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しおりを挟む必死に訴えかける琥珀の横を、慶也は無言で通り過ぎた。慶也の視線の先には、地面に倒れ込んでいる美沙の姿があった。
迷いもなく慶也はしゃがみ込み、背中を差し出す。美沙がその背にしがみつくと、彼は立ち上がった。そして、そのままその場を後にしようとしたところを琥珀は引き止める。
「俺より、その女が大事なのかよ!!」
琥珀は思わず叫んでしまった。
「その女の方を信じるのかよ!ずっと一緒にいたのに、急に現れた女に全部持ってかれて悔しくて仕方ねえよ!!!!
どんなに頑張っても信頼も愛情も…俺には絶対向けられない……
そんなことわかってても俺は慶也のこと、ずっと、ずっと好きなんだよ…!!!」
琥珀の声は切迫していた。彼の瞳からは大粒の涙がこぼれ落ちる。その涙を振り返ることなく、慶也は奥歯を噛み締め、声を振り絞るように言い放つ。
「……こんな時までそんなこと言うのか?
いい加減にわかってくれ、琥珀。」
そのあと慶也はまるで決心したかのように言い放つ。
「俺は琥珀を好きになることはない。
いくらお前が俺のことを好きだって言おうと、俺にはそれが出来ない。
これが琥珀にとっても俺にとっても1番の選択なんだ。」
その言葉に、琥珀の心はバラバラと崩れていく。まるで大切にしていたパズルが一瞬にして台無しになったかのように。頭の中で「もうこれ以上は言わないでくれ」と何度も祈るが、その祈りは届かない。
「…もうしばらく俺には関わらないほうがいい。」
慶也の冷たい声が追い討ちをかける。
「なんで…なんでだよ、慶也!!」
琥珀は叫びながら慶也の腕を掴む。
「全部正直に話すから許してよ!慶也!全部…俺が悪かったから!だからそばにいてくれよ…!」
その必死な訴えを振り払うように、慶也は腕を引き抜く。そして、何も言わないまま美沙を背負ってその場を後にした。琥珀はその背中をずっと目で追い続ける。その視線を振り切るように、慶也の姿は雨の向こうへと消えていった。
琥珀の頬を濡らす涙は、曇天の空から落ちてくる雨と混ざり合う。
「なんでだよ…慶也…こんなに好きなのに…」
そんなことを考えながら琥珀は空を仰ぎ、雨雲に向かって呟いた。
雨に打たれながら、琥珀はゆっくりとポケットから携帯を取り出す。画面の明かりが雨粒を反射し、彼の震える指先を照らした。
「ごめん。もう慶也が嫌がることはしないよ。迷惑だってかけないから、」
メッセージを打ち込み、その続きを打ち込もうとした時、突然、目の前が眩い光に包まれた。琥珀はとっさに目を細める。だが、その光が何を意味しているのかを理解する暇もなく、全身が強い衝撃に襲われた。
琥珀の身体が宙に投げ出される。耳鳴りが響き、景色がぐるぐると回る中で、最後に頭をよぎったのは慶也の姿だった。
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