【完結】君のことなんてもう知らない

ぽぽ

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琥珀と昴の間には、恋人という関係が結ばれた。

琥珀にとって人生初の恋人。最初はどう振る舞えばいいのかも分からず、ぎこちない態度を見せていたが、昴が優しく受け止め、時間をかけてその心を解きほどいていった。

そして今、琥珀は以前にも増して、すっかり昴に甘えることを覚え、2人きりの空間では遠慮なくその愛情を存分に示すようになっていた。


「昴、離れちゃ嫌だ……」


琥珀は昴の部屋に入り、昴の膝の上に乗ると、首元に抱きつき顔を擦りつける。まるで甘えん坊の猫のように。琥珀の柔らかい髪の毛が昴の肌をくすぐるたびに、その愛おしさが増していく。

昴はそんな琥珀をたまらなく愛しく思いながら、そのふわふわとした頭に唇を寄せ、軽くキスを落とした。


「琥珀くん、俺は飲み物を取りに行くと言っただけなのですが」

「嫌だ。ずっとそばにいたい」


琥珀は頬を膨らませ、まるで駄々をこねる子供のようにしがみついてくる。昴は思わずくすりと笑い、片手をそっと琥珀の背中に回して軽く撫でた。

学校では、琥珀はできるだけ昴との接触を控えていた。

琥珀の記憶にはないが、琥珀の友人たちからは性格はメンヘラ気質だと言われ、美沙にも周りに迷惑をかけていたと言われた。
そのため、自分の独占欲を暴走させて相手に迷惑をかけないように学校では距離を置く。

…というのが建前の理由で、本当の理由は別にあった。

昴を見てしまうと触れたくなってしまうし、彼の周りにいる人間に嫉妬しそうになってしまうから近づくことは避けていたのだ。

その反動もあり、2人きりになると琥珀は思い切り甘える。


「昴、ぎゅっとして」

「承知しました」


昴は琥珀を腕の中に強く抱きしめる。すると琥珀はくすぐったそうに笑い声を上げ、昴の胸に顔をうずめる。


「琥珀くん、疑問なのですが……なぜそんなに愛らしいのでしょうか。それを突き止めて、俺の前以外ではやめさせないと大変なことに」

「それいうなら昴もかっこいいのやめろし……今日だって女子が騒いでた…」


昴は微笑を深めながら、拗ねる琥珀の頬に高い鼻先を擦りつける。


「琥珀くんの目には俺がかっこよく映ってますか? こんなに情けないところを見せているのに?」

「昴は全部かっこいい。そんな人が俺の恋人って夢みたい」

「俺も、琥珀くんみたいな人が恋人で、毎日が夢のように幸せです」


側からみればバカップルとしか言いようがない会話を交わし、昴は琥珀の頬を両手で包み込み、そっと唇を重ねた。

まだキスに慣れていない琥珀は、唇を合わせるとき、きゅっと目を閉じてしまう。そして、ぎこちないながらも、精一杯の想いを込めたキスをする。

リップも何も塗っていないはずなのに、琥珀の唇は乾燥とは無縁で、ほんのり艶を帯びていた。その可愛らしい見た目とは裏腹に、どこか妖艶な色気があり、昴の理性を刺激する。

思わず奪いたくなる唇だ。

しかし、昴はそれをグッと堪える。琥珀が一生懸命になっているのが分かるからこそ、無理をさせたくないし、その初々しい仕草をもっと楽しみたいという気持ちもあった。

やがて唇がゆっくりと離れる。琥珀はギュッと閉じていた目を、少しずつ開いていった。


「昴、もう一回したい……ダメ?」


琥珀は上目遣いで見つめながら、控えめに首を傾げる。

その仕草があまりにも無防備で、昴は思わず片手で視界を塞いだ。


「琥珀くん、それは……本当にずるいです……」

「え? なんで?」

「無意識でそんなに可愛くされると、俺の理性が持ちません……」
 

昴は悶えるようにしてため息をつく。琥珀はタチが悪い。普通ならあざといと分かってやる仕草も、彼は完全に無意識でやってしまう。


「じゃあ、ダメなの……?
俺昴とキスしたいのに…」


琥珀はシュンとした様子で、昴の服の裾をちょんとつまむ。

これでは、断れるはずがない。

昴は苦笑しながら、琥珀の顎を指で持ち上げ、もう一度そっと唇を重ねた。


「琥珀くんがそんな顔をするなら……断れるはずがないでしょう?」

「……えへへ」


キスの後、琥珀は満足げに笑い、再び昴の胸にすり寄った。


「昴、好き……」

「俺もですよ、琥珀くん」


静かな部屋の中で、2人の幸せな時間がゆっくりと流れていく。

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