【完結】人前で話せない陰キャな僕がVtuberを始めた結果、クラスにいる国民的美少女のアイドルにガチ恋されてた件

中島健一

文字の大きさ
23 / 185

第23話 ジョン・ハンター

しおりを挟む
~音咲華多莉視点~

 昨日のエドヴァルド様のコラボ配信で、とうとう彼がメジャーデビューを果たしたのだと私は思った。今までがインディーズなのかといえば違う気もするが、大手事務所『LIVER・A・LIVE』通称『ラバラブ』に所属するVチューバー2人の配信に出たのだからそう言っても差し障りないだろう。

 私がエドヴァルド様が好きだからと言って、他の男性ライバーも好きだということではない。しかし彼がどういう道を辿れば有名になるのか、どういうVチューバーが今後彼の前に立ちはだかるのか色々と調べたことならあった。

 その内の2人が榊くんと神楽坂くんだ。特に神楽坂くんとは一緒にコラボ配信をすればもっとエドヴァルド様が有名になるのではないかと思った。相性が良さそうだと個人的には思っている。

 昨日の配信は私が思い描いたまさに理想のコラボとなった。同接数も悪くなかった。内容も申し分ない。朝になると切り抜き動画が幾つも上げられている。

 自分の推しが有名になっていく様を観て、私も頑張らなくてはと思えた。

 ──私ももっと有名になってお父さんに認めてもらうんだ!!

 そう意気込んだ私は、目の前にあるミッションに挑む。それは現在私の隣に座っている織原朔真に謝罪することだ。昨日は感謝しかできていない。

 ──途中で先生達が乱入して、あんなことに……

 昨日の体育館裏でのあんなことを思い出した私は顔を少し赤らめた。

 そんな時、織原と目があった。

 ──ぁ…ぇと……謝らなきゃ!!

 私は唇をムズムズと動かしたが声はおろか口を開くことすらできなかった。他者に謝る。それは多くの現場、収録の際にやってきたことだ。しかしそれはアイドルとしての私が謝るのだ。ララになった時は謝るようなことをまずしないし。つまり、等身大の自分、だらしなくてプライドの高い本当の自分が謝罪をするのだ。なかなかできないのは当然なのかもしれない。

 ──そ、そうだ!周りに人がいるから、こんな状況で謝るのは変だよね!?だとしたらまた体育館裏に呼び出して……

 また先送りにしていることに自分を卑下しそうになるが、私のこの考えには少しだけ正当性がある。しかしその時美優が私と織原の間に入って声を発する。

「何見てんだよ陰キャ!!」

 私は心の中で嘆いた。

 ──あぁぁぁぁ!!!謝りづらくなるからやめてぇぇぇ!!!

 美優と茉優は私を守ろうとしている。決して悪い子達ではないのだけれど、もしかしたら私を守ろうとするせいで敵を作ってしまう恐れもあるのではないかとも思った。

 私は肩を落とすと、美優と茉優の間から織原朔真が机に突っ伏すのが見えた。

 始業のチャイムが鳴り、1時間目の日本史の授業が始まる。

 教壇に宮台先生が立って喋っているのに、織原はまだ机に突っ伏したままだ。

 ──寝てるのかな?

『謝るのは早ければ早いほど良い』

 エドヴァルド様の言葉が頭に過ると、私は行動に移す決心をした。

 私はまた体育館裏に呼び出そうと手紙を書こうとしたがしかし、昨日の一件で自分の筆跡を残す手紙はよくない手段なのではないかと思った。

 ──だとしたら……あ!!

 私は閃いた。この前のイタコ探偵の撮影で怪文書を読むシーンを思い出す。

 怪文書に記されている文字は定規を使って誰が書いたモノなのかわからないようになっていた。直線が多く、曲線が少ないカタカナで書かれてたっけ?

 よし!と私は意気込むと、ペンケースから定規を取り出して文字を記す。

『ゴメンナサイ』

 ──できた!!なんだか犯行予告みたいな雰囲気だけど、きっとこれで伝わる!!

 私は謝罪を記した紙を綺麗に折り畳み、机に突っ伏したまま寝ている織原朔真に向かって投げた。

 見事彼の頭部に命中する。

 彼は起き上がり、授業が既に始まっていることに少しだけ驚いて、私の投げた手紙を手にした。こちらに視線を向けてきたので、私はドキドキし始める。まるでエドヴァルド様の配信にコメントをするようなドキドキだった。失礼に当たらないように、言葉を選びながら書くコメント。手紙を開くよう──授業中なので──声を出さないように口の形だけで伝える。

『ひ・ら・い・て』

 伝わったのか彼は手紙を丁寧な手付きで開いた。

 ──こ、これでミッション達成だ……

 しかし私の予想を裏切るように彼は手紙を読んだ後に、私に向かって首をかしげ始めた。

 血の気が引いていくような感覚におちいる。

 ──もしかしてコイツ、私が何に対して謝ってるかわかってない!?

 織原は手紙を私に向かって開き、指差してもう一度首をかしげる。

 ──はぁ!?私がこんなに苦心してるっていうのにコイツはぁぁぁぁ!!?

 私は自分の机に向き直り、定規を使ってまた文字を書いた。

『ホテルノケン』

 書き終えた私は、その内容を客観的に見るとヤバい気がしてきた。

 ──なんかいかがわしさが際立つ……

 もしこれを投げるところを日本史の宮台先生に見られて、皆の前で読み上げられたら私はパパ活をしてるんじゃないかと疑われるかもしれない。

 私は『ホテルノケン』と書かれた手紙をその場で開いて織原朔真に読ませようとしたがその瞬間、教室の電気が落とされる。

「えぇ~、今から杉田玄白についてよくまとめられた動画を流すから、電気消すよ~」

 先生のその言葉に生徒達は色めき立つ。

「おい!寝るんじゃないぞ!既に寝てる奴もいるから起こしてね~!全員起きたら動画を流すよ~~!!」

 生徒達は寝ている者を起こす。その間に日本史の先生は動画の説明をする。

「杉田玄白はターヘル・アナトミアという……あぁ、杉田玄白で思い出したけどその時世界ではジョン・ハンターっていう面白い医者がいてぇ……」

 話がよく脱線するのがこの先生、宮台先生の特徴だが、そんな悠長なことを思っている暇はない。

 ──織原朔真にちゃんと説明しないと……

 電気を消され手紙を封じられた。残るはジェスチャーしかない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル

諏訪錦
青春
アルファポリスから書籍版が発売中です。皆様よろしくお願いいたします! 6月中旬予定で、『クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル』のタイトルで文庫化いたします。よろしくお願いいたします! 間久辺比佐志(まくべひさし)。自他共に認めるオタク。ひょんなことから不良たちに目をつけられた主人公は、オタクが高じて身に付いた絵のスキルを用いて、グラフィティライターとして不良界に関わりを持つようになる。 グラフィティとは、街中にスプレーインクなどで描かれた落書きのことを指し、不良文化の一つとしての認識が強いグラフィティに最初は戸惑いながらも、主人公はその魅力にとりつかれていく。 グラフィティを通じてアンダーグラウンドな世界に身を投じることになる主人公は、やがて夜の街の代名詞とまで言われる存在になっていく。主人公の身に、果たしてこの先なにが待ち構えているのだろうか。 書籍化に伴い設定をいくつか変更しております。 一例 チーム『スペクター』       ↓    チーム『マサムネ』 ※イラスト頂きました。夕凪様より。 http://15452.mitemin.net/i192768/

【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。

東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」 ──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。 購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。 それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、 いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!? 否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。 気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。 ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ! 最後は笑って、ちょっと泣ける。 #誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

隣の席のクールな銀髪美少女、俺にだけデレるどころか未来の嫁だと宣言してきた

夏見ナイ
恋愛
平凡な高校生、相沢優斗。彼の隣の席は『氷の女王』と噂のクールな銀髪美少女、雪城冬花。住む世界が違うと思っていたが、ある日彼女から「私はあなたの未来の妻です」と衝撃の告白を受ける。 その日から、学校では鉄壁の彼女が、二人きりになると「未来では当然です」と腕を組み、手作り弁当で「あーん」を迫る超絶甘々なデレモードに! 戸惑いながらも、彼女の献身的なアプローチに心惹かれていく優斗。これは未来で結ばれる運命の二人が、最高の未来を掴むため、最高の恋をする糖度MAXの青春ラブコメディ。

俺をフッた幼馴染が、トップアイドルになって「もう一度やり直したい」と言ってきた

夏見ナイ
恋愛
平凡な大学生・藤堂蓮には忘れられない過去がある。高校時代、告白した幼馴染の星宮瑠奈に「アイドルになるから」とこっ酷くフラれたことだ。 数年後、瑠奈は国民的アイドル『LUNA』として輝いていた。遠い世界の住人になった彼女との再会なんて、あるはずもなかった――そう、変装した彼女が俺の前に現れ、「もう一度やり直したい」と泣きつくまでは。 トップアイドルの立場を使い強引に迫る元幼馴染と、過去の傷。揺れ動く俺の日常を照らしてくれたのは、俺の才能を信じてくれる後輩・朝霧陽葵の存在だった。 俺をフッた幼馴染か、俺を支える後輩か。過去の清算と未来の選択を描く、ほろ苦くも甘い、逆転ラブコメディ、開幕。

10年ぶりに再会した幼馴染と、10年間一緒にいる幼馴染との青春ラブコメ

桜庭かなめ
恋愛
 高校生の麻丘涼我には同い年の幼馴染の女の子が2人いる。1人は小学1年の5月末から涼我の隣の家に住み始め、約10年間ずっと一緒にいる穏やかで可愛らしい香川愛実。もう1人は幼稚園の年長組の1年間一緒にいて、卒園直後に引っ越してしまった明るく活発な桐山あおい。涼我は愛実ともあおいとも楽しい思い出をたくさん作ってきた。  あおいとの別れから10年。高校1年の春休みに、あおいが涼我の家の隣に引っ越してくる。涼我はあおいと10年ぶりの再会を果たす。あおいは昔の中性的な雰囲気から、清楚な美少女へと変わっていた。  3人で一緒に遊んだり、学校生活を送ったり、愛実とあおいが涼我のバイト先に来たり。春休みや新年度の日々を通じて、一度離れてしまったあおいとはもちろんのこと、ずっと一緒にいる愛実との距離も縮まっていく。  出会った早さか。それとも、一緒にいる長さか。両隣の家に住む幼馴染2人との温かくて甘いダブルヒロイン学園青春ラブコメディ!  ※特別編6が完結しました!(2026.1.21)  ※小説家になろう(N9714HQ)とカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録や感想をお待ちしております。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

処理中です...