岩が二つあり、ハイルヴェルフェ城の庭で見た他の岩からすると、位置関係はオリオン座のストーンサークルに見えることを確認済だった。
門番が門を開けると、リゲルの位置にあると思われる岩をまっしぐらに目指すのだ。敵がいないことを祈るが、おそらく昨日の敵がまだ潜んでいるだろう。
唯一の救いは、敵は宝石回収ルートの順番性を知らないので、次に私たちがどこに行くかはわかっていないことだ。全ての候補の場所に分散して待機しなければならないはずだ。そもそも、敵は聖イーブル女子修道院にもヴィッターガッハ家にもまだいなかった。昨日襲ってきた敵も、ブロワの街に比べたら少なかったと思う。
私たち全員が騎士も侍女も含めて、修道院長にいただいた『毒消し草』を飲んでいた。これから行う宝石回収の際に前回のような毒が散布されている可能性もあるからだ。
門が開いた。
「行くわよっ!」
レティシアが号令をかけて真っ先に飛び出した。すぐ後をラファエルが追う。私、ケネス王子と続いて騎士たちも続いた。ジュリアとベアトリスも続いてくるだろう。
岩まではすぐのはずだ。敵はまだ襲ってこない。私たちの馬の蹄の音だけが岩山のすぐそばの道に響いた。
目の前を行くレティシアが軽やかに馬を飛び降りて、手綱をそばの木に括りつけた。目的の岩まで用心しながら速やかに移動しているのが見える。彼女は剣を構えている。彼女にラファエルも続いた。
次の瞬間、私の目に二人が敵に襲いかかられるのが見えて、凍りつきそうになった。私が前回死にいたったのは明日だ。私の代わりに二人が死んでしまったらどうしようと思い、恐怖で体がすくんだ。
――まずいわっ!
しかし、皇帝の花嫁になるべく育てられたレティシアは圧倒的な強さで敵をなぎ倒した。ラファエルも強烈な強さを発揮した。ケネス王子も続いた。
私も馬を飛び降りようとして、別のところに潜んでいた敵がケネス王子に後ろから走り寄るのを見かけた。私はとっさに馬を降りるのをやめて、その敵の後ろから馬ごと飛びかかって転ばせた。
私がヒックリ返した敵は足を引きずってそのまま逃げて行った。敵の人数は少なく、あっという間にラファエルとレティシアに制圧された。
「あなたたち、本当に見事だわ」
私はレティシアとラファエルに感嘆の声を上げた。敵を倒したことを喜ぶ間もなく、私たちは目的の大きな岩に駆け寄り、その岩の下に隠してあるはずの宝石を探して回った。
「見て!」
私は土の中から不自然に飛び出している大きな石をどかしたところ、石の下に金の箱を見つけて叫んだ。これまでと違って土の中に埋めてあるので、腐食しない金の入れ物を選んだのかもしれない。
箱を開けると、布に包まれた宝石が出てきた。今まで見つかった宝石と大きさも形も非常に似ている。
「『大陸の岩に眠る石を見つけよ』が正しかったのね!」
レティシアもケネス王子もラファエルも興奮していた。すぐにラファエルが王冠を取り出して、6番目の穴に宝石をはめ込んだ。
「ピッタリだ。回すとどうなるか……」
ラファエルがそっと6番目の宝石を回すと、王冠に文字が浮かび上がった。
「古代語の座標だ」
ラファエルはそうつぶやいた。敵に聞かれるかもしれないので、ラファエルは紙とペンを取り出して古代語を素早く訳して書いた。
ラファエルが訳した座標と地図を無言で確かめたケネス王子は、紙に「帝国自由都市」とだけ書いた。
私たちは衝撃のあまりに固まった。隣国ジークベインリードハルトの皇帝が治める「帝国自由都市」がいよいよ第7の宝石のありかだとわかり、予想を覆す展開に私たちは息を呑んだ。
――ラファエルとレティシアの生まれた国に行くのだわ。
私は明日を無事に生き延びられるのか、一気に不安を感じた。
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