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しおりを挟む「……久しぶり」
バイクから降り、ヘルメットを片手に抱えた青年の姿に、凪は目を見張った。一際目立つ明るい金髪に、目鼻立ちの整った端正な顔。ルイだった。
「ルイさん……? なんでここに……?」
思わず立ち止まった凪の問いに、ルイは肩をすくめて、問い返した。
「今からどこ行く予定?」
突然の質問に、凪は一瞬戸惑いながらも、息を呑み、答える。
「……これから空港に行く予定です。ある人を、見送るために……」
ルイは何も言わず、ポケットからスマホを取り出すと、空港の情報が表示された画面を凪に見せてきた。
「この空港で合ってる?」
「はい……でも、どうして……?」
「偶然。俺もちょうどそっち行くところ。」
そう言いながら、ルイはバイクのシート下からもう一つのヘルメットを取り出し、凪の頭に無造作に被せた。
「ほら、後ろ乗って。時間ないんでしょ?」
バイクに乗った経験のない凪はすぐに反応できず、その場に立ち尽くしてしまう。ルイは小さく息を吐くと、凪の背後に回り、突然その腰に腕を回した。
「ちょ、ちょっと……!」
言葉を発するよりも早く、ルイの細身の体が凪を持ち上げ、そのままバイクの後部座席に座らせる。
「わっ……!」
思わず声が漏れる。軽々と持ち上げられた自分に、凪は驚きながらも、ルイの腕の力強さに戸惑う。こんなに細いのに、どこにそんな力があるのか。
エンジンが唸り、バイクが軽く震えた。凪の心臓も同じように高鳴る。
「ちょ、ちょっと待ってください! 僕、バイクなんて乗ったことなくて……!」
焦って声を上げる凪に、ルイはちらりとも振り返らずに応じる。
「怖かったら俺の腰にしがみついてて。服でもいいけど」
けれど、ルイが着ているのは、凪でも名前を知っている有名ブランドのパーカーだった。汚したり伸ばしたりしたら申し訳ないと気が引けて、凪はためらいがちにルイの腰に腕を回す。
バイクが動き出し、風が顔を撫でる。数秒の静寂ののち、凪は思い切って口を開いた。
「ルイさん、なんで……なんであの会場にいたんですか?」
風にかき消されるようにして、声が薄れていく。
「……え?」
ルイが聞き返してきたので、凪はもう一度、大きな声で言った。
「なんで、あの会場に来てたんですか!!」
ルイはしばし黙ったあと言った。
「あんたが行くって、わかってたからだよ」
「……なんで、それを……」
「ってのは嘘。そんなストーカーみたいなことするかよ」
「……は?」
拍子抜けする凪に、ルイは続けた。
「お前らが会わなくなったって話は、俺も聞いてた。でも、あんたの連絡先も知らないしさ。りりが“凪くんが可哀想すぎる、かおるんの馬鹿野郎”って毎日泣きながら言うからさ」
「りりさんが……?」
ルイは大きく頷いた。
「あの日のこと、俺も見てたよ。馨があの女に言われて、あんたから手を離したところ。りりはそれ知ってから『あれで2人が離れ離れになるなんておかしい』って」
風が吹き抜ける中、凪はルイの言葉をじっと聞いていた。
「最後の賭けだったんだよ。会場行けば、あんたが来てるかもしれないって。だから、行ってみた」
「……ルイさん……」
凪は言葉を失ったまま、腰に添えた手に少しだけ力を込めた。
「……ありがとう、来てくれて」
「礼なんていらないよ。俺はただ、りりが泣くのがうっとうしいから。あんたがちゃんと伝えること伝えて、すっきりさせてこい。じゃないと俺が被害を被る」
そう言って、ルイはアクセルを回した。
「さあ、空港まであと少し。間に合うかどうかはわかんないけど」
凪はその言葉に、小さくうなずいた。
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