177 / 185
第177話 夢
しおりを挟む
~音咲華多莉視点~
エドヴァルド様が織原だった。
彼の歌を聴きながら、込み上げてくる想いが原動力となり、私の足を動かす。疲れなんて忘れてしまう。
お父さんはエドヴァルド様の歌声に足を止めている。
私は走りながら感じていた。今までの織原と今までのエドヴァルド様が私の中で一致していくのを。
あの発言も、この発言も。
全部学校生活やそれ以外で織原が感じて来たことをエドヴァルド様は言葉にしている。
『裏表あるなんて別にふつーじゃないっすか?』
織原がエドヴァルド様だった。
『ここまで活動できるのは音咲さんのような昔から観て頂いてる方達のおかげだと思っていて』
私は走る。
『この人となら弱さを共有できるかもってそう感じた時に、魅力を感じた』
風をきって走った。
『実はさ、今日友達が落ち込んでて、俺その友達に何にも言ってあげられなかったんだよね』
初めて歌枠をとった配信での言葉。あれは私に対しての言葉だった。そして今、また私の為に歌ってくれている。
──文句を言ってやりたい。今まで黙っていたことに多少怒りも湧いてくる。たけど、今一番伝えたいのは……
私に驚くたくさんの人と生徒達とすれ違いながら装飾の施された校門をくぐった。
──伝えたい言葉は……
体育館の舞台袖に私は到着した。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
愛美ちゃんが到着した私に駆け寄るが、私は暗い舞台袖から光るステージの中央で歌うエドヴァルド様である、織原朔真を見て言った。
「今の私がいるのは、あなたのおかげだよ……」
──────────────────────────────────────────────────
~織原朔真視点~
2番も終わり、最後のサビに行く間のブリッジが始まる。盛り上がるギターソロに僕は合わせながらファルセットとフェイクを織り混ぜた。それに合わせるように観客が盛り上がる。踊り出す生徒に、いつもしかめっ面の教師も笑顔で僕の歌を聴いていてくれている。
最後のサビに入った。
盛り上がったブリッジが静まり、手拍子だけでリズムを刻む。僕はそのリズムに合わせてマイクに歌声を乗せた。その時観客の殆どがその手拍子に同調して手を叩く、あの鏡三さんですら手を叩いてくれていたように見える。
そしてもう一度、ドラム、シンセサイザー、ギター、ベースが入り込み、最後のサビに入った。その時僕は熱狂する観客達の後ろに信じられないものを見てとる。母さんと父さんと妹の萌を見つけたのだ。3人はとても仲良さそうに身体を寄せ合い、僕に微笑みかける。
歌うことはやめなかった。その光景をいつまでも見ている為には、歌を止めてはいけないと思ったからだ。
胸一杯に心地のよい温かい感情が広がった。それは涙となって目から溢れた。その時ちょうど最後のサビを歌い終えた。
フェードアウトしていく音楽と共に、僕の家族達が消えていく。
──待って!!まだ行かないで!!父さん!母さん!!萌……
僕の想いをかき消すように、観客達が盛大な拍手を僕に送った。
魔法が解けた。
すると僕の心を二分するように大きく心臓が脈打つと同時に、激しい動悸が僕を襲った。
「ぅっ!!」
吐き気と目眩に襲われた僕は、舞台袖を見た。音咲さんがいる。苦しむ僕を心配そうに見つめていた。音咲さんを見ると、少しだけ楽になる。僕は最後の力を振り絞るようにノソノソと舞台袖へと戻った。
観客から僕が見えなくなるところまで来ると一ノ瀬さんと薙鬼流が僕を支えようと駆け寄る。
「先輩!?」
「織原君!?」
僕は彼女達の腕の中に体重を預けた。そして音咲さんが近付いてくる。
「ありがとう……」
僕からマイクを受け取り、輝くステージの中へ入っていった。再び拍手が聞こえた。ゲリラLIVEが始まったのだ。
僕はその場に横になる。
心臓の音がうるさいくらい鳴っていた。
「大丈夫ですか!?」
「大丈夫!?」
一ノ瀬さんと薙鬼流の声が遠くから聞こえるような気がした。そして音咲さんの歌が聴こえてくる。まるで子守り歌のように僕を意識の底へと誘った。
エドヴァルド様が織原だった。
彼の歌を聴きながら、込み上げてくる想いが原動力となり、私の足を動かす。疲れなんて忘れてしまう。
お父さんはエドヴァルド様の歌声に足を止めている。
私は走りながら感じていた。今までの織原と今までのエドヴァルド様が私の中で一致していくのを。
あの発言も、この発言も。
全部学校生活やそれ以外で織原が感じて来たことをエドヴァルド様は言葉にしている。
『裏表あるなんて別にふつーじゃないっすか?』
織原がエドヴァルド様だった。
『ここまで活動できるのは音咲さんのような昔から観て頂いてる方達のおかげだと思っていて』
私は走る。
『この人となら弱さを共有できるかもってそう感じた時に、魅力を感じた』
風をきって走った。
『実はさ、今日友達が落ち込んでて、俺その友達に何にも言ってあげられなかったんだよね』
初めて歌枠をとった配信での言葉。あれは私に対しての言葉だった。そして今、また私の為に歌ってくれている。
──文句を言ってやりたい。今まで黙っていたことに多少怒りも湧いてくる。たけど、今一番伝えたいのは……
私に驚くたくさんの人と生徒達とすれ違いながら装飾の施された校門をくぐった。
──伝えたい言葉は……
体育館の舞台袖に私は到着した。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
愛美ちゃんが到着した私に駆け寄るが、私は暗い舞台袖から光るステージの中央で歌うエドヴァルド様である、織原朔真を見て言った。
「今の私がいるのは、あなたのおかげだよ……」
──────────────────────────────────────────────────
~織原朔真視点~
2番も終わり、最後のサビに行く間のブリッジが始まる。盛り上がるギターソロに僕は合わせながらファルセットとフェイクを織り混ぜた。それに合わせるように観客が盛り上がる。踊り出す生徒に、いつもしかめっ面の教師も笑顔で僕の歌を聴いていてくれている。
最後のサビに入った。
盛り上がったブリッジが静まり、手拍子だけでリズムを刻む。僕はそのリズムに合わせてマイクに歌声を乗せた。その時観客の殆どがその手拍子に同調して手を叩く、あの鏡三さんですら手を叩いてくれていたように見える。
そしてもう一度、ドラム、シンセサイザー、ギター、ベースが入り込み、最後のサビに入った。その時僕は熱狂する観客達の後ろに信じられないものを見てとる。母さんと父さんと妹の萌を見つけたのだ。3人はとても仲良さそうに身体を寄せ合い、僕に微笑みかける。
歌うことはやめなかった。その光景をいつまでも見ている為には、歌を止めてはいけないと思ったからだ。
胸一杯に心地のよい温かい感情が広がった。それは涙となって目から溢れた。その時ちょうど最後のサビを歌い終えた。
フェードアウトしていく音楽と共に、僕の家族達が消えていく。
──待って!!まだ行かないで!!父さん!母さん!!萌……
僕の想いをかき消すように、観客達が盛大な拍手を僕に送った。
魔法が解けた。
すると僕の心を二分するように大きく心臓が脈打つと同時に、激しい動悸が僕を襲った。
「ぅっ!!」
吐き気と目眩に襲われた僕は、舞台袖を見た。音咲さんがいる。苦しむ僕を心配そうに見つめていた。音咲さんを見ると、少しだけ楽になる。僕は最後の力を振り絞るようにノソノソと舞台袖へと戻った。
観客から僕が見えなくなるところまで来ると一ノ瀬さんと薙鬼流が僕を支えようと駆け寄る。
「先輩!?」
「織原君!?」
僕は彼女達の腕の中に体重を預けた。そして音咲さんが近付いてくる。
「ありがとう……」
僕からマイクを受け取り、輝くステージの中へ入っていった。再び拍手が聞こえた。ゲリラLIVEが始まったのだ。
僕はその場に横になる。
心臓の音がうるさいくらい鳴っていた。
「大丈夫ですか!?」
「大丈夫!?」
一ノ瀬さんと薙鬼流の声が遠くから聞こえるような気がした。そして音咲さんの歌が聴こえてくる。まるで子守り歌のように僕を意識の底へと誘った。
2
あなたにおすすめの小説
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル
諏訪錦
青春
アルファポリスから書籍版が発売中です。皆様よろしくお願いいたします!
6月中旬予定で、『クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル』のタイトルで文庫化いたします。よろしくお願いいたします!
間久辺比佐志(まくべひさし)。自他共に認めるオタク。ひょんなことから不良たちに目をつけられた主人公は、オタクが高じて身に付いた絵のスキルを用いて、グラフィティライターとして不良界に関わりを持つようになる。
グラフィティとは、街中にスプレーインクなどで描かれた落書きのことを指し、不良文化の一つとしての認識が強いグラフィティに最初は戸惑いながらも、主人公はその魅力にとりつかれていく。
グラフィティを通じてアンダーグラウンドな世界に身を投じることになる主人公は、やがて夜の街の代名詞とまで言われる存在になっていく。主人公の身に、果たしてこの先なにが待ち構えているのだろうか。
書籍化に伴い設定をいくつか変更しております。
一例 チーム『スペクター』
↓
チーム『マサムネ』
※イラスト頂きました。夕凪様より。
http://15452.mitemin.net/i192768/
【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。
東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」
──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。
購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。
それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、
いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!?
否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。
気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。
ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ!
最後は笑って、ちょっと泣ける。
#誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
隣の席のクールな銀髪美少女、俺にだけデレるどころか未来の嫁だと宣言してきた
夏見ナイ
恋愛
平凡な高校生、相沢優斗。彼の隣の席は『氷の女王』と噂のクールな銀髪美少女、雪城冬花。住む世界が違うと思っていたが、ある日彼女から「私はあなたの未来の妻です」と衝撃の告白を受ける。
その日から、学校では鉄壁の彼女が、二人きりになると「未来では当然です」と腕を組み、手作り弁当で「あーん」を迫る超絶甘々なデレモードに!
戸惑いながらも、彼女の献身的なアプローチに心惹かれていく優斗。これは未来で結ばれる運命の二人が、最高の未来を掴むため、最高の恋をする糖度MAXの青春ラブコメディ。
クラスで一番人気者の女子が構ってくるのだが、そろそろ僕がコミュ障だとわかってもらいたい
みずがめ
恋愛
学生にとって、席替えはいつだって大イベントである。
それはカースト最下位のぼっちである鈴本克巳も同じことであった。せめて穏やかな学生生活をを求める克巳は陽キャグループに囲まれないようにと願っていた。
願いが届いたのか、克巳は窓際の後ろから二番目の席を獲得する。しかし喜んでいたのも束の間、彼の後ろの席にはクラスで一番の人気者の女子、篠原渚が座っていた。
スクールカーストでの格差がありすぎる二人。席が近いとはいえ、関わることはあまりないのだろうと思われていたのだが、渚の方から克巳にしょっちゅう話しかけてくるのであった。
ぼっち男子×のほほん女子のほのぼのラブコメです。
※あっきコタロウさんのフリーイラストを使用しています。
俺をフッた幼馴染が、トップアイドルになって「もう一度やり直したい」と言ってきた
夏見ナイ
恋愛
平凡な大学生・藤堂蓮には忘れられない過去がある。高校時代、告白した幼馴染の星宮瑠奈に「アイドルになるから」とこっ酷くフラれたことだ。
数年後、瑠奈は国民的アイドル『LUNA』として輝いていた。遠い世界の住人になった彼女との再会なんて、あるはずもなかった――そう、変装した彼女が俺の前に現れ、「もう一度やり直したい」と泣きつくまでは。
トップアイドルの立場を使い強引に迫る元幼馴染と、過去の傷。揺れ動く俺の日常を照らしてくれたのは、俺の才能を信じてくれる後輩・朝霧陽葵の存在だった。
俺をフッた幼馴染か、俺を支える後輩か。過去の清算と未来の選択を描く、ほろ苦くも甘い、逆転ラブコメディ、開幕。
昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件
マサタカ
青春
俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。
あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。
そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。
「久しぶりですね、兄さん」
義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。
ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。
「矯正します」
「それがなにか関係あります? 今のあなたと」
冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。
今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人?
ノベルアッププラスでも公開。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる