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番外編(馨)ラブなレター9
しおりを挟む「あの報道、嘘だから!
写真を撮られたときだって、あれはただのチームメイトやスタッフを含めた食事会だったんだ。本当にそれだけ。なのに……どうも事務所とスタッフの一部がつながってたみたいで、あの人が急に現れて」
そこまで言うと、馨は苦しげにうつむいた。声の端々に苛立ちと自責が混じっている。
「食事が終わったあと……酔っ払ったのか、なんなのかはわからない。でも、あいつがいきなり俺のところに来て、腕を組んできた。その瞬間を、運悪く写真に撮られただけなんだ」
唇を噛みしめ、悔しさを滲ませながらも彼は続ける。
「でも………こんなこと、ただの言い訳にしか聞こえないのもわかってる。俺だって、もっと強く振り払えばよかった」
馨の口元はひきつり、震えながら歪んでいく。いつも堂々とした彼の姿を知っている凪にとって、その弱々しさは衝撃だった。
「でも、そんなことで……凪と別れるなんて、絶対に嫌だ」
馨の声が掠れ、今にも涙に変わりそうに震えている。それは本心から出ているものだと凪はわかった。馨は元々あまり人に対して感情を見せるような性格ではないけど、それが前面に出ているからだ。
「怒らないで、凪。お願いだから……俺から離れないで」
懇願するような声。次の瞬間、馨は凪を強く抱きしめた。肩が痛いほどに込められた力。その必死さは、否応なく伝わってくる。
凪は言葉を失った。押し返そうと思えばできるのに、腕の中の熱と震えに押し流され、ただ受け止めることしかできなかった。
「本当に……今さら離れるなんて、無理だから。なんでもする。だから、許してほしい」
耳元に繰り返される声は切実で、弱くて、必死だった。凪は小さく息を吐き、喉の奥に詰まっていたものをやっと吐き出す。
「僕は……怒ってたというより、不安になってたんだ。だから、馨くんとあの人のニュースを見たくなくて、携帯の電源を切って」
ぽつりぽつりと零れる言葉。胸に澱んでいた感情を、初めて外に出した。
「僕に……馨くんみたいな人と付き合う資格があるのかなって。そう思っちゃったんだ……」
それは弱々しく、頼りなく聞こえたかもしれない。けれど、凪の正直な気持ちだった。
馨は小さく目を閉じ、苦しげに眉を寄せる。
「……不安にさせて、ごめん。俺、何回も同じことを繰り返して……」
そのときだった。馨の視線がふいに動き、テーブルの上でぴたりと止まった。
馨の瞳が大きく見開かれる。呼吸が止まったように、空気が凍りつく。
凪もつられて振り返った。そこには、置きっぱなしにしていた、一通の手紙があった。
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