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第22話 俺は僕で、僕が俺
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~織原朔真視点~
昨日の榊さんと神楽坂さんとのコラボでチャンネル登録者数が5万人にまで増えた。榊さんも神楽坂さんも100万人を超えるVチューバーだ。コラボ配信の最大同時接続数も1万人にのぼる。多くの人が昨日のコラボ配信を観てくれたことがわかり僕も嬉しくなる。もしかしたら周囲にいる人達の僕を見る目も変わるかもしれない。
僕は教室の自席から周囲を窺った。
何も変わらない日常の風景が広がっているだけだった。
そうだ。皆はエドヴァルドに関心があるのであって僕ではない。
僕はそれを思い出すと、隣の席の音咲さんと目があった。音咲さんは僕と目が合うと、その魅力的な唇をムズムズとさせる。
そうだ。僕は彼女に昨日のことでお礼を言わなければならない。僕の代わりに自分が犠牲となって先生の前へ出てくれたのだ。
──お礼しなきゃ…しかしどうやって?
僕が声を出せば彼女にエドヴァルドであると気付かれるかもしれないのだ。そんなことを考えていた次の瞬間、彼女の取り巻きであるギャルが僕と音咲さんとの間に割って入り、僕に向かって告げる。
「何見てんだよ陰キャ!!」
僕はすぐに正面に向き直り、ガッカリしたように机に突っ伏した。
──チャンネル登録者が増えても、誰も僕を見る目は変わっていなかった。だけどそれで良い……あの時の同情する目を、お前は可哀想な奴だという目を向けられているよりはマシだ。
あの目を向けられると自分がそうならなくてはならないような気分になる。あの時のことを思うと胸が締め付けられ、ドクンと心臓が跳ねる。そして血の気がサァっと引いていくように身体中の体温が低下するのを感じる。
僕は過去の嫌な記憶を無理矢理しまいこみ、目を瞑る。日頃の疲れなのか僕はいつの間にか眠っていた。
◇ ◇ ◇
「おい、起きろよ、織原朔真」
低音のよく響く声が聞こえる。僕は目を覚ました。
闇に包まれた空間、足元を覗くと自分が地に足をつけているのか、それとも浮いているのか闇のせいでわからない。
僕は視線を正面に向け直すと、そこに佇む者と目があった。僕は驚き、一歩後退る。そこにはVチューバー、エドヴァルド・ブレインがいたのだ。
僕はエドヴァルドを指差すと声を放つ。
「お、お前は……」
エドヴァルドは配信のテンションで応えた。
「そう構えんなよ!お前は俺だろ?いや俺がお前なのか?いずれにしろもうすぐだな?」
「な、なにが!?」
「俺がお前になるんだ」
僕の鼓動が跳ねて、ねっとりとした汗が額に浮き始める。今の一言で僕は理解した。エドヴァルドは僕なのだから。彼が僕を乗っ取ろうとしている。僕は絶句していると彼は続けた。
「その兆候はもう知ってるだろ?」
僕は満員電車の中での、女子高生の痴漢現場を思い出す。
「あれは…お前が……」
「そう、スッとしただろ?自分を解放する瞬間ってのはいつだって気持ちが良いものだ」
「や、やめろ!!お前はネットの中の存在だ。現実世界に出てくるな!!」
「ネットとリアルは同じ現実──」
「やめろ!それ以上何も言うな!!」
僕はエドヴァルドの言葉を手を乱雑に振りながら遮る。エドヴァルドは少し呆れた表情をして肩を竦めた。
「わかったよ、今のお前に何か言っても伝わんないだろうからな。ただ1つ言えることとしたら俺のことを信じろ。俺のことを信じるってことは自分を信じるってことだからな」
◇ ◇ ◇
「──!?」
僕の意識がいつもと変わらない教室に戻る。いや無理矢理戻されたのだ。僕の頭目掛けて何かが投げられたから。
僕は机に突っ伏すのを止めて、起き上がる。もう日本史の授業が始まっていて、先生が話していた。
僕は自分目掛けて投げられたモノを拾い上げる。綺麗に折り畳まれた小さい紙だ。それを持って、投げられた方向である隣の席に視線を向けた。
音咲さんが、その紙を指差して、
『ひ・ら・い・て』
と声を出さずに口を大袈裟に開けて伝えてくる。
疑問に思った僕だが、折り畳まれた紙を丁寧に開く。するとそこにはカタカナでこう書いてあった。
『ゴメンナサイ』
昨日の榊さんと神楽坂さんとのコラボでチャンネル登録者数が5万人にまで増えた。榊さんも神楽坂さんも100万人を超えるVチューバーだ。コラボ配信の最大同時接続数も1万人にのぼる。多くの人が昨日のコラボ配信を観てくれたことがわかり僕も嬉しくなる。もしかしたら周囲にいる人達の僕を見る目も変わるかもしれない。
僕は教室の自席から周囲を窺った。
何も変わらない日常の風景が広がっているだけだった。
そうだ。皆はエドヴァルドに関心があるのであって僕ではない。
僕はそれを思い出すと、隣の席の音咲さんと目があった。音咲さんは僕と目が合うと、その魅力的な唇をムズムズとさせる。
そうだ。僕は彼女に昨日のことでお礼を言わなければならない。僕の代わりに自分が犠牲となって先生の前へ出てくれたのだ。
──お礼しなきゃ…しかしどうやって?
僕が声を出せば彼女にエドヴァルドであると気付かれるかもしれないのだ。そんなことを考えていた次の瞬間、彼女の取り巻きであるギャルが僕と音咲さんとの間に割って入り、僕に向かって告げる。
「何見てんだよ陰キャ!!」
僕はすぐに正面に向き直り、ガッカリしたように机に突っ伏した。
──チャンネル登録者が増えても、誰も僕を見る目は変わっていなかった。だけどそれで良い……あの時の同情する目を、お前は可哀想な奴だという目を向けられているよりはマシだ。
あの目を向けられると自分がそうならなくてはならないような気分になる。あの時のことを思うと胸が締め付けられ、ドクンと心臓が跳ねる。そして血の気がサァっと引いていくように身体中の体温が低下するのを感じる。
僕は過去の嫌な記憶を無理矢理しまいこみ、目を瞑る。日頃の疲れなのか僕はいつの間にか眠っていた。
◇ ◇ ◇
「おい、起きろよ、織原朔真」
低音のよく響く声が聞こえる。僕は目を覚ました。
闇に包まれた空間、足元を覗くと自分が地に足をつけているのか、それとも浮いているのか闇のせいでわからない。
僕は視線を正面に向け直すと、そこに佇む者と目があった。僕は驚き、一歩後退る。そこにはVチューバー、エドヴァルド・ブレインがいたのだ。
僕はエドヴァルドを指差すと声を放つ。
「お、お前は……」
エドヴァルドは配信のテンションで応えた。
「そう構えんなよ!お前は俺だろ?いや俺がお前なのか?いずれにしろもうすぐだな?」
「な、なにが!?」
「俺がお前になるんだ」
僕の鼓動が跳ねて、ねっとりとした汗が額に浮き始める。今の一言で僕は理解した。エドヴァルドは僕なのだから。彼が僕を乗っ取ろうとしている。僕は絶句していると彼は続けた。
「その兆候はもう知ってるだろ?」
僕は満員電車の中での、女子高生の痴漢現場を思い出す。
「あれは…お前が……」
「そう、スッとしただろ?自分を解放する瞬間ってのはいつだって気持ちが良いものだ」
「や、やめろ!!お前はネットの中の存在だ。現実世界に出てくるな!!」
「ネットとリアルは同じ現実──」
「やめろ!それ以上何も言うな!!」
僕はエドヴァルドの言葉を手を乱雑に振りながら遮る。エドヴァルドは少し呆れた表情をして肩を竦めた。
「わかったよ、今のお前に何か言っても伝わんないだろうからな。ただ1つ言えることとしたら俺のことを信じろ。俺のことを信じるってことは自分を信じるってことだからな」
◇ ◇ ◇
「──!?」
僕の意識がいつもと変わらない教室に戻る。いや無理矢理戻されたのだ。僕の頭目掛けて何かが投げられたから。
僕は机に突っ伏すのを止めて、起き上がる。もう日本史の授業が始まっていて、先生が話していた。
僕は自分目掛けて投げられたモノを拾い上げる。綺麗に折り畳まれた小さい紙だ。それを持って、投げられた方向である隣の席に視線を向けた。
音咲さんが、その紙を指差して、
『ひ・ら・い・て』
と声を出さずに口を大袈裟に開けて伝えてくる。
疑問に思った僕だが、折り畳まれた紙を丁寧に開く。するとそこにはカタカナでこう書いてあった。
『ゴメンナサイ』
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