【完結】それ以上近づかないでください。

ぽぽ

文字の大きさ
69 / 124

70

しおりを挟む


「…宗介は僕に、何も聞かないの?」


凪は目の前のパフェをスプーンで掬いながら、静かに問いかけた。対面に座る宗介は、パフェを大きく一口食べていたが、その問いに反応して一度口の中のものをゆっくりと飲み込むと、無造作に口を開いた。


「それはさ、聞いてほしいってこと?」

「いや、そうじゃなくて…」


否定しながらも、凪は少し目を伏せた。聞いてほしいわけじゃない。だけど、ここまで来てもらって黙っているだけでは、まるで自分の気持ちすら誤魔化しているようで落ち着かなかった。


「泣いてた理由のこと?」


宗介は何気なくそう口にすると、またひと口パフェを食べる。そのあまりにも自然な様子に、凪の心はかえってざわついた。


「…そう」

「どうせ蓮見馨だろ」

「えっ…」


ぴたりとスプーンを持つ手が止まる。言い当てられたことに驚いているのはもちろん、自分の中で必死に隠そうとしていた思いが、すでに宗介にはすべて見透かされていたことに、凪は動揺した。


「お前が最近悩んでた理由も、泣いてた理由も、ぜーんぶ蓮見馨。」


宗介は小さく「イラつくわ」とつぶやいてパフェのグラス越しに凪を見据える。その瞳の奥にあったのは、怒りだけではなく、心配するような様子も含まれている。


「お前があいつに会った時、どんな顔してるか、自分でわかってんの?」

「どんな顔って……それは、いつも宗介たちといる時と、同じ顔だと思うけど…?」

「ムカつくくらい、全然ちげえよ」


宗介は苦笑しながらも、どこか不機嫌そうに言う。


「ムカつくって、僕、どんな顔してるの?」
 

凪の問いに、宗介は無言のまま指先で凪の額を小突いた。


「自覚ないのがもっとムカつくっつってんだよ」

「だから、どんな顔だって聞いてるのに…」

「ムカつくから言ってやんねぇ」


何度目かの「ムカつく」を吐き捨てて、宗介は苛立ったように髪をかき上げる。その仕草は普段の飄々とした彼とは違っていて、凪の胸に引っかかるものを残した。


「蓮見馨の関連っていうのは間違いないんだな。」


低く、重たい声だった。


「……うん、でも馨くんにはもう会わないから」


凪の声はかすれ、視線はテーブルの上に落ちる。言葉の端々が震えていて、宗介は何も言わずにじっとそれを見つめていた。


「いつまでも、めそめそ泣いてんなよ。その涙を拭ってやれないようなやつのことなんかで泣く意味あんの?俺はずるい奴だからお前に隙があれば遠慮なくつけいる。」


そう言って、宗介は手を伸ばし、凪の頬に触れた。親指がそっと下まぶたをなぞる。涙をすくうような、繊細で、あたたかい仕草だった。


「え?つけ入る?」


言葉にならない声が、凪の喉から漏れた。顔を上げるとそこには宗介の真剣な瞳があった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

6回殺された第二王子がさらにループして報われるための話

さんかく
BL
何度も殺されては人生のやり直しをする第二王子がボロボロの状態で今までと大きく変わった7回目の人生を過ごす話 基本シリアス多めで第二王子(受け)が可哀想 からの周りに愛されまくってのハッピーエンド予定 (pixivにて同じ設定のちょっと違う話を公開中です「不憫受けがとことん愛される話」)

僕はお別れしたつもりでした

まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!! 親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。 ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

【完結】王宮勤めの騎士でしたが、オメガになったので退職させていただきます

大河
BL
第三王子直属の近衛騎士団に所属していたセリル・グランツは、とある戦いで毒を受け、その影響で第二性がベータからオメガに変質してしまった。 オメガは騎士団に所属してはならないという法に基づき、騎士団を辞めることを決意するセリル。上司である第三王子・レオンハルトにそのことを告げて騎士団を去るが、特に引き留められるようなことはなかった。 地方貴族である実家に戻ったセリルは、オメガになったことで見合い話を受けざるを得ない立場に。見合いに全く乗り気でないセリルの元に、意外な人物から婚約の申し入れが届く。それはかつての上司、レオンハルトからの婚約の申し入れだった──

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

処理中です...