【完結】それ以上近づかないでください。

ぽぽ

文字の大きさ
113 / 124

番外編(馨)ラブなレター7

しおりを挟む


凪はその場で震える指先を落ち着けるように封を切り、手紙を開いた。


ーーーーーーー

小鳥遊凪先輩。
初めまして。一年生の村井といいます。あなたのことを初めて見たときから、他の人とは違うものを感じました。
小鳥遊先輩は見かけるたびに綺麗になっていって、そのたびに心惹かれました。人見知りなのに、困っていそうな人に積極的に声をかけていく心優しさも好きです。
指輪を外したということは何か理由があったんだと思います。
もし、小鳥遊先輩の中に俺が入り込める隙があるのであれば、入りたいです。

返事は急ぎません。でも、返事をくれたら嬉しいです。

ーーーーーーー

単調な文体ではあったが、それだけにごまかしのない気持ちが伝わってきた。それは凪宛てのラブレターだった。


「……」


凪はしばらく呆然と便箋を見つめ、次にどうすべきか分からなかった。恋愛の告白をこうして文字で受け取るのは初めての経験だったし、何よりも今の心の状態では素直に受け止めきれない。

胸の奥にはまだ馨の存在が強く残っていて、痛みすら伴っているのに、別の誰かから向けられる温かな言葉がそこに重なってしまうことが戸惑いを呼んだ。


「へえ、それ……ラブレターか」


唐突に頭上から声が降ってきた。反射的に凪は勢いよく顔を上げる。


「宗介!! いるなら呼んでよ!」


視線の先には宗介が立っていた。いつの間に来たのか、凪の表情を覗き込みながら、からかうような笑みを浮かべている。慌てた凪は手紙を後ろに隠し、頬を赤く染めた。


「いや、お前があまりにも真剣な顔してたからさ。邪魔するの悪いかなって思って」


軽い調子で言いながらも、宗介の目の奥は意外と鋭く、凪の様子を注意深く観察しているように見える。その笑みには悪気はなく、ただ少しの茶化しと、ほんのわずかな心配が滲んでいた。


「……蓮見馨と別れたのか?」


宗介は一瞬真剣な顔になった。
思いがけない言葉が投げかけられ、凪の心臓が大きく跳ねた。


「え? いや、別に……」

返事ははっきりしない。否定しようとすればできるはずなのに、言葉が喉の奥で詰まってしまう。結局は曖昧に誤魔化すしかなかった。

ここではっきりと「別れてない」と言い切れればいいのに。

心の中でそう呟いた瞬間、自分の弱さを痛感する。指輪を外してしまった自分、ニュースから逃げるように携帯を閉じた自分、そして誰かの想いを受け取ってしまった自分。その全てが「答えを出せていない現実」を突きつけていた。


「それにしてもお前、なんでそんなモテてんだよ。生意気なんだよ」

「モテる宗介に言われたくない」


なかなか答えない凪に対して何かを悟った宗介はそれ以上聞くことはなかった。
冗談気味に言って肩をすくめるように笑った。その笑みが余計に、凪の胸を締めつけていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

6回殺された第二王子がさらにループして報われるための話

さんかく
BL
何度も殺されては人生のやり直しをする第二王子がボロボロの状態で今までと大きく変わった7回目の人生を過ごす話 基本シリアス多めで第二王子(受け)が可哀想 からの周りに愛されまくってのハッピーエンド予定 (pixivにて同じ設定のちょっと違う話を公開中です「不憫受けがとことん愛される話」)

僕はお別れしたつもりでした

まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!! 親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。 ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる

cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。 「付き合おうって言ったのは凪だよね」 あの流れで本気だとは思わないだろおおお。 凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?

手の届かない元恋人

深夜
BL
昔、付き合っていた大好きな彼氏に振られた。 元彼は人気若手俳優になっていた。 諦めきれないこの恋がやっと終わると思ってた和弥だったが、仕事上の理由で元彼と会わないといけなくなり....

妹に婚約者を取られるなんてよくある話

龍の御寮さん
BL
ノエルは義母と妹をひいきする父の代わりに子爵家を支えていた。 そんなノエルの心のよりどころは婚約者のトマスだけだったが、仕事ばかりのノエルより明るくて甘え上手な妹キーラといるほうが楽しそうなトマス。 結婚したら搾取されるだけの家から出ていけると思っていたのに、父からトマスの婚約者は妹と交換すると告げられる。そしてノエルには父たちを養うためにずっと子爵家で働き続けることを求められた。 さすがのノエルもついに我慢できず、事業を片付け、資産を持って家出する。 家族と婚約者に見切りをつけたノエルを慌てて追いかける婚約者や家族。 いろんな事件に巻き込まれながらも幸せになっていくノエルの物語。 *ご都合主義です *更新は不定期です。複数話更新する日とできない日との差がありますm(__)m

処理中です...