【完結】それ以上近づかないでください。

ぽぽ

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105(end2)

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↓は103話からの分岐endとなっております。
104話の内容も半分引用しています。ご了承ください。
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凪が呼びかけると、男が振り向いた。
だが、その顔を見た瞬間、凪は愕然とする。


「……違う……」


立ち止まり、小さく呟いた。振り返ったその人は、確かに背丈も雰囲気も馨に似ていた。でも、あの人ではなかった。


「……っ、ごめんなさい……」

今にも泣きそうになりながら謝ると、相手は気まずそうに小さく笑い、そっと視線を逸らして去っていった。

——間違えた。
もう、時間がない。

人の波に流されながら、何度も辺りを見回すけれど、馨の姿はどこにもない。焦りと後悔が胸をきつく締めつけてくる。
このまま何も伝えられずに終わってしまうのか。もう会えないかもしれない。言いたいことは、たくさんあるのに——。

そのときだった。

「……凪?」

ふいに名前を呼ばれて、凪はピクリと体を震わせた。

その声を、忘れるわけがない。

「……馨くん……?」

振り向くと、スーツケースを両手に持った馨が、出国ゲートの少し手前で立ち尽くしていた。目を見開いたまま、信じられないような表情を浮かべている。


「なんで……ここに?」

「……間に合ってよかった……本当によかった……」


込み上げてくる安心感に、目元がじんわりと熱くなる。


「凪、どうしてここに?」

「馨くんに伝えたいことがあったんだ。どうしても、直接言いたかったことがあるの」


そう言って凪は、まっすぐ馨を見つめる。


「馨くんが僕のことを今、どう思ってるかはわからない。でも……僕は君のことが好きだったよ」


馨は驚いたように目を見開いた。


「馨くんと出会って、いろんな初めての感情を経験した。苦しいほど胸が痛くなることも、高鳴りすぎて眠れなくなることもあった。それが“恋”だったって気づいたのは、遅かったかもしれないけど」


凪は少し恥ずかしそうに視線を逸らし、けれどすぐに馨を見て微笑む。


「だから、ありがとうって伝えたかったんだ」


次の瞬間、馨はスーツケースを手放し、凪を抱きしめた。背中にまわされた腕が、震えている。
凪の後頭部に手を添え、自分の額をぴたりと重ねる馨。


「いつからかはわからない。でも、気づいたら凪のことを好きになってた。もう何年もずっと、引きずるくらいには。酷いことをたくさん言ったし、距離感も間違えた。でも……どれだけ嫌われても諦められなかった。本当に、ごめん」

「馨くんのせいでたくさん辛い思いもしたけど……でも同じくらい、いやそれ以上に幸せももらったよ。ありがとう」


馨は小さく「……うん」と呟く。

凪は続けた。


「今日、もうひとつ伝えたいことがあるんだ」

「……うん」


馨は凪を抱きしめる腕に、ぎゅっと力を込めた。


「僕ね……ずっと一緒にいたいって思える人ができたんだ」


その瞬間、馨の体が一瞬硬直する。ひゅっと小さく息を呑んだ音が、凪の耳に届いた。


「……一緒にいたいって思える人……」


馨は消え入りそうな声でつぶやく。


「だから……馨くんにも、ちゃんと伝えておきたかった。このまま中途半端に終わらせたくなかったから」


馨はその場にしゃがみ込み、手で顔を覆う。


「……馨くん……?」

「……凪が幸せであることを願ってたけど、実際に聞くと……想像以上にキツいな……」


しばらくの沈黙のあと、馨はゆっくりと立ち上がり、再び凪を抱きしめる。


「凪、その人となら、きっと幸せになれるんだよな?」

「……うん。きっと、ずっと幸せにしてくれる」

「……そっか。……あーもう!しばらくはバスケだけに集中することにするわ!」


そう言って馨は凪の肩をポンと叩いたあと、顔を覗き込む。目元はどこか未練が残るように揺れていた。


「凪、俺は簡単には渡すつもりないからその人に伝えておいてほしいことがある。いい?」

「簡単に渡すつもりはない」その言葉の意味はいまいちわからなかったけど、凪は黙って頷く。

馨は、凪の耳元にそっと口を寄せて、何かを囁いた。

凪はその足で、ある場所へと向かった。
住宅街の一角にある、馴染みのアパート。何度も通った場所。灯りの漏れる部屋を見上げて、インターホンを押す。

足音が聞こえてきた瞬間、胸がドキンと鳴る。

ドアが開いた。


「はい」


凪は扉から出てきた人物に勢いよく飛びついた。


「はっ!?凪、何やってんだよ!」


宗介は驚き、凪の肩を掴んで引き剥がそうとするが、凪は離れようとしなかった。宗介の胸元に顔を埋め、シトラスの香りに包まれると、不思議と心が落ち着いた。


「蓮見馨のとこに行ってたんじゃねえのかよ」

「行ってきたよ」

「じゃあなんで……ここに来るんだよ!俺がどんな思いでお前を見送ったのかわかってんのか!」

「馨くんを送ったあとに来ちゃダメ?」


凪が無邪気に問いかけると、宗介は言葉を失い、凪の額を指でこづいた。


「だって俺たちは……元恋人同士だぞ。それを馨が知ったら……きっとアイツ、嫉妬するって。それに対して嫌味言われんのは俺だろうが。」


宗介がぼそっと呟くと、凪は宗介の胸元から顔を上げ、真っ直ぐに彼を見つめた。


「僕たち、いつ別れたの?」

「は???」


宗介の表情はかたまり、やがて冷たさを帯びた表情になった。


「凪、お前、俺のこと馬鹿にでもしてんのか
さっきのバスケ会場で俺たちはっ」

「なんで別れたことになってるの?僕、別れたつもりなんてないのに」

「は??どういうことだよ。だってお前、蓮見馨に伝えたいことがあるって…」

「うん、伝えてきたよ。
好きな人がいるからその人と幸せになるよってこと」


宗介は目を見開いたまま固まった。


「好きな…人…凪、お前、それって…」

「誰のことだと思う?」


凪は宗介の腕を引っ張ると、傾いた宗介の頬に口づけをした。


宗介の耳がみるみるうちに真っ赤になる。


「なっ……!」


凪がその反応に笑いかけた瞬間、宗介は無言で凪の手を取り、強引に部屋の中へと引き入れた。

宗介は凪の腰に腕を回すと、腰を屈め、膝裏に手を回し凪を横抱きで抱き上げた。そのまま宗介はズカズカと部屋を進んでいく。
いつもの凪なら動揺するが、今はとにかく宗介と離れたくなくて、首元に腕を回し首筋に顔を擦り寄せた。


「宗介、靴っ」


凪の足元はまだ靴が履かれたままで、宗介はそれを見ると凪の靴を乱暴に脱がせ玄関へと投げた。
そして、ソファの上に凪おろすと、覆い被さるようにして凪の頭の横に両手をついた。


「凪、俺はお前のこと逃さないつもりだけどいいのか?いくら嫌だって言っても離すつもりはない。」


宗介のまっすぐな瞳が凪を捉えたため、凪も同様に見返し、宗介の頬を小さな手で包み込んだ。


「僕だって宗介のこと逃さない。大好きだよ。宗介。」


凪が真剣な表情で伝えると宗介は緊張の糸が切れたように笑った。


「お前、たまに本当に男前なこと言うよな」


宗介は凪の頭をくしゃくしゃにして撫でた後、凪の後頭部に手を回して自身の顔と近づけた。


「凪、飽きるほど愛してやるから覚悟しろ」

「…うん!」


凪が宗介の首に腕を回したのを合図かのように2人は口づけを交わした。

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