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しおりを挟む「凪は俺のこと利用すればいい」
「え?」
あまりにも突飛な言葉に、凪は思わず聞き返した。宗介の表情はいつもよりずっと真剣で、冗談の気配はどこにもなかった。
その言葉が何を意味しているのか、凪にはすぐには理解が追いつかなかった。ただ、胸の奥が妙にざわついて、息が浅くなるのを感じる。
「凪が、蓮見馨のことを好きなのは……もう見てりゃわかるよ。わかりたくなくてもわかる。あいつを見るお前の目、ずっと見てたからな。それにお前のことならすぐわかる。」
宗介は少し俯きながら言葉を紡いだ。手元に視線を落とし、それでも言葉を止めようとはしなかった。
「逆に俺は、中学のとき、お前が転校してきてからずっと、ずっとお前のこと見てた。友達としてって言えば聞こえはいいけど、それだけじゃない。」
「……ずっと?僕のことを?」
凪は戸惑いの色を浮かべたまま、小さな声で問い返した。
「それって……“見守る”って意味で?」
どこか自分に言い聞かせるように問いかけた凪に、宗介はふっと笑った。そしておもむろに凪の頭に手を伸ばして、わしゃわしゃと乱暴に撫でた。
「ここまで言っても気づかないとか、鈍感すぎ。いや、知ってたけどさ」
宗介の手のひらのぬくもりが頭に残った。凪の思考は一向にまとまらず、何を返せばいいかわからないまま、ただ黙って彼の言葉を待っていた。
「俺がなんで今日、お前が泣いてるってわかって、ここまで来たと思う?」
宗介の声が低く、落ち着いていたのが逆に緊張を煽った。
「……親友だと思ってくれてるから、かな……?」
凪はテーブルの上へと視線を落としながら、かすれそうな声で答えた。自分でもその言葉に確信が持てなかった。宗介がどう感じたのか、彼の返す表情を直視することができなかった。
だが、返ってきたのは、曖昧な苦笑だった。
「俺、基本、面倒なこととか本当は嫌いなんだよ。巻き込まれるのも、割り込むのも、全部面倒くせえって思うタイプ。なのにさ、凪のこととなると、気づいたら動いてる。どうしても放っとけない。……それってさ、ただの“親友”って気持ちだけじゃねえって俺は思ってる。」
宗介は言葉をひとつひとつ選ぶようにゆっくりと話し、最後には凪の目をまっすぐ見つめた。
「つまり、好きだって言ってんだけど」
凪の心臓が跳ねた。思わず呼吸を止めてしまいそうになる。目の前にいるのは、いつも冗談ばかり言っては場を和ませる、気さくな宗介。けれど、今の彼の目は、本気だった。
宗介は頭をかきむしるように荒々しく髪をかきあげ、ため息をついた。
「お前が好きなやつに泣かされてるとこなんて、見てらんねえよ。俺だったら、絶対、あいつより100倍……いや、1000倍は幸せにできる自信ある」
「え、えっと……いまの、本気……?」
「マジで言ってんだよ。冗談でこんなこと言えるか。俺、凪のことが……ずっと好きだった。」
最後の言葉は、ほとんど吐き出すように、でも確かに真実を込めて告げられた。
凪は混乱していた。頭の中では馨のことがずっと引っかかっていたはずだったのに、今は宗介の言葉が全てを塗り替えていくような、そんな感覚に囚われていた。胸の奥が熱くなり、何かが揺れている。
「ご、ごめん……そんな風に思ってくれてたなんて、本当に、全然気づかなかった」
凪の言葉に、宗介は小さく笑った。
「そんなのとっくにわかってる。だから、つけ入ってんだよ。お前の隙に、つけ入ろうとしてんの。最低だろ?」
「最低なんかじゃない!!」
凪は大きな声を出してすぐに否定した。
「なんで宗介が最低なの…。最低なわけながない。自分のこと悪く言わないでよ。」
自己卑下をした言葉だったのに、凪に不機嫌そうに怒られてしまい、宗介は目尻を下げて微笑んだ。
「お前のそういうとこもすげえ好きだよ」
宗介は凪の頬に手を這わして、優しく撫でた。それにはいつも触れる時のような気軽さはない。柔らかく包み込むような触り方だった。
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